雇用の意義と法的性質

雇用とは他人の労働それ自体を利用することを目的とする契約です。623条は雇用は当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによってその効力を生ずると定めています。法的性質は有償、双務、諾成、不要式契約です。

雇用は労働者自らが労働を提供することそれ自体を目的とする点で他の労働供給型契約とは異なります。労働の結果としての仕事の完成を目的とする請負や一定の事務処理という裁量的な行為を目的とする委任と異なる特質をもちます。雇用契約の各当事者には契約上の付随義務として安全配慮義務が認められます。

雇用関係に対しては労働法が特別法としての性格を有するのでほとんど労働契約法や労働基準法の適用を受けわずかに同居親族だけを使用する事業や事務所又は家事使用人の雇用関係のみが適用除外となっています。

報酬の支払時期

624条1項は労働者はその約した労働を終わった後でなければ報酬を請求することができないと定めています。同条2項は期間によって定めた報酬はその期間を経過した後に請求することができると定めています。報酬の支払時期は後払が原則ですが前払の特約を結ぶこともできます。

履行の割合に応じた報酬

624条の2は労働者は使用者の責めに帰することができない事由によって労働に従事することができなくなったとき又は雇用が履行の中途で終了したときには既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができると定めています。報酬の支払時期にかかわらず労務提供に対する対価としての報酬という観点から割合的な報酬請求を認めたものです。

使用者の責めに帰すべき事由によって労働に従事することができなくなった場合には労働者は対応する期間における報酬全額を請求することができると解されています。もっとも労働者が労働従事義務を免れたことによって利益を得たときにはこれを使用者に償還しなければなりません。

使用者の権利の譲渡の制限

625条1項は使用者は労働者の承諾を得なければその権利を第三者に譲り渡すことができないと定めています。同条2項は労働者は使用者の承諾を得なければ自己に代わって第三者を労働に従事させることができないと定めています。同条3項は労働者がこの規定に違反して第三者を労働に従事させたときは使用者は契約の解除をすることができると定めています。

期間の定めのある雇用の解除

626条1項は雇用の期間が5年を超え又はその終期が不確定であるときは当事者の一方は5年を経過した後いつでも契約の解除をすることができると定めています。同条2項はこの規定により契約の解除をしようとする者はそれが使用者であるときは3箇月前に労働者であるときは2週間前にその予告をしなければならないと定めています。労働者の予告期間を2週間前としているのは労働者の辞職の自由を確保する趣旨であり期間の定めのない雇用契約に関する627条1項と平仄を合わせたものです。

期間の定めのない雇用の解約の申入れ

627条1項は当事者が雇用の期間を定めなかったときは各当事者はいつでも解約の申入れをすることができると定めています。この場合において雇用は解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了します。同条2項は期間によって報酬を定めた場合には使用者からの解約の申入れは次期以後についてすることができると定めています。ただしその解約の申入れは当期の前半にしなければなりません。同条3項は6箇月以上の期間によって報酬を定めた場合にはこの解約の申入れは3箇月前にしなければならないと定めています。

やむを得ない事由による雇用の解除

628条は当事者が雇用の期間を定めた場合であってもやむを得ない事由があるときは各当事者は直ちに契約の解除をすることができると定めています。この場合においてその事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは相手方に対して損害賠償の責任を負います。

雇用の更新の推定

629条1項は雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において使用者がこれを知りながら異議を述べないときは従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定すると定めています。この場合において各当事者は627条の規定により解約の申入れをすることができます。同条2項は従前の雇用について当事者が担保を供していたときはその担保は期間の満了によって消滅すると定めています。ただし身元保証金についてはこの限りではありません。

雇用の解除の効力

630条は賃貸借の解除の効力に関する620条の規定を雇用について準用しています。したがって雇用の解除は将来に向かってのみその効力を生じ損害賠償の請求を妨げません。

使用者の破産手続開始による解約の申入れ

631条は使用者が破産手続開始の決定を受けた場合には雇用に期間の定めがあるときであっても労働者又は破産管財人は627条の規定により解約の申入れをすることができると定めています。この場合において各当事者は相手方に対し解約によって生じた損害の賠償を請求することができません。

雇用契約において期間の定めがある場合に使用者が破産手続開始の決定を受けても契約は当然には終了しません。また雇用契約では人的要因が重要とされるため解釈上労働者の死亡は契約の終了事由とされています。

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