解除の効果の法的構成
解除の効果の法的構成について直接効果説は契約が解除されると解除の直接の効果として契約上の債権債務は初めに遡って消滅するとし判例もこの立場に立っています。未履行債務については債務の遡及的消滅により履行義務を免れ既履行債務については法律上の原因のない給付として不当利得返還義務を生じます。返還義務の性質は一種の不当利得返還義務ですが解除の場合は原状回復義務まで拡大されています。545条1項ただし書の意義について直接効果説は解除に物権的効果を認める以上権利の転得者を保護するために解除の遡及効を制限しなければならないと解します。
間接効果説は契約が解除されても解除の効果として契約上の債権債務が消滅するのではなくただ当事者間に原状回復の債権債務関係を発生させるにとどまりそれが履行されることによってはじめて契約関係は消滅するとします。
解除の遡及効
直接効果説に立った場合の解除の遡及効の影響として解除された契約自体から生じた法律効果は解除により遡及的に消滅します。契約によって生じた債権債務は解除により消滅し物権移転の効果も当然に消滅します。債権譲渡契約において譲渡人が債務者へ通知をなした後に譲渡契約を解除した場合には当事者間においてはその債権は譲渡人に復帰しますが債務者への通知や承諾がなければその復帰を債務者に対抗しえません。
解除された契約によって消滅した権利も原則として復活します。更改契約や和解契約が解除されたときはこれらの契約によって消滅した権利が復活します。賃貸人が賃借人に賃貸物を売却した後にこの売買契約が解除されたときは賃借人が所有権を取得した結果混同によって消滅した賃貸借関係が原則として復活します。解除によって消滅する債権が解除以前に相殺に用いられていた場合には契約が解除されればその債権は初めから存在しなかったことになるため相殺は無効となり反対債権が復活します。
原状回復義務
545条1項本文は当事者の一方がその解除権を行使したときは各当事者はその相手方を原状に復させる義務を負うと定めています。目的物が存在すればその物を返還する義務を負います。目的物につき必要費や有益費の支出があった場合は196条の規定により処理されます。目的物が受領者の下で滅失や損傷して原物返還が不能になった場合にはその価格を返還する義務を負います。代替物は同種同等同量の物を返還すればよいとされます。
同条2項は金銭を返還するときは受領の時から利息を付けて返還しなければならないと定めています。同条3項は金銭以外の物を返還するときは受領の時から生じた果実を返還しなければならないと定めています。また給付を受けた金銭以外の物から生じた使用利益も返還すべきとされます。
特定物の売買における売主の保証人は特に反対の意思表示のない限り売主の債務不履行により契約が解除された場合に原状回復義務である既払代金の返還義務についても保証責任を負います。
損害賠償義務
545条4項は解除権の行使は損害賠償の請求を妨げないと定めています。直接効果説に立つと債務不履行による損害賠償責任と考えられます。原則として解除時の時価を基準とします。履行不能を理由とする解除の場合には不能が履行期前に生じたのであれば履行期の時価を基準とし不能が履行期後に生じた場合は履行不能時の時価を基準とします。
解除と第三者
545条1項ただし書は第三者の権利を害することはできないと定めています。ここでいう第三者とは解除された契約から生じた法律効果を基礎として解除までに新たな権利を取得した者をいいます。善意悪意を問いませんが登記を経由していない者は第三者として保護されません。解除により消滅する債権自体の譲受人や差押債権者は第三者に当たりません。
解除前の第三者については直接効果説では545条1項ただし書により保護されますが登記が必要とされます。解除後の第三者については177条により対抗問題として処理されます。
契約の解除と同時履行
546条は533条の規定は545条の場合について準用すると定めています。解除は1個の契約の解消によって両当事者が互いに契約のなかった状態を回復しようとするものであるため原状回復の債権債務を同時履行の関係に立たせることが公平とされています。
催告による解除権の消滅
547条は解除権の行使について期間の定めがないときは相手方は解除権を有する者に対し相当の期間を定めてその期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができると定めています。この場合においてその期間内に解除の通知を受けないときは解除権は消滅します。この催告によって解除権が消滅しても本来の契約上の債権債務には影響はなく債権者は本来の給付又は填補賠償を請求しえます。
解除権者の故意による目的物の損傷等
548条は解除権を有する者が故意若しくは過失によって契約の目的物を著しく損傷し若しくは返還することができなくなったとき又は加工若しくは改造によってこれを他の種類の物に変えたときは解除権は消滅すると定めています。ただし解除権を有する者がその解除権を有することを知らなかったときはこの限りではありません。
解除権を有する者の行為は解除権が現実に発生した後の行為に限られません。返還をすることができなくなったときには目的物が第三者に譲渡された場合も含まれます。目的物が代替物である場合はそれが滅失しても目的物と同種同量同品質の物を返還すればよいため原物の返還ができなくても解除権は消滅しません。目的物の損傷や改変等が目的物の僅少な部分にとどまる場合には目的物全部につき解除権を失いません。給付が可分な場合にはその部分についてのみ解除権が消滅します。解除権者の故意や過失によらない滅失や損傷ならば解除権は消滅しません。
その他の事由による解除権の消滅
548条及び547条以外の事由による解除権の消滅として第1に解除権行使前の債務の履行があります。履行遅滞による解除権が発生した後でも債権者が解除をする前に債務者が本来の給付に遅滞による損害をも加えたものを提供したときは一度生じた解除権はこれによって消滅します。第2に解除権の放棄があります。第3に解除権の失効があります。相手方がもはや解除権の行使はないものと信じるほど長い間解除権を行使せずに放置している場合には信義則上解除権を消滅させるのを妥当とします。第4に解除権の消滅時効があります。解除権は債権に準じ債務不履行の時から10年又は債権者が債務不履行の事実を知った時から5年の消滅時効にかかります。解除権行使の結果生ずる原状回復義務は解除時を起算点として原則5年又は10年の期間の経過によって消滅します。
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