委託を受けた保証人の求償権
459条1項は保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為をしたときはその保証人は主たる債務者に対しそのために支出した財産の額の求償権を有すると定めています。ただしその財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあってはその消滅した額が基準となります。同条2項は連帯債務者間の求償権の範囲に関する規定を準用しており法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償も求償の範囲に含まれます。
委託を受けて保証した者は委任事務の処理者とみることができるためその出損は委任事務処理費用の償還の法理に従うことになるはずですが保証における内部関係の特殊性に着目して委任の規定を適用せず保証人の求償権に関する特別規定が設けられています。
求償権の発生と行使
一部弁済でもその額について求償権が発生します。主債務の弁済期前に保証人が弁済しても求償権は成立しますが期限前の弁済につき主債務者の承諾がない場合には主債務の弁済期後でなければ求償権を行使することはできません。求償権について保証人と主たる債務者との間で特約をなすことも可能であり保証人と主たる債務者との間の特約は弁済による代位により債権者の担保権を行使する際にも後順位担保権者等に対して対抗できます。
債務の消滅行為とは弁済以外で保証人の財産的出損により債務消滅をもたらした場合をいい代物弁済、供託、更改及び相殺がその例です。債権者が保証人の財産に強制執行をして満足を得た場合も含まれます。物上保証人が第三者弁済により債務を消滅させた場合だけでなく担保権が実行された結果自己の不動産所有権を失う場合も自己の財産をもって債務を消滅させたと同様に取り扱われます。免除を受けた場合はたとえ債務が消滅しても保証人の出損がないため求償権は発生しません。
物上保証の目的物件についての第三取得者が自己の財産をもって弁済した場合には第三取得者が物上保証人に類似する地位にあることから保証人の規定が準用されます。
事前求償権と事後求償権の関係
事前求償権は事後求償権とは別個の権利であってその法的性質も異なります。したがって事前求償権を取得した者がその行使が可能な時から進行する消滅時効期間が満了しても保証人が弁済その他自己の出損をもって主たる債務を消滅させるべき免責行為をしたことにより取得する事後求償権の消滅時効は免責行為をしたときから進行します。
もっとも事前求償権を被保全債権とする仮差押えは事後求償権の消滅時効の完成を猶予させる効力を有します。事前求償権は事後求償権を確保するために認められた権利であり事前求償権を被保全債権とする仮差押えをすれば事後求償権についても権利を行使しているのと同等のものとして評価することができるからです。
委託を受けた保証人が弁済期前に弁済等をした場合の求償権
459条の2第1項は保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をしたときはその保証人は主たる債務者に対し主たる債務者がその当時利益を受けた限度において求償権を有すると定めています。この場合において主たる債務者が債務の消滅行為の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは保証人は債権者に対しその相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができます。
同条2項は求償の範囲として主たる債務の弁済期以後の法定利息及びその弁済期以後に債務の消滅行為をしたとしても避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含すると定めています。同条3項は本項の求償権は主たる債務の弁済期以後でなければ行使することができないと定めています。
本条の趣旨は委託を受けた保証人に対し主たる債務の弁済期到来前に保証債務の弁済その他の債務の消滅行為を行うことを認める一方で主たる債務者の期限の利益を害することのないよう求償権行使の範囲及び時期の点において制限を課すことで両者の利害調整を図る点にあります。
委託を受けた保証人の事前求償権
460条は保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において次の3つの場合にあらかじめ求償権を行使することができると定めています。第1に主たる債務者が破産手続開始の決定を受けかつ債権者がその破産財団の配当に加入しないときです。第2に債務が弁済期にあるときです。ただし保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は保証人に対抗することができません。第3に保証人が過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受けたときです。
保証人の弁済は委任事務処理費用としての性質を有し保証人は当然その前払請求ができそうですが常に前払請求できるとしたのでは主債務者自ら弁済すればよく保証を委託するのは迂遠な結果を招くこと及び前払を受けた保証人が保証債務の履行をしない危険もあることから委任事務処理費用の前払請求の規定を排除又は制限する特別規定として本条が置かれています。
物上保証人については事前求償権は認められないとされています。物上保証とは他人のために物的担保を提供することであり物上保証の委託は担保物権の設定行為の委任であるところ物上保証人は債務を負担することなく物的有限責任を負担するにすぎず被担保債権の弁済は物上保証人の委託の趣旨には含まれないこと及び担保物の客観的価値はその存否さえも競売してみなければ確定しえないことがその理由です。
主たる債務者の免責請求権
461条1項は事前求償の規定により主たる債務者が保証人に対して償還をする場合において債権者が全部の弁済を受けない間は主たる債務者は保証人に担保を供させ又は保証人に対して自己に免責を得させることを請求することができると定めています。同条2項は主たる債務者が供託をし担保を供し又は保証人に免責を得させてその償還の義務を免れることができると定めています。
主たる債務者が保証人に弁済資金を提供した上さらに債権者に弁済しなければならない危険を防止するため主たる債務者に保証人の事前求償に対する対抗手段を認めるものです。
通知を怠った保証人の求償の制限
463条1項は保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において主たる債務者にあらかじめ通知しないで債務の消滅行為をしたときは主たる債務者は債権者に対抗することができた事由をもってその保証人に対抗することができると定めています。この場合において相殺をもってその保証人に対抗したときはその保証人は債権者に対し相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができます。受託保証人が弁済をする場合には主債務者に対する事前の通知が必要ですが無委託保証人が弁済をする場合には求償額が制限されているため事前の通知は義務付けられていません。
同条2項は保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において主たる債務者が債務の消滅行為をしたことを保証人に通知することを怠ったため保証人が善意で債務の消滅行為をしたときはその保証人はその債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができると定めています。
同条3項は保証人が債務の消滅行為をした後に主たる債務者が債務の消滅行為をした場合において保証人が主たる債務者の意思に反して保証をしたときのほか保証人が債務の消滅行為をしたことを主たる債務者に通知することを怠ったため主たる債務者が善意で債務の消滅行為をしたときも主たる債務者はその債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができると定めています。委託の有無にかかわらず保証人が事後の通知を怠ったことにより主債務者が善意で更なる弁済をした場合には主債務者は自己の弁済を有効とみなすことができます。また主債務者の意思に反する保証人が弁済をした後に主債務者が善意で弁済をした場合も主債務者は事後通知の怠りを問わず自己の弁済を有効とみなすことができます。
本条は物上保証人にも適用されます。
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