八幡製鉄事件
八幡製鉄事件では、会社の代表取締役がある政党に対し会社を代表して政治献金をしたことについて、同社の株主が代表訴訟を起こし、会社による政治献金が許されるかが争われました。
最高裁判所は、憲法第3章に定める国民の権利及び義務の各条項は性質上可能な限り内国の法人にも適用されるものと解すべきであるから、会社は自然人たる国民と同様に国や政党の特定の政策を支持し推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するとしました。政治資金の寄付もまさにその自由の一環であり、会社によってそれがなされた場合に政治の動向に影響を与えることがあったとしても、これを自然人たる国民による寄付と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではないとしました。
さらに、政党への寄付は事の性質上国民個々の選挙権その他の参政権の行使そのものに直接影響を及ぼすものではないばかりでなく、政党の資金の一部が選挙人の買収にあてられることがあるにしても、それはたまたま生ずる病理的現象にすぎず、かかる非違行為を抑制するための制度は厳として存在するのであって、いずれにしても政治資金の寄付が選挙権の自由なる行使を直接に侵害するものとはなしがたいと判示しました。
定款の目的の範囲
八幡製鉄事件において最高裁判所は、会社は定款に定められた目的の範囲内において権利能力を有するが、目的の範囲内の行為とは定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行するうえに直接または間接に必要な行為であればすべてこれに包含されるものと解するのが相当であるとしました。そして、必要であるか否かは当該行為が目的遂行上現実に必要であったかどうかをもって決すべきではなく、行為の客観的な性質に即し抽象的に判断されなければならないとしました。
そのうえで、憲法は政党について規定するところがなくこれに特別の地位を与えてはいないが、憲法の定める議会制民主主義は政党を無視しては到底その円滑な運用を期待することはできないのであるから、憲法は政党の存在を当然に予定しているものというべきであり、政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素であるとしました。そして、政党は国民の政治意思を形成する最も有力な媒体であるから、その健全な発展に協力することは会社に対しても社会的実在としての当然の行為として期待されるところであり、会社による政治資金の寄付は客観的、抽象的に観察して会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められる限りにおいては、会社の定款所定の目的の範囲内の行為であるとしました。
八幡製鉄事件の評釈
本判決に対しては、法人のもつ巨大な経済的かつ社会的実力を考慮すると自然人と異なる特別の規制に服すると解すべきであり、特別の制約を認めないのは行き過ぎであるとの批判がなされています。
法人と構成員の関係
法人の表現の自由とその構成員の表現の自由や思想、信条の自由の調整が必要となります。この点、任意加入の団体であれば団体の自由は原則として尊重されるのに対し、強制加入の団体では団体の自由は原則として目的の範囲内の行為に制約され個人の自由が最大限尊重されるとする立場が有力です。
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