請負の意義と法的性質
請負とは当事者の一方が ある仕事を完成することを約束し相手方がその仕事の結果に対してこれに報酬を与えることを約束することによって成立する契約です。632条は請負は当事者の一方がある仕事を完成することを約し相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによってその効力を生ずると定めています。法的性質は有償、双務、諾成、不要式契約です。
請負契約は報酬額が具体的に定められていなくても報酬額の決定方法が定められていれば成立します。
なお製作物供給契約は単純に仕事の完成を目的とした請負契約とは異なりさらに製作物の所有権を移転することを目的としており売買契約の要素をも混合した内容となっている点に特色があります。売買契約と請負契約の両法条を混合させて適用する立場が通説とされています。
請負人の義務
請負人は仕事に着手する義務、契約に従い仕事をする義務、完成物引渡義務を負います。
請負人は個人の労働に重点を置いている場合あるいは特約のある場合を除き自由に履行補助者に仕事を完成させることができます。また請負人は自分で仕事を完成しないでさらに第三者に請け負わせることもできます。請負契約に下請負禁止の特約があっても下請負契約は当然に無効とはならず請負人が特約違反の責任すなわち債務不履行の責任を負うにすぎません。下請負人や履行補助者の責めに帰すべき事由につき請負人がすべて責任を負います。
注文者が下請を承諾していても下請人との間に直接の契約関係は生じないので注文者は下請人に対して目的物の引渡請求はできません。また請負契約が解除により終了しても下請負契約が当然に終了するわけではありません。
製作物の所有権の帰属
特約があるときはそれに従います。建築物完成前に請負代金の全額が支払われていた場合には特別の事情がない限り建築家屋は工事完成と同時に注文者に帰属させるという暗黙の合意が当事者間にあると推認されます。
特約がないときは注文者が材料の全部又は主要部分を提供した場合には所有権は注文者に帰属します。この場合には加工に関する246条1項ただし書は適用されません。請負人が材料の全部又は主要部分を提供した場合には所有権は請負人に帰属し引渡しによって注文者に移転します。
建築途中の建物への第三者による工事と所有権の帰属について建築物の請負契約において目的物が土地とは独立の建物となる時期は建物の用途で異なり一般家屋では屋根と荒壁があれば天井や床がなくても建物となります。建前はその前段階であり土地の定着物として付合せず独立の動産とされます。第一の請負人が未だ独立の不動産に至らない建前を築造したままの状態で放置しこれに第二の請負人が材料を提供して工事を施し独立の不動産である建物に仕上げた場合においての建物所有権の帰属は動産の付合の規定によるのではなくむしろ加工の規定により決定すべきとされています。所有権の帰属を決定するに当たっては第二の請負人の工事終了時における状態に基づき第一の請負人が建築した建前の価格と第二の請負人が施した工事及び材料価格を比較すべきとされています。基準時は建前が独立の不動産になった時点ではなく工事終了時です。
建物建築工事の注文主と元請負人との間に請負契約が途中で解除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の約定がある場合には当該契約が途中で解除されたときは元請負人から一括して当該工事を請け負った下請負人が自ら材料を提供して出来形部分を築造したとしても特段の事情のない限り出来形部分の所有権は注文者に帰属します。
目的物の滅失及び損傷と危険負担
仕事完成前に目的物が滅失又は損傷した場合について期限までに完成可能であれば請負人の仕事完成義務は存続します。請負人に帰責事由があるときは債務不履行となり注文者に帰責事由があるときは請負人は損害賠償請求が可能であり双方に帰責事由がないときは増加費用は請負人の負担となります。
期限までに完成不可能な場合には請負人に帰責事由があるときは注文者は契約を解除し損害賠償を請求することができます。注文者が残工事に要した費用として請負人に請求できるのはその費用のうち未施工部分に相当する請負代金を超える部分に限られます。注文者に帰責事由があるときは536条2項により注文者は報酬請求を拒むことができません。この場合に請負人は自己の債務を免れたことによる利益を注文者に償還しなければなりません。双方に帰責事由がないときは536条1項により注文者は報酬請求を拒むことができ契約の解除も可能です。
仕事完成後に目的物が滅失又は損傷した場合にも同様の処理がなされます。請負人に帰責事由があるときは契約の解除及び損害賠償請求が可能であり注文者に帰責事由があるときは注文者は報酬請求を拒むことができず双方に帰責事由がないときは注文者は報酬請求を拒むことができ契約の解除も可能です。
報酬の支払時期
633条は報酬は仕事の目的物の引渡しと同時に支払わなければならないと定めています。ただし物の引渡しを要しないときは労働終了後でなければ報酬を請求できないとする規定が準用されます。原則として報酬は後払すなわち完成が先履行となります。
請負人の目的物の引渡義務と注文者の報酬支払義務は同時履行の関係に立ちます。目的物の完成と支払は同時履行ではありません。物の引渡しを要しないときも報酬は後払です。
請負人の報酬債権は請負契約成立の時に発生するものであるから工事完成前でも報酬債権に対する差押えや転付命令が可能であり譲渡も可能です。
注文者が受ける利益の割合に応じた報酬
634条は注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき又は請負が仕事の完成前に解除されたときにおいて請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときはその部分は仕事の完成とみなし請負人は注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができると定めています。
仕事の一部について完成済みであるという状況において仕事の内容が可分でありかつ注文者が既に完成した給付に関して利益を有するときは特段の事情のない限り既に完成した給付については契約を解除することができないとする判例法理を請負が仕事の完成前に解除されたときにも拡張するものです。
要件としては第1に注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったこと又は請負が仕事の完成前に解除されたことが必要です。両当事者に帰責事由がない場合及び請負人に帰責事由がある場合も注文者の責めに帰することができないに含まれます。注文者に帰責事由がある場合には請負人は報酬全額を請求することができます。第2に仕事の内容が可分であることが必要です。第3に注文者が既に完成した給付に関して利益を有することが必要です。
効果としては請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときはその部分は仕事の完成とみなされ請負人は注文者の受ける利益の割合に応じて報酬を請求できます。
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