場所的適用範囲

刑法がどの場所で犯された犯罪に対して適用されるかを場所的適用範囲といいます。1条から4条の2までは場所的適用範囲に関する規定であり1条の属地主義を基本原則としつつ2条以下において他の原則を補充的に採用しています。

国内犯

1条1項は属地主義を採用しており日本国内で行われた犯罪について何人に対しても刑法の適用があります。犯罪地が国内であるためには実行行為と結果の一部が国内で生ずれば足ります。

1条2項は旗国主義を採用しており日本の船舶や航空機の中で犯罪行為が行われたときも日本の刑法が適用されます。これは属地主義の特別な場合を定めたものです。

共犯の犯罪地

共犯については国内で結果が発生した場合及び正犯行為が国内で行われた場合には共犯者全員に刑法が適用されます。また教唆や幇助を行った場所も教唆犯や幇助犯の犯罪地となります。正犯者にとっては教唆や幇助された場所は犯罪地とはならず自己の犯罪地だけが犯罪地となるため正犯者が処罰されないのに共犯者のみが処罰される場合がありえます。

すべての者の国外犯

2条は保護主義に基づき一定の重大犯罪について犯人の国籍や犯罪地を問わずすべての犯人につき刑法の適用を認めています。保護主義とは自国の重要な利益の保護を目的として自国又は自国民の法益を侵害する犯罪に対してすべての犯人につき刑法の適用を認めることをいいます。具体的には内乱の罪、外患の罪、通貨偽造及び行使等の罪、詔書偽造等の罪、公文書偽造等の罪、有価証券偽造等の罪、支払用カード電磁的記録不正作出等の罪及び御璽偽造及び不正使用等の罪が対象です。

国民の国外犯

3条は属人主義に基づき犯人が日本国民である限り犯罪地の内外を問わず刑法の適用を認めています。比較的重い犯罪について日本国民の国外犯につき刑法の適用があるものとし現住建造物等放火の罪、不同意わいせつ及び不同意性交等の罪、殺人の罪、傷害の罪、業務上堕胎等の罪、逮捕及び監禁の罪、略取及び誘拐の罪、窃盗及び強盗の罪、詐欺及び背任の罪、業務上横領の罪などが対象です。

国民以外の者の国外犯

3条の2は保護主義に基づき日本国外において日本国民に対してなされた犯罪を処罰する規定です。国際的に人の移動が日常化し国外において日本国民が犯罪の被害に遭う機会が増加している状況に鑑み日本国民保護の観点から規定されたものです。不同意わいせつ及び不同意性交等の罪、殺人の罪、傷害の罪、逮捕及び監禁の罪、略取及び誘拐の罪並びに強盗の罪などが対象です。

公務員の国外犯

4条は日本国外において一定の公務員犯罪を犯した日本国の公務員に対して刑法の適用を認めています。看守者等による逃走援助罪、虚偽公文書作成等の罪、公務員職権濫用罪、特別公務員暴行陵虐罪及び収賄罪等が対象です。これも属人主義ではありますが日本の公務を保護するという意味において保護主義に位置付けることができます。

条約による国外犯

4条の2は世界主義に基づく規定です。世界主義とは国際社会が共同して対処しなければならない行為について何人がどの地域で犯したか及び自国の利益の侵害を伴うか否かにかかわらず自国の刑法を適用する原則をいいます。ハイジャック行為や国際テロ行為などがその具体例です。

外国判決の効力

5条は外国において確定裁判を受けた者であっても同一の行為について更に処罰することを妨げないとしています。ただし犯人が既に外国において言い渡された刑の全部又は一部の執行を受けたときは刑の執行を減軽し又は免除するとしています。

時間的適用範囲

時間的適用範囲とは刑法の効力が開始する時点から失効する時点までの範囲をいいます。刑法は施行の時以後の犯罪に適用され施行前の犯罪に適用されることはなく遡及処罰の禁止が原則です。

刑の変更

6条は犯罪後の法律によって刑の変更があったときはその軽いものによると規定しています。これは遡及処罰禁止原則によって達成されるべき行為者保護の目的を実質的に推し進めたものであり罪刑法定主義に反するものではありません。

犯罪後とは実行行為の終了後をいい結果発生の時ではなく行為の時が基準となります。法律の新旧は公布時期ではなく施行時期により判別されます。実行行為が新法と旧法にまたがるときは新法は犯罪後の法律ではないから6条の適用はなく常に新法が適用されます。また判例は科刑上一罪につき単純一罪と同様に新法を適用すべきとしています。

判例は刑の変更に含まれるのは主刑の変更のみであり付加刑である没収の変更は含まれないとしつつも労役場留置の期間の変更は刑の変更に当たるとしています。犯罪後裁判までの間に数度にわたる刑の変更があった場合はそのうちで最も軽いものを適用します。

刑の廃止

行為後に刑が廃止された場合は免訴となります。刑の廃止は刑がゼロに変更されたという意味で刑の変更と連続的であるためその区別が問題となります。特に法条競合の特別関係に立つ場合に特別法を廃止した場合が問題となりますが判例は刑の変更に当たるとしています。

限時法

限時法とは存続期限を明示した時限立法や臨時的に設けられた刑罰法規をいいます。期限が近づけば裁判時には期限が切れて処罰されないと予想されるため事実上遵守されなくなるという問題があります。

限時法の理論とは経過規定が存在しない場合にこれと同様の効果を解釈により認めようとする理論です。肯定説のうち常に処罰できるとする見解は法令の実効性を確保するため有効期間中の行為を処罰する必要があることを根拠とします。動機説は法令廃止の理由が国家の法律的見解の変更に基づくときは追及効を認めずそうでないときは認める見解であり実質的な当罰性を基準に処罰範囲を確定すべきであることを根拠とします。否定説は通説であり6条の趣旨は刑罰法規が廃止された以上以前の行為を不可罰とすることにあることを根拠とし明文の根拠なく6条に反して処罰するのは罪刑法定主義に抵触するおそれがあるとします。肯定説に対しては明文の根拠なく6条に反して処罰するのは罪刑法定主義に反すること及び個々の法規に追及効の明文規定を置けば足りることが批判されています。動機説に対しては法律的見解と事実関係を明確に区別することは困難であることが批判されています。否定説に対しては法規範の変更があればすべて処罰しえなくなるとすることは非現実的であることが批判されています。

用語の定義

7条1項は公務員の定義を規定しており国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいいます。7条2項は公務所の定義を規定しており官公庁その他公務員が職務を行う所をいいます。7条の2は電磁的記録の定義を規定しており電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって電子計算機による情報処理の用に供されるものをいいます。

事項的適用範囲

刑法の事項的適用範囲とは刑法の適用されるべき事項の範囲をいいます。8条は第一編総則の規定は他の法令の罪についても適用するとしつつその法令に特別の規定があるときはこの限りでないとしています。第一編総則の規定が適用されないのはその法令に特別の規定がある場合であり犯罪の主体に関する法人処罰規定や両罰規定などがその例です。

アプリの紹介

過去問を一文一問形式で解けるアプリを開発しました。

司法試験 短答式試験 過去問 問題集

司法試験 短答式試験 過去問 問題集

司法予備試験の過去問を1問1答形式でアプリにしました。 効率的な学習をサポートする独自の機能があります。 1. 一問一答形式:テンポよく学習を進められます 2. 音声読み上げ機能:問題文と解説を聴いて学習効率アップ 3. 学習記録の自動管理:復習日、回数、正解率を簡単チェック 通勤中や隙間時間を有効活用し、効果的に試験対策ができます。 司法予備試験合格への第一歩、今すぐダウンロード! 利用規約 https://www.apple.com/legal/internet-services/itunes/dev/stdeula/

App StoreGoogle Play