条例による人権制約の可否
条例は地方公共団体の自主立法であるから住民の基本的人権の制限をその内容とすることも可能と解されています。もっとも憲法が条文の文言上法律で定めることを要求している事項すなわち法律留保事項についても条例による規制が可能かどうかが問題となります。
条例による地域的な別異取扱いと平等原則
条例による規制に地域的な別異取扱いがあることが14条1項の法の下の平等に反しないかが問題となります。
判例は94条が各地方公共団体の条例制定権を認める以上地域によって差別を生じることは当然に予期されるからかかる差別は憲法自ら容認するところであり取締りについて各別に条例を制定する結果その取扱いに差別を生じることがあっても地域差をもって違憲ということはできないとしました。
条例による財産権の制約
29条2項は法律で財産権の内容を定めると規定しているため条例による既得の財産権の制約が認められるかが問題となります。
奈良県ため池条例事件において判例はため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は本条例によりその財産権の行使を殆んど全面的に禁止されることになるがそれは災害を未然に防止するという社会生活上の已むを得ない必要から来ることであって公共の福祉のため当然これを受忍しなければならない義務を負うとしました。そしてため池の堤とうの使用行為は憲法でも民法でも適法な財産権の行使として保障されていないものであって憲法及び民法の保障する財産権の行使の埒外にあるものというべくこれらの行為を条例をもって禁止し処罰しても憲法及び法律に抵触又はこれを逸脱するものとはいえないとしました。
もっともこの判決はため池の堤とうの使用行為が29条の保護範囲外にある以上条例によっても規制することができると述べているにすぎず条例が実質的には法律に準ずるものであるから条例により財産権を規制してもよいとまでは判示していない点に留意が必要です。
学説の中には財産権の内容の規制は法律による必要があるので条例でこれを定めることは許されないが財産権の行使の規制は条例で定めることも許されると解する限定説もあります。しかし財産権の内容と行使を区別することは極めて困難であるとの批判がなされています。
そこで条例は公選の議員をもって組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であり実質的には法律に準ずるものであるから条例により地域の特性に応じた財産権の規制は可能であると一般に解されています。もっとも当該財産権が一地方の利害を超えて全国民の利害に関わるものであったり全国的な取引の対象となりうるものである場合には当該財産権の内容の規制は原則として法律によらなければなりません。
地方自治特別法の趣旨
95条は一の地方公共団体のみに適用される特別法は法律の定めるところによりその地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ国会はこれを制定することができないと定めています。
本条の趣旨は一般に国の特別法による地方自治権の侵害の防止、地方公共団体の個性の尊重、地方公共団体の平等権の尊重及び地方行政における民意の尊重の4点であるとされますがその中心は地方自治権侵害の防止の点にあります。
地方自治特別法の範囲
何が地方自治特別法に当たるかの基準は明確ではありませんが一般に特定の地方公共団体の本質にかかわる不平等又は不利益な特例を設ける法律がそれに当たるとされています。住民の権利や義務に関わるものに限られていません。
一の地方公共団体の一のとは実際にその法律の適用される地方公共団体が一つである必要はなく特定のという意味です。旧軍港のあった4つの市に適用される旧軍港市転換法は地方自治特別法に該当するとして住民投票に付されました。
地方公共団体に適用されるとは特定の地方公共団体に適用されることを意味し特定の地域に適用される場合はこれに当たりません。特定の地方公共団体の地域を対象とする法律であっても国の事務や組織について規定するものであって地方公共団体の組織や運営及び権能に関係のないものは地方自治特別法に該当しません。
一の地方公共団体のみに適用されるとはその法律が適用される地域が既に国法上の地方公共団体であることを当然の前提とします。したがって未だ国法上の地方公共団体が存在していない特殊の地域について一般の地方公共団体と異なる特例を定める法律は地方自治特別法に該当しません。
地方自治特別法の制定手続
本条は国会単独立法の原則の例外であり地方自治特別法は国会の議決だけでは成立せずその地方公共団体の住民の投票において過半数の同意を必要とします。制定過程としては国会での可決後に住民投票が行われ住民投票において過半数の同意を得れば国会の議決が確定し地方自治特別法として成立します。
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