やむを得ずにした行為

やむを得ずにした行為とは防衛行為が必要性と相当性を具備していることをいいます。

必要性とは防衛行為が侵害を排除するために必要な限度であることをいいます。緊急避難と異なり他にとるべき手段がないことすなわち補充性を必要としません。

相当性は一般に法益の相対的均衡すなわち保全すべき法益に比し防衛行為がもたらした侵害が著しく不均衡ではないことと防衛手段の相当性すなわち用いられた防衛手段の危険性が侵害に対し相当なものであることの2つの面から判断されます。正当防衛は正対不正の関係に基づくものであるから反撃行為によって生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より大きくても成立します。しかし軽微な権利を妨害するために侵害者の重大な法益に反撃を加えることはできません。

判例は年齢も若く体力も優れた相手方が手拳を前に突き出し足を蹴り上げる動作を示しながら近づいてきたためその接近を防ぎその危害を免れるため包丁を手に取って腰に構えた行為についてその行動が防御的なものに終始していた場合には防衛手段としての相当性の範囲内のものであるとしています。

喧嘩と正当防衛

かつて判例は喧嘩両成敗の考え方を前提にして喧嘩闘争に正当防衛の観念を入れる余地がないとしていました。しかし現在はその考えを修正し喧嘩闘争において正当防衛が成立するかどうかを判断するに当たっては喧嘩闘争を全般的に観察することを要し闘争行為中の瞬間的な部分の攻防の態様のみによってはならないとして喧嘩闘争においても正当防衛が成立する場合があることを認めるようになっています。

正当防衛の効果

正当防衛が成立すると違法性が阻却され犯罪が不成立となります。反撃が構成要件に該当しなければ正当防衛を問題にする必要はありません。

対物防衛

動物その他のものによる侵害も不正の侵害に当たるとして正当防衛が認められるかが問題となります。

行為無価値論からは不正すなわち違法は法規範違反のことであり規範が人間に対して与えられている以上自然現象や動物による侵害は不正たりえないとして対物防衛は否定されます。ただし動物による侵害について人に故意又は過失がある場合には正当防衛が成立し得ます。

結果無価値論からは違法性は客観的に判断すべきであり人間ではなくても法益侵害ないしその危険を生ぜしめることはできるとして対物防衛は肯定されます。

防衛行為と第三者

防衛行為に伴い侵害とは無関係な第三者の法益を侵害した場合の取扱いが問題となります。

侵害者が第三者の物を利用した場合については正当防衛説は第三者の物が不正の侵害の手段としてその一部となっているとし緊急避難説は違法な侵害を行っていない第三者との関係では正対正であるとします。

防衛者が第三者の物を利用した場合については現在の危難を避けるため危難とは無関係な第三者の法益を侵害して危難を転嫁しているとして緊急避難が問題となります。

防衛行為の結果が第三者に生じた場合については緊急行為説のうち正当防衛説は第三者に対する行為は侵害者に対する正当防衛行為から生じたものであり正当性は失われないとし緊急避難説は結果的に無関係な第三者に対する反撃となっているとします。違法行為説のうち誤想防衛説は第三者への行為は客観的に緊急行為性を欠くが行為者が主観的に正当防衛だと認識して行為している以上誤想防衛の一種として故意責任が阻却されるとし責任阻却説は第三者の法益を侵害しないことを期待することが不可能ないし困難であるから責任が阻却されるとします。

防衛の意思の要否

正当防衛の成立要件として防衛の意思が必要かが問題となります。

防衛の意思不要説は違法性の判断は法益侵害又はその危険の有無という点から客観的になされるべきであり行為者の主観的事情を考慮すべきではないこと及び過失による正当防衛も認めるべきであることを理由とします。

防衛の意思必要説は判例の立場であり違法性の判断の対象は主観及び客観の全体構造をもつ人間の行為であり行為の社会的相当性を判断するに当たって行為者の主観面をも考慮する必要があること及び偶然防衛の場合に犯罪の意図をもって犯罪結果を生ぜしめた者を正当防衛で保護すべきでないことを理由とします。

防衛の意思の内容

防衛の意思とは急迫不正の侵害を認識しつつ侵害を避けようとする単純な心理状態をいいます。憤激又は逆上して反撃したからといって防衛の意思を欠くことにはなりません。また防衛の意思と攻撃の意思とが併存している場合も防衛の意思を欠くことにはなりません。しかし専ら攻撃の意思をもって反撃行為に出た場合すなわち積極的加害意思がある場合には防衛の意思は認められません。

現に反撃行為に及ぶ時点における積極的加害意思は防衛の意思を否定するものですが反撃行為に及ぶ以前の予備及び準備段階における積極的加害意思は急迫性を否定するものであり両者は明確に区別する必要があります。

偶然防衛

偶然防衛とは行為者が防衛の意思を欠き専ら攻撃の意思で行為したのに客観的には偶然にも法益防衛の効果があがった場合をいいます。防衛の意思必要説からは防衛の意思を欠くので既遂罪が成立します。防衛の意思不要説のうちの見解からは結果無価値が欠けるので行為無価値の存在する範囲で未遂罪が成立するとされます。また違法な結果が発生する客観的危険は事後的にみれば存在しないから不可罰となるとする見解もあります。

自招侵害

自招侵害とは自らの行為によって相手方の侵害を招きその状況下で反撃を行った場合に正当防衛が成立するかという問題です。意図的自招、故意的自招及び過失的自招の3つの類型があります。

意図的自招とは相手を害する目的で相手方の侵害を意図的に招致しそれに対して反撃をなす場合をいいます。積極的加害意思があるので正当防衛は成立しません。

故意的自招とは相手方の攻撃を認容しながら自招行為を行う場合をいいます。判例は急迫性の要件ではなく何らかの反撃行為に出ることが正当とされる状況における行為とはいえないとして緊急行為性がないことを理由に正当防衛の成立を否定しています。

過失的自招とは相手方の攻撃を予見しうるのに予見しないまま自招行為を行う場合をいいます。原則として正当防衛は否定されませんが自ら侵害を招いたことにより防衛行為の相当性の要件が慎重に判断されます。

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