特別権力関係理論の意義

特定の者が特別の法律上の原因によって一般の統治関係とは異なる特別の関係に入った場合に、このような関係に置かれた特定の者が一般の国民の場合より基本的人権を広く制限されることを正当化する理論を特別権力関係理論といいます。

特別権力関係理論の内容

特別権力関係理論の内容は次の3点です。第一に、法治主義が排除され、特別権力主体に包括的支配権すなわち命令権と懲戒権が認められます。第二に、一般国民として保障される人権を法律なくして制限することができます。第三に、特別権力関係内部の行為については司法審査は及びません。

特別権力関係が成立する場合

特別権力関係が成立するのは2つの場合です。第一に、本人の同意によって成立する場合として、公務員の任命や国公立学校への入学があります。第二に、法律の規定に基づく場合として、受刑者の刑務所への収容があります。

特別権力関係理論の評価

伝統的な特別権力関係理論は、国会を唯一の立法機関とし、徹底した法治主義の原則を採り、かつ基本的人権の尊重を基本原則とする日本国憲法のもとでは妥当しえないとされています。

現在では、特別権力関係とされてきた種々の関係を個別かつ具体的に考察し、それぞれの関係においていかなる人権がいかなる根拠に基づきどの程度制約されるかを具体的に明らかにすることが重要であると解されています。

公務員の人権

公務員の人権については、国家公務員の政治活動の自由の制限と、公務員や国営企業職員の労働基本権の制限が特に問題となります。

寺西判事補事件

寺西判事補事件において最高裁判所は次のとおり判示しました。国家公務員法が行政府に属する一般職の国家公務員の政治的行為を一定の範囲で禁止しているのは、政治的偏向を排した公務の運営には個々の公務員が厳に中立の立場を堅持して職務を遂行することが必要となるからです。

これに対し、裁判所法が裁判官の積極的な政治運動を禁止しているのは、裁判官の独立及び中立と公正を確保し裁判に対する国民の信頼を維持するとともに、三権分立主義のもとにおける司法と立法、行政とのあるべき関係を規律することにその目的があるとしました。

この目的の重要性と裁判官が単独でまたは合議体の一員として司法権を行使する主体であることに鑑みれば、裁判官に対する政治運動禁止の要請は一般職の国家公務員に対する政治的行為禁止の要請より強いものというべきであるとしました。

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