委任命令の限界
委任命令が可能であるとしても判例と通説は法律の授権が不特定な一般的白紙委任的なものであってはならないとしています。委任の限界については以下の見解が有力です。
第一に、憲法上国会に留保されている事項については特別の解釈上の根拠が存しない限り命令等の他の国法形式への委任は許されません。第二に、憲法上特別の規定がない限り命令等の委任立法は法律を改廃できる効力を有するものであってはならず形式上法律的効力に劣る法的効力をもつものでなければなりません。委任立法が授権の限界を超えるか否かについて争いがある場合その判断権は国会にあり、国会は独自の解釈権の行使により当該委任立法の無効を決議できます。
罰則の委任
73条6号ただし書は、特に法律の委任がある場合においては法律以下の法令すなわち政令や条例で罰則すなわち犯罪構成要件及び刑を定める法規を設けることができることを示しています。もっとも罰則の委任は罪刑法定主義の原則からいって特に厳格性が要求され、犯罪構成要件については立法目的と概括的構成要件が、刑を定める法規についてはその原則が法律で定められなければなりません。
人事院規則への委任
国家公務員法102条1項に基づき一般職に属する国家公務員の職責に照らして必要と認められる政治的行為の制限を規定した人事院規則14-7について、最高裁は実質的に何ら違法や違憲の点は認められないばかりでなく国家公務員法の規定によって委任された範囲を逸脱した点は何ら認められず形式的にも違法ではないと判示しました。なおこの判決は白紙的な委任を合憲としたとみる見解があります。
猿払事件と委任の限度
猿払事件において最高裁は、国家公務員法102条1項により人事院規則で定めることが委ねられる政治的行為は公務員組織の内部秩序を維持する見地から課される懲戒処分を根拠づけるに足りるものであるとともに国民全体の共同利益を擁護する見地から科される刑罰を根拠づける違法性を帯びるものであるとしたうえで、それが懲戒処分及び刑罰の対象となる政治的行為の定めを一様に委任するものであるからといってそのことの故に憲法の許容する委任の限度を超えることになるものではないと判示しました。
これに対して、公務員関係内における規律として定める場合と刑罰の構成要件として定める場合とを区別しない立法の委任は少なくとも刑罰の対象となる禁止行為の規定の委任に関する限り41条、15条1項、16条、21条及び31条に違反するとの反対意見が付されています。
監獄法施行規則の委任逸脱
監獄法施行規則120条により義理の姪との面会の許可申請を不許可処分とされた在監者が同規則の違憲性を主張した事案において、最高裁は同規則が原則として被勾留者と幼年者との接見を許さないこととする規定について、たとえ幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであったとしてもそれ自体法律によらないで被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって監獄法の委任の範囲を超えた無効のものであると判示しました。
児童扶養手当事件
婚姻によらないで懐胎した児童を出産し監護し児童扶養手当の支給を受けてきた者が当該児童が父親から認知されたことを理由に児童扶養手当受給資格喪失処分を受けた事案において、最高裁は児童扶養手当法4条1項各号は世帯の生計維持者としての父による現実の扶養を期待できない児童を支給対象児童として定めているが父によって認知された婚姻外懐胎児童については同項各号に準ずる状態が続いており、それを支給対象から除外する施行令の規定は法の委任の趣旨に反するとしました。
医薬品インターネット販売規制事件
新薬事法の施行に伴って制定された新薬事法施行規則では店舗以外の場所にいる者に対するインターネット販売は第3類医薬品に限って行うことができ第1類と第2類医薬品の販売等及び情報提供はいずれも店舗において専門家との対面により行わなければならない旨の規定が設けられました。
最高裁は、旧薬事法の下では違法とされていなかった郵便等販売に対する新たな規制は郵便等販売をその事業の柱としてきた者の職業活動の自由を相当程度制約するものであることが明らかであるとしました。新施行規則の規定がこれを定める根拠となる新薬事法の趣旨に適合するものでありその委任の範囲を逸脱したものではないというためには郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が上記規制の範囲や程度等に応じて明確に読み取れることを要するとしました。
新薬事法の諸規定には郵便等販売を規制すべきとの趣旨を明確に示す規定がないこと、国会が新薬事法を可決するに際して一部医薬品に係る郵便等販売を禁止すべきであるとの意思を有していたとはいい難いことから、新薬事法の授権の趣旨が第1類医薬品及び第2類医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止する旨の省令の制定までをも委任するものとして上記規制の範囲や程度等に応じて明確であると解するのは困難であるとしました。したがって新施行規則は新薬事法の委任の範囲を逸脱し違法かつ無効であると判示しました。
再委任の可否
再委任とは法律の委任により定められた政令が当該委任事項をさらに府令や省令又は行政官庁の告示に委任することをいいます。
否定説は、法律自体に再委任を認める規定が存在しない場合には許されないとします。法律が委任の対象となる命令を指定した趣旨はあくまでその命令で定めることを要求する法意であることを理由とします。
肯定説は、法律に明文の規定がなくともやむを得ない合理的理由があり受任者の実質的な裁量の余地が厳しく限定されていれば再委任も許されるとします。その理由として、事柄の性質上委任命令で直接に定めることが困難であったり適当でないと認められる事項については合理的な範囲内での再委任が許されるとみるのが常識的であること、再委任の範囲が厳格に限定されていれば41条の趣旨を没却するおそれも少ないことが挙げられます。
判例は再委任に肯定的な立場をとっています。酒税法が所定の事項の定めを命令に委ねた点につき帳簿の記載等の義務の内容の一部たる記載事項の詳細を命令の定めるところに一任しているにすぎないのであって立法権がかような権限を行政機関に賦与することは憲法上差し支えないとされています。なおこの事案では犯罪構成要件の定めの再委任が問題となっており、これについては罪刑法定主義の理念から再委任の可否一般とは別個に吟味されるべきです。学説は一般に再委任をすることについてやむを得ない事情が認められるとともに再委任の範囲が相当に絞られている場合にはたとえその内容が犯罪構成要件に関する定めであるとしても再委任が許されるとみる方がむしろ合理的であるとして判例に賛成しています。
条例と国会中心立法の原則
条例が国会中心立法の例外かについて争いがありますが、条例の制定は国会の法律制定と同じ性質の行為であること、国会と同様住民の選挙により選出される議員で構成される地方議会によって制定されるものであることから例外とする必要はないとするのが通説です。
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