信教の自由の沿革

明治憲法下においても信教の自由は保障されていましたが、それは安寧秩序を妨げず及び臣民たるの義務に背かない限りにおいてという制限を伴うものであり、しかも神社神道すなわち国家神道が事実上国教的な地位を占めていたこともあって信教の自由の保障は不完全なものでした。

そこで日本国憲法は無条件に信教の自由を保障するとともに、その保障を一層確実なものとするため政教分離規定を設けました。

信教の自由の具体的な保障内容

信教の自由の具体的な保障の内容としては、信仰の自由、宗教的行為の自由、宗教的結社の自由の3つが挙げられます。

信仰の自由

信仰の自由とは、宗教を信仰すること又は信仰しないこと、信仰する宗教を選択し又は変更することについて個人が任意に決定する自由をいいます。信仰を告白する自由や信仰を告白しない自由すなわち沈黙の自由も含まれます。これらの信仰の自由は内心の領域にとどまる限り絶対的に保障されます。

個人に対して信仰の告白を強制したり信仰に反する行為を強制することは許されません。また、いずれの宗教団体に属しているかといった個人の信仰に関する申告をさせることも、それが宗教とは無関係な行政上ないし司法上の要請であっても許されません。さらに、信仰自体の反社会性を理由として国家権力が当該信仰を規制することも許されません。

宗教的行為の自由

宗教的行為の自由とは、宗教上の祝典、儀式、行事その他の布教などを任意に行う自由をいいます。これには宗教的行為をしない自由も含まれます。20条2項の規定は宗教的行為をしない自由が保障されることを重ねて強調するものとされています。宗教的行為の自由は信仰に基づく外部的行為の自由ともいわれますが、そもそも保障の範囲外となる外部的行為も存在します。

加持祈祷事件

精神障害者Aの近親者から平癒祈願の依頼を受けた僧侶Xは線香護摩による加持祈祷を行ったところその線香の熱のためにAが身をもがくなどしたためAを殴打した結果Aを死亡させました。

最高裁判所は、Xが行った加持祈祷行為の動機、手段、方法およびそれによってAの生命を奪うに至った暴行の程度等は医療上一般に承認された精神異常者に対する治療行為とは到底認め得ないものであり、一種の宗教行為としてなされたものであったとしても他人の生命や身体等に危害を及ぼす違法な有形力の行使に当たるものであるとしました。これにより被害者を死に致したものである以上Xの行為が著しく反社会的なものであることは否定し得ないとして信教の自由の保障の限界を逸脱したものというほかはないとしました。

宗教的結社の自由

宗教的結社の自由とは、特定の宗教の宣伝や共同で宗教的行為を行うことを目的とする団体を結成する自由をいいます。結社の自由のうち宗教的な結社については信教の自由の一部として保障されます。なお、宗教的結社の自由は宗教法人として法人格を取得することまでをも当然に保障するものではありません。

信教の自由に対する制約の態様

信教の自由に対する制約には思想及び良心の自由と同様に、信仰を理由とする不利益処分、信仰の告白の強制、および信仰に反する行為の強制すなわち信仰に基づく外部的行為の自由に対する制約といった態様があるとされています。特に問題となる制約の態様は信仰に反する行為の強制であり、信教の自由に基づく一般的な義務の免除の可否という形で論じられることが多いとされています。

宗教法人オウム真理教解散命令事件

宗教法人法に基づき解散命令が請求された事案について、最高裁判所はまず解散命令の効果として宗教上の行為に対する制約の有無を検討しました。解散命令によって宗教法人が解散しても信者は法人格を有しない宗教団体を存続させあるいはこれを新たに結成することが妨げられるわけではなく、また宗教上の行為を行いその用に供する施設や物品を新たに調えることが妨げられるわけでもないとしました。すなわち、解散命令は信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わないとしました。

もっとも、宗教法人の解散命令が確定したときはその清算手続が行われ宗教法人に帰属する財産で礼拝施設その他の宗教上の行為の用に供していたものも処分されることになるから、これらの財産を用いて信者らが行っていた宗教上の行為を継続するのに何らかの支障を生ずることがあり得るとしました。このように宗教法人に関する法的規制が信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしても何らかの支障を生じさせることがあるとするならば、憲法の保障する精神的自由の一つとしての信教の自由の重要性に思いを致し憲法がそのような規制を許容するものであるかどうかを慎重に吟味しなければならないとしました。

その上で本件解散命令が20条1項に違反するかについて、次の4点を考慮しました。第一に宗教法人の解散命令の制度は専ら宗教法人の世俗的側面を対象としかつ専ら世俗的目的によるものであって宗教団体や信者の精神的ないし宗教的側面に容かいする意図によるものではなくその制度の目的も合理的であること、第二に解散命令によって宗教団体やその信者らが行う宗教上の行為に何らかの支障を生ずることが避けられないとしてもその支障は解散命令に伴う間接的で事実上のものであるにとどまること、第三に本件解散命令は法令に違反して著しく反社会的な行為を組織的に行った行為に対処するのに必要でやむを得ない法的規制であること、第四に本件解散命令は裁判所の司法審査によって発せられたものであるからその手続の適正も担保されていること。以上の点から、宗教上の行為の自由はもとより最大限に尊重すべきものであるが絶対無制限のものではなく、本件解散命令は20条1項に違背するものではないとしました。

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