相続の一般的効力

896条は相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定めています。ただし被相続人の一身に専属したものはこの限りではありません。相続の効力は包括承継であり個々の権利義務について個別の移転行為を必要としません。

一身専属権

被相続人の一身に専属した権利義務は相続の対象となりません。委任契約における委任者及び受任者の地位は一身専属的であり相続されません。雇用契約上の労働者の地位も一身専属的です。扶養請求権も一身専属権であり相続の対象となりません。身元保証についても特段の事情のない限り相続されないとされています。

使用貸借における借主の地位は借主の死亡により終了するのが原則です。代理権も本人又は代理人の死亡により消滅します。

承継される権利義務

占有権は相続により承継されます。相続人は被相続人の占有を承継するか自己固有の占有を主張するかを選択できます。

借家権は相続の対象となります。内縁の妻が相続人でない場合であっても借地借家法36条により居住用建物の賃借人が相続人なしに死亡したときは事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者が賃借人の権利義務を承継するとされています。

保証債務は相続されます。ただし身元保証債務や信用保証債務のように保証人の個人的信用に基礎を置くものについては特段の事情のない限り相続人に承継されないとされています。もっとも責任の限度額と期間の定めのある信用保証債務は普通の保証と異ならないとして相続されるとされています。

不法行為に基づく損害賠償請求権は被害者が生前に請求の意思を表明しなくても相続の対象となるとされています。慰謝料請求権についても被害者が死亡した場合には相続人が相続により取得するとされています。

死亡退職金

死亡退職金は受給権者の範囲及び順位について法令等に定めがある場合には受給権者である遺族が自己固有の権利として取得するものであり相続財産には属しないとされています。

生命保険金請求権

生命保険金請求権について保険金受取人として特定の者が指定された場合は当該保険金請求権は保険契約の効力により保険金受取人が自己固有の権利として取得し相続財産に属しないとされています。保険金受取人が単に相続人と指定された場合であっても保険金請求権は相続財産には含まれないとされています。

祭祀財産の承継

897条1項は系譜、祭具及び墳墓の所有権は相続分の規定にかかわらず慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継すると定めています。ただし被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときはその者が承継します。同条2項は慣習が明らかでないときは祭祀を主宰すべき者は家庭裁判所が定めると規定しています。

祭祀財産は相続財産とは別個に承継されるものであり遺産分割の対象とはなりません。被相続人の指定は遺言によることを要せず生前行為でも黙示の意思表示でも差し支えないとされています。

相続財産の保存

897条の2は家庭裁判所は利害関係人又は検察官の請求によって相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができると定めています。この規定は令和3年改正により創設されたものであり相続開始後遺産分割前の段階を含めて相続財産の保存のために必要な処分を命じることができるようにしたものです。

共同相続の効力

898条は相続人が数人あるときは相続財産はその共有に属すると定めています。この共有の性質については共有説が通説であり民法249条以下の共有の規定が適用されます。

共同相続と登記

共同相続人の1人が単独で相続財産である不動産の所有権移転登記を経由した場合に他の共同相続人は登記なくして自己の持分を対抗できるとされています。これは自己の持分については登記を経由しなくても第三者に対抗できるためです。ただし他の共同相続人の持分については無権利の登記であるから第三者もこれを有効に取得することはできません。

可分債権の共同相続

899条の下では可分債権は相続開始と同時に当然に各共同相続人にその相続分に応じて分割されるとされていました。しかし預貯金債権については最大決平成28年12月19日がこの判例を変更し預貯金債権は遺産分割の対象となるとしました。預貯金債権は相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく遺産分割の対象となります。

不可分債権については各共同相続人は単独でその債権全部の履行を請求することができます。

可分債務の共同相続

可分債務は相続開始と同時に当然に各共同相続人にその相続分に応じて分割されるとされています。

不可分債務は各共同相続人が全部について履行の責任を負います。連帯債務については分割承継されるとする見解が判例の立場です。

金銭の共同相続

金銭は遺産分割までの間は共同相続人の共有に属するものとして遺産分割の対象となるとされています。相続開始後に共同相続人が遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は遺産とは別個の財産であり各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するとされています。遺産分割の遡及効は遺産分割前に生じた賃料債権の帰属には影響を及ぼさないとされています。

株式等の共同相続

株式は相続により共同相続人の準共有に帰属し権利行使者を定めて会社に通知しなければ権利を行使することができません。投資信託の受益権も可分給付を目的とする権利であっても相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるものではないとされています。

共同相続における権利の承継の対抗要件

899条の2第1項は相続による権利の承継は遺産の分割によるものかどうかにかかわらず法定相続分を超える部分については登記、登録その他の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないと定めています。

これにより相続させる旨の遺言がある場合であっても法定相続分を超える部分については対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができません。法定相続分の範囲内では対抗要件なくして権利の承継を対抗できます。

同条2項は債権の場合について共同相続人が法定相続分を超えて債権を承継した場合には遺言の内容を明らかにして債務者に通知をしたときは共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして対抗要件の規定を適用すると定めています。

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