科刑上一罪の意義
科刑上一罪とは1人に数罪が成立するが刑罰の適用上一罪として扱う場合をいいます。科刑上一罪には観念的競合と牽連犯があります。
科刑上一罪の処断
科刑上一罪はその最も重い刑により処断します。すなわち最も重い刑を定めた犯罪以外の犯罪については評価されません。
この点について最も重い罪の刑は拘禁刑のみであるがその他の罪に罰金刑の任意的併科の定めがある場合には最も重い罪の拘禁刑にその他の罪の罰金刑を併科することができます。
また数罪が科刑上一罪の関係にある場合において各罪の主刑のうち重い刑種の刑のみを取り出して軽重を比較対照した際の重い罪及び軽い罪のいずれにも選択刑として罰金刑の定めがあり軽い罪の罰金刑の多額の方が重い罪の罰金刑の多額よりも多いときは罰金刑の多額は軽い罪のそれによるべきとするのが判例です。
2個以上の没収は科刑上一罪の場合にも併科します。
観念的競合の意義
観念的競合とは1個の行為が2個以上の罪名に触れた場合をいいます。2個以上の罪名に触れるとは法的評価において数個の構成要件に該当し数罪が認められることをいいます。
1個の行為が異なる構成要件に該当する場合を異種類の観念的競合といい同一の構成要件に数回該当する場合を同種類の観念的競合といいます。
1個の行為の意義
判例は1個の行為とは法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で行為者の動態が社会的見解上1個のものと評価を受ける場合をいうとしています。これに対し多くの学説は構成要件的観点からの規範的評価を取り込まざるを得ないとしています。
観念的競合の肯定例
判例上観念的競合が認められた異種類の具体例としては職務執行中の公務員に暴行を加えて負傷させた場合の公務執行妨害罪と傷害罪、騒乱行為をするにつき他人の住居に侵入した場合の騒乱罪と住居侵入罪、放火して死体を損壊した場合の放火罪と死体損壊罪、殺意をもって女子を不同意性交し死亡させた場合の不同意性交等致死罪と殺人罪、盗品等と知りながら賄賂として収受した場合の収賄罪と盗品等有償譲受罪、無免許運転罪と酒酔い運転罪、救護義務違反罪と報告義務違反罪などがあります。
同種類の具体例としては1個の行為で数名の公務員の職務執行を同時に妨害した場合の数個の公務執行妨害罪、1個の行為で数名の共犯者を蔵匿又は隠避した場合の数個の犯人蔵匿及び隠避罪、1個の業務上過失行為によって数名を死亡させた場合の数個の業務上過失致死罪、1個の恐喝行為によって数人から金品を喝取した場合の数個の恐喝罪などがあります。
観念的競合の否定例
判例上観念的競合が否定された具体例としては酒酔い運転中に歩行者をひいて死亡させた場合の酒酔い運転罪と過失運転致死罪は併合罪とされ無免許運転中に歩行者をひいて傷害を負わせた場合の無免許運転罪と過失運転致傷罪も併合罪とされています。また制限速度超過状態で継続して自動車を運転した道路上の2地点における速度違反行為の2つの最高速度違反も併合罪とされています。
牽連犯の意義
牽連犯とは犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときをいいます。牽連犯となるには犯人が主観的にその一方を他方の手段又は結果の関係において実行したというだけでは足りずその数罪間にその罪質上通例手段結果の関係が存在することが必要です。
牽連犯の肯定例
判例上牽連犯が認められた具体例としては住居侵入罪と窃盗罪又は強盗罪、住居侵入罪と不同意性交罪、住居侵入罪と殺人罪、住居侵入罪と放火罪、私文書偽造罪と同行使罪、私文書偽造罪及び同行使罪と詐欺罪、公文書偽造罪と同行使罪、偽造文書行使罪と詐欺罪、公正証書原本不実記載罪と同行使罪、身代金取得目的略取罪と身代金要求罪並びに業務妨害罪と恐喝罪があります。
牽連犯の否定例
判例上牽連犯が否定された具体例としては窃盗罪と詐欺罪、放火罪と保険金の詐欺罪、監禁罪と不同意性交致傷罪、監禁罪と傷害罪、監禁罪と恐喝罪、監禁罪と身代金取得目的略取罪及び身代金要求罪、監禁罪と殺人罪、強盗殺人罪と痕跡を隠蔽するための放火罪、殺人罪と死体遺棄罪、殺人罪と死体損壊罪、強盗殺人罪と死体遺棄罪、窃盗教唆罪と盗品有償譲受罪並びに窃盗教唆罪と盗品等保管罪があります。
かすがい現象
かすがい現象とは本来併合罪となるべき数罪がそれぞれある罪と観念的競合又は牽連犯の関係に立つことによって数罪全体が科刑上一罪として取り扱われることをいいます。しかしこのようなかすがい作用を認めるとかすがいとなる罪の刑が結び付けられる罪の併合罪の刑よりも軽い場合にかえって刑が軽くなり不均衡であるという問題があるため解釈によるかすがいはずしが試みられています。
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