物の定義
85条はこの法律において物とは有体物をいうと定めています。85条は物権の客体を有体物に限定するための規定ですが今日では無体物の上にも所有権をはじめとする物権が成立することを認めざるを得ないため85条は物権の対象を限定する意味をもっていません。民法の中でも権利の上に物権が成立する場合として転抵当権、転質権、権利質及び準占有権が規定されています。
所有権の客体となるための要件
所有権の客体となるためにはまず有体物であることが必要です。次に排他的支配が可能であることすなわち支配可能性が必要です。さらに人の身体でないことすなわち非人格性が必要であり現代法では人の身体に対して排他的支配は認められません。ただし分離された身体の一部は物として客体となりえます。
加えて特定していることすなわち特定性が必要です。特定性具備の有無は物理的状態のみならず社会的及び経済的な観点をも考慮して決定されます。したがって当初の客体が終始固定していなくても特定性は失われるわけではありません。集合動産譲渡担保はその例です。
最後に独立しており物の一部ではないことすなわち独立性及び単一性が必要です。
不動産と動産
86条1項は土地及びその定着物は不動産とすると定めています。同条2項は不動産以外の物はすべて動産とすると定めています。民法は不動産と動産とで取扱いに著しい差異を設けているため物を不動産と動産とに分類しています。
土地
土地とは地表を中心として人の支配及び利用の可能な範囲内でその上下に及ぶ立体的存在です。海は国が一定範囲を区画し他の海面から区別して排他的支配を可能にしたうえで公用を廃止し私人の所有に帰属させた場合にはその区画部分は所有権の客体たる土地に当たります。
定着物
定着物とは継続的に土地に固着し固着して使用されることがその物の性質と認められるものをいいます。定着物の不動産としての扱いにはいくつかの類型があります。
まず土地の一部として独立の不動産として扱われないものがあります。石垣や砂利などがその例です。
次に土地とは独立の不動産として扱われるものがあります。建物がその典型です。建築中の建物は屋根瓦を葺き荒壁を塗り終わった段階で建物となります。建物の個数はその区分が独立の建物としての効用を有するか否かで決せられます。
さらに一定の条件の下で独立の不動産と認められるものがあります。立木法上の立木は登記により完全に土地から独立の不動産となり抵当権の設定が可能となります。立木法の適用のない立木は原則として土地の構成部分であり独立の物ではありませんが明認方法等により土地とは独立の取引客体とすることができます。
主物と従物
87条1項は物の所有者がその物の常用に供するため自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときはその附属させた物を従物とすると定めています。同条2項は従物は主物の処分に従うとしています。
2個の独立性を有する物の間に客観的及び経済的な主従結合関係がある場合に個人の権利を害しない範囲でこれを法律的運命においても同一に取り扱いその結合は破壊すべきではないという要請に応じて主物及び従物の制度が設けられています。
従物の要件
従物の要件としては継続的に主物の効用を助けること、主物に付属すると認められる程度の場所的関係にあること、主物と同一の所有者に属すること及び独立性を有することの4つが必要です。
従物の規定は権利にも準用されます。賃借地上の建物の売買契約が締結された場合には特段の事情のない限り売主は買主に対して敷地の賃借権をも譲渡したものと認められます。
天然果実と法定果実
果実とは物より生ずる経済的収益をいい元物とは果実を生ずる物をいいます。
88条1項は物の用法に従い収取する産出物を天然果実とすると定めています。天然果実とは物の経済的用途に従って有機的又は無機的に産出される物をいい牛乳、羊毛、野菜、鉱物等がその例です。
88条2項は物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とすると定めています。地代、家賃及び利息等がその例です。
果実の帰属
89条1項は天然果実はその元物から分離する時にこれを収取する権利を有する者に帰属すると定めています。天然果実の収取権者は分離する時に収取する権利のある者であり元物の所有者、賃借権者、地上権者及び永小作権者等がこれに当たります。
89条2項は法定果実はこれを収取する権利の存続期間に応じて日割計算によりこれを取得すると定めています。法定果実は発生する日を基準に収取する権利の期間を日割で計算します。
89条は任意規定であり果実の帰属については当事者間で争いを生ずるおそれがあるためこれを防止するために特に規定が設けられています。
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