受遺者又は受贈者の負担額
1047条1項は受遺者又は受贈者は遺贈又は贈与の目的の価額を限度として遺留分侵害額を負担すると定めています。受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては当該価額から遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額が限度となります。
遺留分侵害額の負担の順序として受遺者と受贈者とがあるときは受遺者が先に負担します。受遺者が複数あるとき又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担します。ただし遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときはその意思に従います。受贈者が複数あるときは後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担します。死因贈与は贈与として取り扱われ遺贈、死因贈与、生前贈与の順に負担するとされています。
受遺者等による遺留分権利者承継債務の消滅
1047条3項は遺留分侵害額請求の行使を受けた受遺者又は受贈者は遺留分権利者承継債務について弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは消滅した債務の額の限度において遺留分権利者に対する意思表示によって負担する債務を消滅させることができると定めています。この場合において当該行為によって遺留分権利者に対して取得した求償権は消滅した当該債務の額の限度において消滅します。
遺留分権利者の相続債務額は遺留分侵害額算定の基礎に算入することとされておりその算入によって加算された分だけ受遺者等が遺留分権利者に対して支払うべき金銭債務を増加させることとなります。受遺者等が遺留分権利者の相続債務を消滅させる行為をした場合にさらに遺留分権利者に求償権を行使できるとすると受遺者等に実質的に二重の利益を得させることとなるためこれを防止するために求償権も消滅することとされています。
受遺者等の無資力による損失
1047条4項は受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は遺留分権利者の負担に帰すると定めています。
期限の許与
1047条5項は裁判所は受遺者又は受贈者の請求により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができると定めています。受遺者等が遺留分侵害額請求の行使を受けると金銭債務を弁済しなければならなくなるため弁済の原資となる金銭を準備する時間を与え受遺者等の保護を図るための規定です。
遺留分侵害額請求権の期間の制限
1048条は遺留分侵害額の請求権は遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは時効によって消滅すると定めています。相続開始の時から10年を経過したときも同様です。法律関係の早期安定を図る趣旨です。
知った時とは単に相続開始や贈与や遺贈があったことを知るのみではなくそれが遺留分を侵害し遺留分侵害額請求をしうべきものであることを知った時を意味するとされています。10年の期間の性質については除斥期間と解するのが多数説です。
遺留分の放棄
1049条1項は相続の開始前における遺留分の放棄は家庭裁判所の許可を受けたときに限りその効力を生ずると定めています。遺留分権も個人的な財産権であるから本来は事前にこれを放棄しうるはずですが無制約に放棄を許すと被相続人の威力により相続人に放棄を強要することも考えられるため家庭裁判所の後見的役割を期待しその許可を得た場合に限り事前放棄は効力を生ずるものとされています。
同条2項は共同相続人の1人のした遺留分の放棄は他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさないと定めています。遺留分は各相続人について定められるものであるから遺留分を有する共同相続人のうちの1人が遺留分を放棄しても他の相続人の遺留分は増加せず被相続人の自由に処分しうる財産額が放棄された分だけ増加するにすぎません。
遺留分を放棄した者は相続放棄をしたわけではないから相続人としての地位は失いません。一方相続放棄した者は初めから相続人とならなかったものとみなされるので他の相続人の遺留分は増加します。
相続開始後の遺留分の放棄については明文の規定はありませんが個人財産権の処分の自由の見地から家庭裁判所の許可なく認められます。
被代襲者が遺留分を事前放棄すると代襲相続人にも遺留分はなくなります。
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