逮捕及び監禁の罪の保護法益
逮捕及び監禁の罪の保護法益は人の場所的移動の自由です。場所的移動の自由の内容については学説の対立があります。判例及び多数説は可能的自由すなわち移動しようと思えば移動できる自由と解していますが現実的自由すなわち現実に移動しようと思ったときに移動できる自由と解する見解もあります。
可能的自由説に対しては身体の場所的移動の自由に生じた危険すなわち未遂を処罰することになってしまい処罰範囲を不当に拡大するとの批判があります。現実的自由説に対しては監禁されている者が途中で寝込んでしまった場合現実には身体の拘束が続いているのに寝込んだ時点で監禁行為は終了していることになってしまうとの批判があります。
可能的自由説では被害者が監禁に気付いていない場合であっても逮捕及び監禁罪は成立しますが現実的自由説では被害者の認識が必要であるため逮捕及び監禁罪は成立しません。同様に幼児に対する監禁について可能的自由説では逮捕及び監禁罪が成立しますが現実的自由説では成立しません。
逮捕及び監禁罪の客体
人とは場所的移動すなわち身体活動の自由を有する自然人をいいます。場所的移動の能力を有しない生まれたばかりの嬰児や意識喪失状態の者は人に含まれませんが被害者に意思能力は不要と解されるので幼児や精神障害者なども人に含まれます。裁判例は生後1年7月の幼児が自然的及び事実的な意味において任意に行動しうる者である以上意思能力を欠如しているものであってもなお監禁罪の保護に値すべき客体となりうるとして監禁罪の成立を認めています。
逮捕の意義
逮捕とは人の身体を直接的に拘束してその身体活動の自由を奪うことをいいます。
監禁の意義
監禁とは一定の区域からの脱出を不可能もしくは著しく困難にすることをいいます。監禁の方法は有形的方法に限られず無形的方法によることもできます。有形的方法の例としては走行する原付自転車に乗せる行為があり無形的方法の例としては入浴中の女性の衣類を隠し浴室から出ることを妨害する行為があります。
偽計による監禁も認められます。判例は被害者を母親のところに連れて行くと騙して車に乗せ気付いた被害者が停止を要求したのに無視して走行した事案において監禁の方法には偽計によって被害者の錯誤を利用する場合をも含むと解するのが相当であるとし被害者が気付く以前をも含め監禁を認めています。
逮捕と監禁の罪数
人を逮捕し引き続いて監禁した場合には包括して220条の単純一罪が成立するとするのが判例です。
被害者の承諾
逮捕及び監禁について被害者の承諾がある場合はおよそ法益侵害そのものが認められないからそもそも構成要件該当性が認められません。もっともその同意が強制による場合や錯誤に基づく場合には同意があったとはいえません。
逮捕及び監禁罪の性質
逮捕及び監禁罪は継続犯です。
逮捕及び監禁致死傷罪
221条は逮捕及び監禁罪を犯しよって人を死傷させた者は傷害の罪と比較して重い刑により処断すると定めています。逮捕及び監禁致死傷罪は逮捕及び監禁罪の結果的加重犯であるので逮捕及び監禁が未遂に終わったときは成立しません。
逮捕及び監禁の手段として用いた暴行や脅迫から死傷結果が生じた場合だけでなく逮捕及び監禁という事実から死傷結果が生じた場合すなわち逮捕及び監禁状態が原因となって死傷結果が生じた場合も本罪が成立します。監禁中に被害者が窓から逃げようとして死亡した場合や停車中の自動車のトランク内に監禁された被害者が他の自動車の追突により死亡した場合などがこれにあたります。
これに対し監禁中に加えられた暴行が監禁の手段ではなく単に監禁の機会になされた場合であってそれにより死傷結果が生じたときは本罪ではなく傷害罪又は傷害致死罪が別途成立しこれと逮捕及び監禁罪の併合罪となります。
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