正当防衛

720条1項は他人の不法行為に対し自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防御するためやむを得ず加害行為をした者は損害賠償の責任を負わないと定めています。ただし被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げません。

正当防衛の要件は他人の不法行為に対し自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防御するためにやむを得ず加害行為をしたことです。効果として違法性が阻却されます。ただし防衛行為により第三者に損害を与えた場合には第三者は不法行為をなした者に対して損害賠償を請求できます。

緊急避難

720条2項は正当防衛の規定を他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用すると定めています。

緊急避難の要件は他人の物から生じた急迫の危難を避けるためにやむを得ず当該他人に属するその物を損傷したことです。効果として正当防衛の規定が準用されます。

損害賠償請求権に関する胎児の権利能力

721条は胎児は損害賠償の請求権については既に生まれたものとみなすと定めています。胎児は権利能力がないため損害賠償請求をなしえないはずですが本条は胎児の利益保護のために胎児の権利能力を擬制するものです。

損害賠償の方法

722条1項は417条及び417条の2の規定を不法行為による損害賠償について準用すると定めています。

不法行為の損害賠償は金銭賠償が原則です。金銭賠償の原則が原状回復的方法を否定していると考えられるので原状回復を求めることは不可能と解されています。

名誉毀損による不法行為の場合には裁判所は名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができます。名誉毀損はその性質上必ずしも金銭その他の物品をもって賠償することができるものではないためです。また被侵害利益の重大性等に照らして一定の場合には差止請求権も認められています。

過失相殺

722条2項は被害者に過失があったときは裁判所はこれを考慮して損害賠償の額を定めることができると定めています。被害者にも過失があったときには損害賠償額算定に当たってもこれを斟酌するのが公平であることからこの規定が設けられています。

過失相殺をするためには被害者に損害の発生を避けるのに必要な注意をする能力すなわち事理弁識能力が必要です。

被害者に過失があったとは単に被害者本人の過失のみでなく広く被害者側の過失を包含します。被害者側の過失とは被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失を意味します。判例上被害者側の過失が肯定された例としては被害者の被用者の過失、子の損害賠償請求における親の過失、妻の損害賠償請求における夫の過失及び共同して暴走行為をした者の過失があります。夫の過失については内縁関係も含みますが夫婦の婚姻関係が既に破綻している場合などの特別の事情がある場合は除外されます。判例上被害者側の過失が否定された例としては園児の損害賠償における引率中の保育士の過失や結婚予定だが婚姻も同居もしていない交際相手の過失があります。

過失相殺の効果として具体的事情の程度に応じて賠償金の減額が行われます。賠償額の算定について過失を考慮するか否かは裁判所の自由裁量に委ねられますが全額免除は認められていません。

被害者の素因

被害者に対する加害行為と被害者のり患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において当該疾患の態様や程度などに照らし加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは裁判所は損害賠償の額を定めるに当たり722条2項の過失相殺の規定を類推適用して被害者の当該疾患を斟酌することができるとされています。もっとも被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有しておりそれが加害行為と競合して傷害を発生させ又は損害の拡大に寄与したとしてもその身体的特徴が疾患に当たらないときは特段の事情がない限りこれを損害賠償の額を定めるに当たり斟酌することはできないとされています。

心因的素因については被害者にとってどうすることもできない事情である身体的素因の場合と異なり賠償額の減額事由となることについては争いはありません。判例はこの場合も722条2項を類推適用するとしています。

名誉毀損における原状回復

723条は他人の名誉を毀損した者に対しては裁判所は被害者の請求により損害賠償に代えて又は損害賠償とともに名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができると定めています。名誉あるいは信用が毀損された場合には損害の金銭評価は困難であり金銭賠償がなされても十分な救済効果が得られないことから名誉及び信用の毀損については特に原状回復請求を認めたものです。

名誉とは社会的名誉を指し名誉感情を含みません。名誉を回復するのに適当な処分として裁判所が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するに止まる程度の謝罪広告の掲載を命ずることは憲法19条に違反しないとされています。もっともこれは他人の名誉を毀損した者に対して認められる処分でありプライバシーを侵害した者に対して認められるものではありません。

名誉を違法に侵害された者は損害賠償又は名誉回復処分を求めることができるほか人格権としての名誉権に基づき加害者に対し現に行われている侵害行為を排除し又は将来生ずべき侵害を予防するため侵害行為の差止めを求めることができます。名誉は生命及び身体とともに極めて重大な保護法益であり人格権としての名誉権は物権の場合と同様に排他性を有する権利であるためです。個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表された者も同様に人格権に基づき侵害行為の排除及び差止めを求めることができます。

不法行為による損害賠償請求権の消滅時効

724条は不法行為による損害賠償の請求権は被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき又は不法行為の時から20年間行使しないときは時効によって消滅すると定めています。724条の2は人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効については724条1号中の3年間を5年間とすると定めています。

724条1号において3年間の短期消滅時効が定められているのは時間の経過により責任の有無や損害額の立証や確定が困難となり被害者の感情も沈静化することによります。不法行為により生じた損害賠償に係る遅延利息にも724条が適用されます。

人の生命及び身体を害する不法行為による損害賠償請求権については生命及び身体という法益の重大性を考慮し債権一般の消滅時効のうち主観的起算点からの短期の消滅時効が5年とされていることと平仄を合わせるため724条の2による修正が加えられています。PTSDなどの精神的障害を生じさせる行為も身体を害するに当たります。

3年の消滅時効の起算点

損害を知った時とは被害者が損害の発生を現実に認識した時をいいます。損害賠償請求が事実上可能な程度に損害の発生を認識すれば足り損害の程度又は数額を知ることまでは要しません。

継続的不法行為の場合にはその行為により日々発生する損害につき被害者がその各損害を知った時から別個に消滅時効が進行します。夫婦の一方の配偶者が他方の配偶者と第三者との同棲により第三者に対して取得する慰謝料請求権については一方の配偶者がその同棲関係を知った時からそれまでの慰謝料請求権の消滅時効が進行するとされています。

加害者を知った時とは加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況のもとにその可能な程度にこれを知った時を意味します。加害者には監督義務者や使用者のように直接の加害者ではないが不法行為責任を負う者も含まれます。715条に基づいて使用者に損害賠償を請求する場合には加害者を知ったというためには被害者において使用者並びに使用者と不法行為者との間に使用関係がある事実に加えて一般人が当該不法行為が使用者の事業の執行につきなされたものであると判断するに足りる事実をも認識することを要します。

724条所定の3年の時効期間の計算についても138条により140条の適用があるから損害及び加害を知った時が午前零時でない限り時効期間の初日はこれを算入すべきものではないとされています。

後遺障害が生じた場合の消滅時効の起算点

不法行為により受傷した被害者が受傷時から相当期間経過後に現れた後遺症のため受傷時においては医学的に通常予想しえなかった治療を必要とするに至りその費用の支出を余儀なくされた場合にはその費用についての消滅時効はその治療を受けるまで進行しないとされています。

20年の消滅時効

不法行為の時の意味について判例は加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合には加害行為の時がその起算点となるが当該不法行為により発生する損害の性質上加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には当該損害の全部又は一部が発生した時が起算点となるとしています。

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