普通養子縁組の意義
普通養子縁組とは、当事者の合意に基づく届出により養親子関係を創設する制度です。普通養子縁組では養子と実親及び実方親族との関係に影響はなく、養子は実方と養方の二面の親族関係に立ちます。
縁組の実質的要件
縁組意思とは社会通念上親子と認められる関係を成立させるという意思をいいます。これは実質的意思説と呼ばれています。制限行為能力者も本人の意思のみで縁組をすることができます。縁組意思は縁組届出時にも必要です。
相続税の節税の動機と縁組をする意思とは併存しうるものであるから、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、他に縁組をする意思がないことをうかがわせる事情のない限り、縁組をする意思がないときに当たるとはいえないとされています。
縁組障害
792条は20歳に達した者は養子をすることができると定めています。
793条は尊属又は年長者を養子とすることができないと定めています。養親の双方とも養子より年長であることが必要です。
794条は後見人が被後見人を養子とするには家庭裁判所の許可を得なければならないと定めています。後見人の任務が終了した後まだその管理の計算が終わらない間も同様です。
795条は配偶者のある者が未成年者を養子とするには配偶者とともにしなければならないと定めています。ただし配偶者の嫡出である子を養子とする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合はこの限りではありません。
796条は配偶者のある者が縁組をするにはその配偶者の同意を得なければならないと定めています。ただし配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合はこの限りではありません。
798条は未成年者を養子とするには家庭裁判所の許可を得なければならないと定めています。ただし自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合はこの限りではありません。
代諾縁組
797条1項は養子となる者が15歳未満であるときはその法定代理人がこれに代わって縁組の承諾をすることができると定めています。
同条2項は法定代理人が承諾をするには養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときはその同意を得なければならないと定めています。養子となる者の父母で親権を停止されているものがあるときも同様です。
生まれて間もない子をいったん他人の生んだ子として届け出ておき後日戸籍上の親の代諾により養子にやる場合、養子が15歳に達した後に適法な追認をすれば縁組は初めから有効となるとされています。養子縁組の追認のような身分行為には116条ただし書は類推適用されません。
縁組の形式的要件
縁組は799条が準用する739条に基づき届出によって成立します。これは成立要件説が通説です。
他人の子を自己の嫡出子として虚偽の出生届をした場合には嫡出親子関係が生じないことは当然であり養親子関係も生じないとされています。すなわち出生届の縁組への転換は否定されています。
虚偽の認知届につき認知者が被認知者を自己の養子とすることを意図しておりさらにその後被認知者の法定代理人と婚姻した事実があっても認知届をもって養子縁組とみなすことはできないとされています。
当事者間において縁組の合意が成立しておりかつその当事者から他人に対し縁組の届出の委託がなされていたときは届出が受理された当時当事者が意識を失っていたとしてもその受理前に翻意したなどの特段の事情のない限り届出の受理により養子縁組は有効に成立します。
縁組の無効
802条は縁組が無効となる場合として2つの事由を定めています。第1に人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないときです。第2に当事者が縁組の届出をしないときです。ただしその届出が所定の方式を欠くだけであるときは縁組はそのためにその効力を妨げられません。
夫婦の一方が他方に無断で双方を共同当事者とする縁組届出をした場合、縁組の効力は原則として夫婦双方について無効です。もっとも795条の趣旨にもとることにならない特段の事情がある場合には縁組の意思のない配偶者についてのみ無効となり縁組意思のある配偶者と相手方との縁組は有効に成立するとされています。
縁組の取消し
803条は縁組は所定の規定によらなければ取り消すことができないと定めています。
804条は792条の規定に違反した縁組について養親又はその法定代理人がその取消しを家庭裁判所に請求することができると定めています。ただし養親が20歳に達した後6か月を経過し又は追認をしたときはこの限りではありません。
805条は793条の規定に違反した縁組について各当事者又はその親族がその取消しを家庭裁判所に請求することができると定めています。この取消しには期間の制限がなく民法総則の126条の適用もありません。
806条は794条の規定に違反した縁組について養子又はその実方の親族がその取消しを家庭裁判所に請求することができると定めています。ただし管理の計算が終わった後養子が追認をし又は6か月を経過したときはこの限りではありません。追認は養子が成年に達し又は行為能力を回復した後でなければその効力を生じません。
806条の2は796条の規定に違反した縁組について縁組の同意をしていない者がその取消しを家庭裁判所に請求することができると定めています。ただしその者が縁組を知った後6か月を経過し又は追認をしたときはこの限りではありません。詐欺又は強迫によって同意をした者も取消しを請求することができます。
806条の3は797条2項の規定に違反した縁組について縁組の同意をしていない者がその取消しを家庭裁判所に請求することができると定めています。ただしその者が追認をしたとき又は養子が15歳に達した後6か月を経過し若しくは追認をしたときはこの限りではありません。
807条は798条の規定に違反した縁組について養子、その実方の親族又は養子に代わって縁組の承諾をした者がその取消しを家庭裁判所に請求することができると定めています。ただし養子が成年に達した後6か月を経過し又は追認をしたときはこの限りではありません。
808条1項は詐欺又は強迫による婚姻の取消し及び婚姻の取消しの効力の規定を縁組について準用すると定めています。この場合において取消権の消滅期間は3か月ではなく6か月と読み替えられます。縁組の取消しに遡及効はありません。
夫婦共同縁組の取消しについて夫婦の一方についてのみ取消原因がある場合には一方についての縁組のみ取り消しうるとされています。
縁組の効力
809条は養子は縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得すると定めています。
養子は未成年のときは養親の親権に服します。養子は養親の氏を称しますが婚姻により氏を改めた者は婚姻継続中に養子となっても養親の氏に変わることはありません。750条は810条に優先するとされています。養親子は相互に相続権を有し扶養義務を負います。
養親の血族との間にも法定血族関係としての親族関係が発生します。縁組は養子と実親及び実方親族との関係に何ら影響しません。養子は養親と離縁しなくても再度他の者の養子となることができます。これを転養子といいます。
協議離縁
縁組の当事者はその協議で離縁をすることができます。離縁意思については実質的意思説がとられています。
養子が15歳未満であるときはその離縁は養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議でこれをします。この場合において養子の父母が離婚しているときはその協議でその一方を養子の離縁後にその親権者となるべき者と定めなければなりません。法定代理人となるべき者がないときは家庭裁判所は養子の親族その他の利害関係人の請求によって養子の離縁後にその未成年後見人となるべき者を選任します。
養親が夫婦である場合において未成年者と離縁をするには夫婦が共にしなければなりません。ただし夫婦の一方がその意思を表示することができないときはこの限りではありません。
縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは家庭裁判所の許可を得てこれをすることができます。死後離縁は当事者の死亡により縁組が終了することを前提として死亡者の血族との親族関係を終了させることを意味するにすぎません。協議離縁は養子が未成年の場合でも家庭裁判所の許可を要しません。
協議離縁の無効については離縁意思が存在しない場合には離縁が無効となります。詐欺又は強迫による離縁は取り消すことができ取消しには遡及効があります。
裁判離縁
814条1項は縁組の当事者の一方が離縁の訴えを提起できる場合として3つの事由を定めています。第1に他の一方から悪意で遺棄されたときです。第2に他の一方の生死が3年以上明らかでないときです。第3にその他縁組を継続し難い重大な事由があるときです。
814条2項は裁判所による裁量棄却の規定を1号及び2号について準用しており裁判所は離縁の請求を棄却することができます。
養親子関係の破綻の原因が全面的に又は主としてその解消を望む当事者側にある場合にはこの者からの離縁請求は許されないとされています。
離縁の効果
離縁により養親子間の法定嫡出関係は消滅します。養子と養親の血族との間の法定血族関係や縁組の後に発展した親族関係も消滅します。
816条1項は養子は離縁によって縁組前の氏に復すると定めています。ただし配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合はこの限りではありません。
816条2項は縁組の日から7年を経過した後に縁組前の氏に復した者は離縁の日から3か月以内に届け出ることによって離縁の際に称していた氏を称することができると定めています。
817条は離婚による復氏の際の権利の承継の規定を離縁について準用しており祭祀財産の承継者を定めるものとされています。
縁組は民法の規定上は離縁によってのみ解消します。
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