遺産分割の意義

遺産分割とは共同相続の場合に相続人の共有になっている遺産を相続分に応じて分割して各相続人の財産にすることをいいます。共同相続財産の最終的帰属を決定するための手続です。

遺産分割の実行

遺産分割は第1に遺言による分割指定の方法があればそれに従います。遺言による指定がなければ第2に共同相続人の協議によります。協議が調わないか協議することができないときは第3に相続人の申立てによって家庭裁判所による分割が行われます。家庭裁判所は分割の審判に先立って調停による分割を試みます。

遺産分割の当事者

遺産分割の当事者には相続人全員のほか包括受遺者、相続分の譲受人、遺言執行者が含まれます。他方で後順位の相続人、相続放棄者、欠格者、被廃除者、個々の財産上の持分の譲受人などは含まれません。

相続人の一部を除外し又は相続人でない者を加えてなされた遺産分割は無効です。もっとも相続開始後に認知により新たに相続人となった者が出現した場合には被認知者の利益の保護と遺産分割の安定性の要請との調和を図る観点から遺産分割自体を有効としつつ被認知者に価額による支払請求権が認められています。

胎児については停止条件説に立てば胎児は出生するまで遺産分割の当事者となることができず法定代理人を通じて遺産分割の当事者となることもできません。解除条件説に立てば胎児の法定代理人を通じて遺産分割の当事者となることができます。

遺産分割の時期と禁止

遺産分割は原則としていつでも可能です。遺産分割請求権は消滅時効にかかりませんが相続回復請求に該当する場合には期間制限があります。

被相続人は遺言で遺産の全部又は一部の分割を禁止できますが分割禁止期間は5年を超えることはできません。遺言による分割禁止がある場合であっても相続人全員の合意によって分割を行うことは可能と解されています。

共同相続人は5年以内の期間を定めて遺産の全部又は一部についてその分割をしない旨の契約をすることができます。ただしその期間の終期は相続開始の時から10年を超えることができません。この契約は5年以内の期間を定めて更新することができますがその期間の終期も相続開始の時から10年を超えることができません。

家庭裁判所は特別の事由があるときに限って5年以内の期間を定めて遺産の全部又は一部についてその分割を禁ずることができます。この期間の終期も相続開始の時から10年を超えることができません。

遺産分割の基準

906条は遺産の分割は遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをすると定めています。共同相続人間に遺産分割が算術的に公平に行われるだけでなく具体的に公平に行われかつ遺産の社会的・経済的価値ができるだけ損なわれないように行われることを企図するものです。

遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合

906条の2第1項は遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても共同相続人はその全員の同意により当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができると定めています。同条2項は共同相続人の1人又は数人により当該財産が処分されたときは当該共同相続人についてはこの同意を得ることを要しないと定めています。

この同意の意思表示がなされた段階で実体法上の効果が生じるため一部の者の意思のみによってその効果を覆滅させることは相当でないことからこの同意の意思表示は撤回できないとされています。

協議分割

共同相続人は遺言による相続分の指定があっても分割禁止遺言又は分割禁止契約がある場合を除きいつでも協議によって指定された相続分と異なる相続分の割合による遺産分割をすることができます。被相続人の意思よりも共同相続人の自由な意思が尊重されるためです。

共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に相続人の1人がその協議で負担した債務を履行しないときであってもその債権を有する相続人は541条によって当該協議を解除できないとされています。遺産分割の安定のためです。

もっとも共同相続人の全員がすでに成立した遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除したうえ改めて遺産分割協議をすることは法律上当然に妨げられるものではないとされています。

審判分割

審判分割は共同相続人間に協議が調わないとき又は協議をすることができないときに家庭裁判所が遺産分割の基準に関する906条を指針に具体的相続分を基準として審判で遺産を分割する方法です。一部分割により他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合にはその一部分割は認められません。

遺産相続により相続人の共有となった財産の分割については家庭裁判所が審判によってこれを定めるべきものであり通常裁判所が判決手続で判定すべきものではないとされています。

指定分割と特定財産承継遺言

被相続人は遺言で分割方法を指定し又は相続人以外の第三者に分割方法の指定を委託することができます。遺産分割の方法のうちこの遺産分割方法の指定が最も優先されます。

特定の遺産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言は特段の事情のない限り遺産分割方法の指定の一場合であり何らの行為を要せずに被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるとされています。

この特定の財産の価額が当該相続人の法定相続分を超える場合には特段の事情がない限り相続分の指定を伴う遺産分割方法の指定を定めたものと扱われます。このような場合には特段の事情がない限り債務もその割合で承継させる趣旨に意思解釈するのが合理的であるとされています。なお特定の財産の価額が法定相続分を下回る場合には特定の相続人の相続分が法定相続分を下回るものとするとの相続分の指定がされたと解すべきではありません。

相続人の1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされた場合には特段の事情のない限り相続人間においては当該相続人が相続債務も全て承継したと解され遺留分の侵害額の算定に当たり遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されないとされています。

相続させる旨の遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には遺言者が当該推定相続人の代襲者等に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情がない限り当該遺言は効力を生じないとされています。

相続させる旨の遺言により法定相続分を超える権利を承継する場合には当該超過部分については対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができません。

分割方法の指定があっても遺言執行者が存在しない限り共同相続人全員の合意によって指定と異なる分割をすることも可能であり無効とはいえません。

共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は遺産全体に対する割合的な持分を全て失うことになり遺産分割審判の手続等において遺産に属する財産につきその分割を求めることはできないとされています。

遺産分割の効力

909条は遺産の分割は相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずると定めています。ただし第三者の権利を害することはできません。

遺産分割の効力につき遺産を被相続人から相続人が直接承継したものと扱う宣言主義が採用されています。ただし書は分割の遡及効により害される第三者を保護するものであり第三者とは相続開始後分割前に生じた第三者をいいます。具体的には相続人から個々の遺産の持分を譲渡又は担保に供された第三者及び持分に対して差押えをなした債権者に限られ相続分の譲受人は含まれません。

第三者の保護要件として善意・悪意は問いませんが登記を具備していることが必要です。学説はここでの登記は対抗要件としての登記ではなく権利保護資格要件としての登記と解しています。

遺産分割により自己の法定相続分を超える財産を承継した相続人は当該超過部分について対抗要件を具備しなければ分割後の第三者に対抗することができません。

遺産の分割前における預貯金債権の行使

909条の2は各共同相続人は遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に法定相続分を乗じた額については単独でその権利を行使することができると定めています。ただし法務省令で定める額が限度とされています。この権利の行使をした預貯金債権については当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなされます。

預貯金債権は遺産分割の対象に含まれるため遺産分割するまでの間は各共同相続人に準共有されます。しかし相続債務の弁済や葬儀費用、被相続人から扶養を受けていた相続人の当面の生活費の捻出などのために緊急の預貯金の払戻しが必要となるような場合に対応できるよう小口の資金需要に対応する規定です。

相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権

910条は相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは価額のみによる支払の請求権を有すると定めています。いったんなされた遺産分割の効力をみだりに覆すべきでないことからこの規定が設けられています。

遺産の価額算定の基準時は価額の支払を請求した時とされています。この時点までの遺産の価額の変動を他の共同相続人が支払うべき金額に反映させるとともにその時点で直ちに当該金額を算定しうるものとするのが当事者間の衡平の観点から相当であるためです。この価額は分割等の対象とされた遺産のうち積極財産のみの価額を基礎として算定されます。消極財産である相続債務は認知された者を含む各共同相続人に当然に承継され遺産の分割の対象とならないためです。

共同相続人間の担保責任

911条は各共同相続人は他の共同相続人に対して売主と同じくその相続分に応じて担保の責任を負うと定めています。遺産分割を相続人相互が自己の持分を譲渡し合うものと考え相続人が遺産分割の結果得た物又は権利に瑕疵がある場合に他の共同相続人に売主と同じ担保責任を負担させるものです。

912条は各共同相続人はその相続分に応じ他の共同相続人が遺産の分割によって受けた債権についてその分割の時における債務者の資力を担保すると定めています。弁済期に至らない債権及び停止条件付きの債権については弁済をすべき時における債務者の資力を担保します。

913条は担保の責任を負う共同相続人中に償還をする資力のない者があるときはその償還することができない部分は求償者及び他の資力のある者がそれぞれその相続分に応じて分担すると定めています。ただし求償者に過失があるときは他の共同相続人に対して分担を請求することができません。

914条は上記の担保責任に関する規定は被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは適用しないと定めています。

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