契約の成立
522条1項は契約は契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示すなわち申込みに対して相手方が承諾をしたときに成立すると定めています。同条2項は契約の成立には法令に特別の定めがある場合を除き書面の作成その他の方式を具備することを要しないと定めています。一定の方式を備えていることが契約の成立要件とされている要式契約としては保証契約や諾成的消費貸借などがあります。
申込みと承諾
申込みとは特定の内容を有する契約を締結しようという意思をもって他人に対してなされる意思表示です。申込みといえるためには内容が確定していること及び相手方の承諾に対し表意者が拘束されることが必要です。相手方の承諾に対しなお表意者が契約するかどうかの自由を留保している場合は申込みとはいえずいわゆる申込みの誘引にすぎません。
承諾とは申込みに対してこれを応諾し申込みの通りの契約を締結しようという意思表示です。承諾は通常は明示によってなされますが黙示による承諾も認められています。承諾は契約を成立させる意思をもって申込受領者から申込者に対してなされなければなりません。また承諾の内容は申込みの内容と合致しなければなりません。申込みに対し承諾をする義務や諾否の返事をする義務はありません。
承諾の期間の定めのある申込み
523条1項は承諾の期間を定めてした申込みは撤回することができないと定めています。ただし申込者が撤回をする権利を留保したときはこの限りではありません。同条2項は申込者がこの申込みに対して期間内に承諾の通知を受けなかったときはその申込みはその効力を失うと定めています。
申込みが相手方に到達すると申込者は原則として撤回することができません。申込者に対して生じるこのような効力を申込みの拘束力といいます。承諾期間を定めて申込みをした場合において申込者がその期間内に撤回したとしても撤回権を留保していない限りその撤回は無効であり相手方が承諾の意思表示をすれば契約が成立します。承諾期間の定めのある申込みの承諾適格はその期間内存続し期間が経過すれば自動的に消滅します。
遅延した承諾の効力
524条は申込者は遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができると定めています。承諾は申込みと同様の内容をもつ契約締結への意思表示であるため遅延した承諾であってもこれを申込者の側で新たなる申込みと解しても不都合は特に生じません。
承諾の期間の定めのない申込み
525条1項は承諾の期間を定めないでした申込みは申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは撤回することができないと定めています。ただし申込者が撤回をする権利を留保したときはこの限りではありません。相当な期間とは申込みの到達に必要な時間と相手方が諾否を決するために必要な調査及び検討をする時間と承諾の通知が申込者に到達するのに必要な時間などを合わせたものです。相当な期間の経過後は申込みを撤回することができます。
同条2項は対話者に対してした承諾期間の定めのない申込みは対話が継続している間はいつでも撤回することができると定めています。同条3項は対話者に対してした承諾期間の定めのない申込みに対して対話が継続している間に申込者が承諾の通知を受けなかったときはその申込みはその効力を失うと定めています。ただし申込者が対話の終了後もその申込みが効力を失わない旨を表示したときはこの限りではありません。この場合には撤回権を留保した場合を除き承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまではその申込みを撤回することができません。
承諾期間の定めのない申込みの承諾適格は相当な期間の経過後であっても取引慣行と信義則に従い申込みを撤回しうる時からさらに相当期間が経過するまで存続します。
申込者の死亡等
526条は申込者が申込みの通知を発した後に死亡し意思能力を有しない常況にある者となり又は行為能力の制限を受けた場合において申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときはその申込みはその効力を有しないと定めています。97条3項の原則によれば意思表示後に表意者が死亡しあるいは意思能力や行為能力を失っても意思表示の効力に影響はありませんが526条はその例外を設けたものです。申込者に死亡等の事実が生じたのが申込みの通知の到達の前であるか後であるかにかかわらず本条が適用されます。
申込みの通知の到達前に申込みの相手方が意思能力を喪失し又は行為能力の制限を受けていた場合には受領能力の問題となります。申込みの通知の到達前に申込みの相手方が死亡した場合には死者に対して申し込んだことになり効力を生じません。
承諾の通知を必要としない場合
527条は申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には契約は承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立すると定めています。申込者が特に承諾を必要としないとした場合あるいは商慣習上承諾が必要とされない場合において意思実現行為があった場合には承諾者による事実行為を承諾の意思表示と同一視してこのような意思実現行為があった時に契約が成立します。意思実現行為と黙示の承諾との違いは申込受領者の行為が申込者に向けてなされたものか否かの点にあります。
交叉申込み
交叉申込みとは当事者双方が相手方の申込みを知らずに同一内容の申込みを行った場合をいいます。交叉申込みは意思実現による場合に加えて申込みと承諾の意思表示の合致以外の方法により契約が成立する場合の1つです。申込みと承諾の合致はなくとも契約を成立させようとする当事者の意思表示の内容は合致しているため契約の成立が肯定されます。遅い方の意思表示の到達時に契約が成立します。
申込みに変更を加えた承諾
528条は承諾者が申込みに条件を付しその他変更を加えてこれを承諾したときはその申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなすと定めています。承諾の内容は申込みの内容と一致することを要するため変更を加えた応諾は承諾ではありませんが取引円滑の見地から申込みに変更を加えた承諾は申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなされます。
懸賞広告
529条はある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告した者すなわち懸賞広告者はその行為をした者がその広告を知っていたかどうかにかかわらずその者に対してその報酬を与える義務を負うと定めています。
529条の2第1項は懸賞広告者はその指定した行為をする期間を定めてした広告を撤回することができないと定めています。ただしその広告において撤回をする権利を留保したときはこの限りではありません。同条2項はその期間内に指定した行為を完了する者がないときはその効力を失うと定めています。529条の3は懸賞広告者はその指定した行為を完了する者がない間はその指定した行為をする期間を定めないでした広告を撤回することができると定めています。ただしその広告中に撤回をしない旨を表示したときはこの限りではありません。
530条1項は前の広告と同一の方法による広告の撤回はこれを知らない者に対してもその効力を有すると定めています。同条2項は広告の撤回は前の広告と異なる方法によってもすることができるがその撤回はこれを知った者に対してのみその効力を有すると定めています。
531条1項は広告に定めた行為をした者が数人あるときは最初にその行為をした者のみが報酬を受ける権利を有すると定めています。同条2項は数人が同時にその行為をした場合には各自が等しい割合で報酬を受ける権利を有しますが報酬がその性質上分割に適しないとき又は広告において1人のみがこれを受けるものとしたときは抽選でこれを受ける者を定めると定めています。同条3項はこれらの規定は広告中にこれと異なる意思を表示したときは適用されません。
優等懸賞広告
532条1項は広告に定めた行為をした者が数人ある場合においてその優等者のみに報酬を与えるべきときはその広告は応募の期間を定めたときに限りその効力を有すると定めています。同条2項は応募者中いずれの者の行為が優等であるかは広告に定めた者が判定し広告中に判定をする者を定めなかったときは懸賞広告者が判定すると定めています。同条3項は応募者は判定に対して異議を述べることができないと定めています。
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