立法による具体化

生存権を具体化する立法として、生活保護法、社会保障制度として国民健康保険法、社会福祉の分野では児童福祉法、その他公害規制に関する諸立法が制定されています。なお、災害対策基本法は生存権を具体化した立法ではありません。

裁判による実現

生存権を裁判によって実現する具体的な救済方法としては4つの類型があります。

第一は、生存権の自由権的側面の法的効果を求める場合です。たとえば生活困窮者に対して通常の国民よりも高額の税金を課した場合がその例であり、総評サラリーマン税金訴訟がこれに当たります。

第二は、25条を具体化する法律の存在を前提に行政処分の合憲性を争う場合です。たとえば生活保護法の存在を前提として同法に基づく厚生大臣の保護基準設定行為の違法性を争う場合であり、朝日訴訟がこれに当たります。

第三は、25条を具体化する法律の規定の合憲性を争う場合です。たとえば生活保護の受給権を法律によって制限している場合や生存権を具体化する法律が生存権の要請をみたしていない場合であり、堀木訴訟がこれに当たります。

第四は、立法不作為の合憲性を争う場合です。立法義務付け訴訟、立法不作為の違憲確認訴訟、国家賠償請求訴訟といった訴訟形態があります。

生存権の違憲審査基準

堀木訴訟最高裁判決は「明白性の原則」を採用しています。学説にも最高裁の立場に賛同するものも少なくありません。もっとも、人間としての最低限度の生活保障の場合とより快適な生活保障の場合を分け、前者の場合には最低限度の生活水準は具体的・客観的に決められるとして「厳格な合理性の基準」を、後者の場合には立法府の政策判断を尊重し「明白性の原則」を適用すべきであるとする見解も有力に主張されています。

1項・2項分離論

堀木訴訟控訴審判決は、救貧施策を意味する生活保護の場合には25条1項の問題として処理し、それ以外のいわゆる防貧施策を意味する社会保障施策の場合には25条2項の問題として処理し、2項の場合には1項の場合に比べてはるかに広い立法裁量に委ねられるとしました。

これに対しては、社会保障立法が現実に救貧施策として用いられている場合であっても立法者が立法趣旨を防貧施策と捉えていた場合には訴訟の段階においては立法裁量が広汎に認められてしまうとして、1項・2項分離論を否定し両者を一体的に捉える立場が通説です。

制度後退禁止原則の意義

制度後退禁止原則とは、25条の生存権を具体化する趣旨の法律が制定された場合、その法律は25条と一体をなし、その法律の定める給付基準を正当な理由なくして後退させる措置は原則として憲法上許されないとするものです。

その根拠として、25条2項は社会保障等の施策について「向上及び増進に努めなければならない」と定めていること、及び生存権の法的性格について抽象的権利説を採る場合、生存権が法律や厚生労働大臣が定めた保護基準によって具体化されればその法律・保護基準は25条と一体化して憲法上の具体的権利となり、その不利益変更すなわち制度の後退は憲法上の具体的権利の侵害にほかならないから自由権の制限の場合と同様に厳格な審査がなされなければならないことが挙げられます。

制度後退禁止原則肯定説

学説上では生存権の制限に対する司法審査の方法についていわゆる制度後退禁止原則を適用しようとする見解があります。この見解によれば、立法政策によって25条の要求する最低限度から上積みされていた給付水準であってもそれは法律や厚生労働大臣が定めた保護基準にほかならないから25条と一体をなして憲法上の具体的権利となり、これを引き下げる場合には自由権の制限の場合と同様に厳格な審査がなされることになります。また、既存の給付水準が併給禁止規定の新設によって引き下げられた場合もそれは本来受給することができるものすなわち25条と一体をなす憲法上の具体的権利を国の作為によって妨害されたものと考えられるため、自由権の制限の場合と同様に厳格な審査がなされることになります。

判例の立場と制度後退禁止原則否定説

判例すなわち老齢加算廃止判決は、生活保護基準の改定による老齢加算の廃止について、保護基準によって具体化されていた被保護者の期待的利益の喪失を裁量権の逸脱・濫用を総合判断する際の一要素として考慮するにとどめており、制度後退禁止原則の見解には立脚していないと解されています。

また、制度後退禁止原則肯定説に対しては次のような批判がなされています。第一に、25条1項が禁止しているのは「健康で文化的な最低限度の生活」の水準を下回ることだけであるから、給付水準の引下げによっても「健康で文化的な最低限度の生活」水準を上回る場合すなわち立法政策によって上積みされていた部分を引き下げる場合にまで厳格な審査が必要となる根拠を25条1項から導くことはできないという批判です。第二に、制度後退禁止原則によれば過去の国会の判断が現在及び将来の国会を拘束することになるが、25条を具体化する趣旨の法律についてのみかかる拘束が憲法上要請されていると解することは困難であるという批判です。

制度後退禁止原則否定説によれば、既存の給付水準が併給禁止規定の新設によって引き下げられた場合、給付規定と併給禁止規定が一体となって新たな給付水準となるからその新たな給付水準が25条1項の要求する最低限度を下回るか否かを審査すれば足りることとなります。

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