損害の意義
損害とは不法行為がなかったと仮定した場合と不法行為がなされた後の利益状態の差を金額で表示したものをいいます。これを差額説といいます。
損害の種類
損害は財産的損害と非財産的損害に大別されます。財産的損害は財産の積極的な減少という積極的損害すなわち現実損害と増加するはずであった財産が増加しなかったという消極的損害すなわち逸失利益に分類されます。非財産的損害は精神的損害が中心です。
不法就労外国人の逸失利益の算定については予測される我が国での就労可能期間ないし滞在可能期間内は我が国での収入等を基礎としその後は想定される出国先での収入等を基礎として逸失利益を算定するのが合理的とされています。
企業損害については形式上有限会社となっているが実質上被害者個人の営業であって被害者を離れて会社の存続が考えられないという事情がある場合には当該不法行為と会社の利益の逸失との間に相当因果関係があり会社は加害者に損害賠償を請求できるとされています。
因果関係
不法行為が成立するためには加害行為によって損害が発生したことすなわち加害行為と損害との間に因果関係が存在することが必要です。因果関係は損害賠償の範囲と密接に関連します。交通事故の被害者が事故後災害神経症やうつ病となり4年後に自殺に至ったケースで当該事故と被害者の自殺との間には相当因果関係があるとされています。
因果関係の証明
因果関係の証明責任は被害者側にあります。訴訟上の因果関係の立証は一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく経験則に照らして全証拠を総合検討し特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することでありその判定は通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要としかつそれで足りるとされています。
疾病のため死亡した患者の診療に当たった医師の医療行為がその過失により当時の医療水準にかなったものでなかった場合において当該医療行為と患者の死亡との間の因果関係の存在は証明されないけれども医療水準にかなった医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるときは医師は患者に対し不法行為による損害を賠償する責任を負うとされています。
損害賠償義務
損害賠償は原則として金銭賠償であり例外的に原状回復があります。請求権は損害の発生時に発生します。
交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合において被害者が被った不利益を補填して不法行為がなかったときの状態に回復させるという不法行為に基づく損害賠償制度の目的及び損害の公平な分担を図るという理念に照らして相当と認められるときは逸失利益は定期金による賠償の対象となるとされています。
損害賠償の範囲
加害者が賠償すべき損害の範囲は416条の類推適用により加害行為と相当因果関係に立つ損害です。これを相当因果関係説といいます。
損害額の算定時期
損害額の算定は原則として不法行為時を基準としますが目的物の滅失や損傷後に価格の騰貴等の特別の事情があり加害者に不法行為時にその事情の予見可能性があれば騰貴価格の賠償請求が可能です。
財産的損害の算定
所有物が滅失した場合には原則として滅失時の交換価値が損害額となります。
生命侵害の場合には主として生存したならば得られたであろう収入の喪失すなわち逸失利益が損害となります。交通事故による労働能力の一部喪失に基づく逸失利益の算定においてはその後被害者死亡の事実が生じても事故当時その死亡が客観的に予測されていたのでない限り死亡の事実は考慮すべきではないとされています。交通事故の被害者が事故のため介護を要する状態となった後に別の原因により死亡した場合には死亡後の期間にかかる介護費用を当該交通事故による損害として請求することはできません。就労前の女児の逸失利益の算定について女性労働者の平均給与額を基準として算定した場合には男女差があるからといってこれに家事労働分を加算することはできないとされています。
介護費用についてはその後被害者が死亡した場合には死亡後の介護費用については損害から控除すべきとされています。
免責約款
運送契約等で契約上一定限度額以上損害賠償責任を負わない旨の免責約款がある場合にはかかる約款は不法行為責任についても効力を有します。荷受人も少なくとも宅配便によって荷物が運送されることを容認していたなどの事情が存するときは信義則上責任限度額を超えて運送人に対して損害賠償を請求することは許されないとされています。
損害賠償請求権の性質
財産的損害の賠償請求権は譲渡可能です。慰謝料請求権は行使上の一身専属性があるとしても慰謝料の具体的金額が債務名義や示談によって確定した場合には慰謝料請求権を譲渡できます。
生命侵害による財産的損害すなわち逸失利益の賠償請求権について判例は生命侵害の場合も被害者自身に賠償請求権が帰属し相続人がそれを相続するとする相続肯定説をとっています。即死の場合でも受傷と死亡との間には観念的に時間の間隔が存在すること及び遺族固有の損害賠償請求権は被害者の逸失利益より少額となり不均衡であることがその理由です。被害者の相続人が相続放棄をした場合であっても相続人である配偶者や子等は扶養利益の侵害による損害賠償請求権を行使できるとされています。扶養請求権は配偶者や子等の固有の利益であるためです。
これに対し固有損害説は生命侵害の場合には被害者が賠償請求権を取得することはありえず遺族はその固有の損害について賠償請求しうるのみであるとします。損害が発生する時点で被害者は既に死亡しており権利能力者ではなくなっていること及び相続を肯定すれば笑う相続人や逆相続の弊害が生じることがその理由です。
生命侵害による慰謝料請求権についても判例は生命侵害を理由とする慰謝料請求権も被害者自身に帰属し相続人がそれを相続するとする相続肯定説をとっています。
アプリの紹介
過去問を一文一問形式で解けるアプリを開発しました。
