行為能力制度の趣旨

行為能力とは自らの行為により法律行為の効果を確定的に自己に帰属させる能力をいいます。意思能力を欠く者の法律行為は無効ですが意思能力がなかったことの立証は困難であるため意思無能力であったことの立証の困難を救済し意思無能力者の保護を図る必要があります。また意思無能力の立証がされると相手方の取引安全を害するため意思能力のない者を定型化することにより注意を喚起し相手方の取引の安全を図る必要があります。

そこで民法は一般的かつ恒常的に能力不十分とみられる者を一定の形式的基準で画一的に定め行為当時に具体的に意思能力があったか否かを問わず一律に法律行為を取り消すことができるという行為能力制度を設けています。

制限行為能力者の種類と保護者の権限

制限行為能力者には未成年者、成年被後見人、被保佐人及び被補助人の四類型があります。

未成年者の保護者は親権者又は未成年後見人であり代理権、同意権、追認権及び取消権を有します。

成年被後見人の保護者は成年後見人であり代理権、追認権及び取消権を有しますが同意権は有しません。

被保佐人の保護者は保佐人であり追認権及び取消権を有します。保佐人は13条1項及び2項に定められた行為について同意権を有しますが代理権は原則として有しません。ただし特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判がなされた場合には代理権を有します。

被補助人の保護者は補助人であり追認権及び取消権を有します。補助人は原則として同意権も代理権も有しませんが特定の法律行為について補助人の同意を要する旨の審判がなされた場合に同意権を有し特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判がなされた場合に代理権を有します。

任意後見制度

民法の定める法定後見制度と異なり本人の自己決定権の尊重という観点から自分の判断能力が低下する状況に備えて判断能力がしっかりしている段階であらかじめ自分で後見人を選任するという任意後見制度が設けられています。

本人の利益保護のため家庭裁判所は任意後見監督人を選任します。家庭裁判所が任意後見監督人を選任する場合において本人が成年被後見人、被保佐人又は被補助人であるときは家庭裁判所は当該本人に係る後見開始、保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければなりません。

任意後見契約を結んでも本人は当然には行為能力を失いませんが家庭裁判所は本人の利益のため特に必要があると認めるときは後見開始の審判をすることができます。任意後見契約に関する法律には任意後見人の同意を得ずにした法律行為を取り消すことができる旨の規定は存在しないため本人が任意後見人の同意を得ずにした法律行為について制限行為能力を理由に取り消すことはできません。

任意後見契約は法務省令で定める様式の公正証書によってしなければなりません。

未成年者の意義

4条は年齢18歳をもって成年とすると定めています。18歳に満たない未成年者を知能発達の程度いかんにかかわらず一律に制限行為能力者とし法律行為の効力の決定を能率的にしたものです。

未成年者の法律行為

5条1項は未成年者が法律行為をするにはその法定代理人の同意を得なければならないと定め2項は同意を得ないでした法律行為は取り消すことができるとしています。

未成年者の法定代理人となるのは原則として親権者です。もっとも親権者がいないとき又は親権者が管理権を有しないときは未成年後見人が法定代理人となります。未成年者が後見開始の審判を受けた場合には親権者がいても後見人が付されます。法定代理人は代理権、同意権、追認権及び取消権を有します。

父母共同親権の場合には未成年者は父母双方の同意がなければ有効な法律行為をすることができません。もっとも父母共同代理名義でなした契約において実際には一方の同意を得ていなかった場合でも相手方が悪意でない限りは有効です。

同意を要する行為

法定代理人の同意を要する行為としては貸金債権の弁済の受領、雇用契約の締結、法定代理人から送金される学費や生活費の残りを頭金に充てて自動車の割賦購入契約を締結すること、相続の承認や限定承認又は相続放棄、負担付贈与を受けること及び解除の意思表示を受けることがあります。

未成年者が同意を得ずになした法律行為を行為能力の制限を理由に取り消す場合には法定代理人の同意は不要です。法定代理人の取消権が時効により消滅すれば未成年者の取消権も消滅します。いずれかが取り消したとき又は追認したときも他方の取消権は消滅します。

同意を要しない行為

5条1項ただし書により単に権利を得又は義務を免れる法律行為については法定代理人の同意を要しません。単純贈与を受けることや口頭でした贈与をする旨の契約を書面によらないものであることを理由に解除することがその例です。

身分行為については意思能力は必要ですが同意を要しないものがあります。子の認知、認知の訴え、家庭裁判所の許可を得ての氏の変更及び15歳に達した者が遺言により財産を処分することがその例です。他方限定承認のように同意を要する身分行為もあります。

法定代理人の同意を要しない行為についても意思能力は必要です。また未成年者が取り消すことができることを知って法律行為をしたとしてもこれを取り消すことができます。

処分を許された財産

5条3項前段は法定代理人が目的を定めて処分を許した財産はその目的の範囲内において未成年者が自由に処分することができると定めています。旅行費や勉学費がその例です。

同項後段は目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも同様とします。お小遣いがその例です。

もっとも全財産の処分許可は制限行為能力者制度の趣旨に反することを理由に否定するのが通説です。なお処分を許された財産の処分によって得た財産は当初の許可に制限がなければ自由に処分できます。

未成年者の営業の許可

6条1項は一種又は数種の営業を許された未成年者はその営業に関しては成年者と同一の行為能力を有すると定めています。営業とは営利を目的とした継続的事業を指し商業に限りません。

営業の許可は一個又は数個の営業単位で特定の営業についてなされなければならず一個の営業の一部やすべての営業を許可することはできません。営業の許可によりその営業に直接又は間接に必要な一切の行為のほかその準備行為や補助行為もできます。

成年者と同一の行為能力とは法定代理人の同意を要しないだけでなくその範囲での法定代理権の消滅を意味します。

6条2項は未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは法定代理人は親族編の規定に従いその許可を取り消し又はこれを制限することができると定めています。本条項の取消しは撤回の意味であり将来に向かってのみ効力を有します。したがって法定代理人が許可を取り消した場合でもその営業に関して既にしていた商品仕入の申込みは行為能力の制限を理由に取り消すことはできません。

本条項の取消しは善意の第三者にも対抗できると解されています。ただし未成年者も商業を営むには登記が必要であるため許可の取消しには登記の抹消を要しそれがないと善意の第三者は保護されます。

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