窃取の意義
窃取とは占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し目的物を自己又は第三者の占有に移すことをいいます。方法や手段に制限はなく欺罔行為を手段とする場合でも被害者の意思に反して財物の占有を取得すれば窃盗罪が成立しえます。
窃盗罪の着手時期
判例は一般に窃盗の現場において財物の物色行為を始めた時点で実行の着手を認めていますが必ずしも財物の物色行為に至らなければ実行の着手が認められないというわけではありません。
窃盗の目的で住居に侵入した後金品を物色するためにたんすに近づいた時点で実行の着手が認められるとされています。倉庫や土蔵については通常の住居と異なり人が住んでおらずその内部には窃取すべき財物しかないため窃盗の目的で侵入行為に取り掛かった時点で実行の着手が認められるとされています。
スリがポケットの外側に手を触れたときはその時点で着手が認められるとされています。また不正に入手したスペアキーを使い駐車場に駐車してある自動車の運転席のドアを開けた場合にも運転席に乗り込む前でも窃盗罪の実行の着手が認められるとされています。
不正に取得した他人名義のキャッシュカードを使用して預金口座から現金を引き出そうと考えカードを自動預払機に挿入し暗証番号を入力した場合にはカードの正しい暗証番号を知っていたがその入力を誤ったため払戻しを受けることができなかったときでも窃盗罪の実行の着手が認められるとされています。
さらに判例はキャッシュカードを窃取する犯行計画に基づき被害者に電話をかけてうそを述べ被害者宅付近路上まで赴いた時点において窃盗罪の実行の着手を認めています。犯行計画の内容として被害者にキャッシュカードを封筒に入れさせた上で被害者が目を離した隙に同封筒を別の封筒とすり替えてキャッシュカードを窃取するというものであった事案において判例はうそが述べられ犯人が被害者宅付近路上まで赴いた時点ではキャッシュカードの占有を侵害するに至る危険性が明らかに認められるとしています。
窃盗罪の既遂時期
既遂時期については争いがありますが判例は被害者が占有を喪失し行為者ないし第三者が占有を取得した時点としています。これを取得説といいます。
窃盗罪の罪数
罪数は占有侵害の個数を基準として決定されます。キャッシュカードを窃取しこれを用いて現金自動預払機から現金を引き出す行為は現金自動預払機の管理者に対する関係において新たな法益侵害を伴うものであるからカードの窃盗罪のほかにカード利用による現金の窃盗罪が別個に成立します。
不動産侵奪罪
235条の2は他人の不動産を侵奪した者は10年以下の拘禁刑に処すると定めています。
不動産侵奪罪の客体
他人は自然人であると法人であるとを問いません。自己の不動産であっても他人が占有しまたは公務所の命令により他人が看守するものであるときは242条により他人の不動産とみなされます。
不動産とは土地及びその定着物をいいます。土地は地面だけでなく地上の空間及び地下をも含みます。土地の定着物としては建物に限定されます。民法上は立木も不動産に含まれますがその占有侵害は事実上土地から分離せざるを得ずその場合は窃盗罪の客体となります。
他人の不動産は他人が占有するものでなければなりません。本罪の占有は窃盗罪と同じく事実的支配のみをいい法律的支配は含まれません。もっとも不動産の所在は動かないこと及び登記が公示されていれば距離的に実効支配が及ばない場合であっても社会通念上事実的支配が認められることから登記すなわち法律的支配がある場合には不動産の事実的支配も認められます。判例はその代表者が行方をくらまして事実上廃業状態となり土地を現実に支配管理することが困難な状態になった場合であっても当該会社は土地に対する占有を喪失していたとはいえないとしています。
侵奪の意義
侵奪とは不法領得の意思をもって不動産に対する他人の占有を排除しこれを自己又は第三者の占有に移すことをいいます。公然か非公然かを問わずまた方法にも限定はありませんが窃盗罪との対比上事実行為として他人の占有を排除することが必要となります。侵奪にあたるかどうかは不動産の種類、占有侵害の方法及び態様、占有期間の長短、原状回復の難易、占有排除及び占有設定の意思の強弱並びに相手方に与えた損害の有無などを総合的に判断し社会通念に従って決します。
侵奪の態様には占有非先行型と占有先行型があります。占有非先行型すなわち行為者が侵奪前には当該不動産を占有していなかった場合は自己の新たな占有状態を作出又は設定したときに侵奪が認められます。占有先行型すなわち行為者が侵奪の前から当該不動産を占有していた場合は他人の不動産を無断で利用又は使用しているだけでは侵奪になりませんが占有の態様が質的に変化したときには侵奪が認められます。
侵奪を否定した裁判例としては不動産を賃借権に基づいて占有していた者がその利用等が違法となった後も占有を継続する行為や使用貸借期限終了後も事実上居住を継続していた家屋に対して小規模の増築をする行為があります。
不動産の強取
暴行又は脅迫をもって不動産を侵奪する行為について通説は2項強盗罪すなわち利益強盗罪が成立するとします。不動産侵奪罪の新設により不動産は236条1項の客体には含まれないこととされたと理解するのが自然であり2項強盗罪として処断するのが最も合理的であることがその理由です。一方で1項強盗罪が成立するとする見解もあり窃盗罪の財物には不動産は含まれないが強盗罪のそれには含まれると理解することも可能であることがその理由です。
情報の不正入手
情報化社会の進展に伴い企業秘密やノウハウなどの重要な経済的価値のある情報を保護する必要性が高まっていますが情報それ自体は管理可能性あるものとする見解も含めて財物と扱わないのが一般的です。しかし情報が記録された媒体は財物にあたるとされ情報の不正入手に財産犯の成立を認める裁判例も多く見られます。
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