18条の趣旨
18条は奴隷的拘束及び意に反する苦役からの自由を保障しています。身体が不当な拘束を受けることのない自由は人間の尊厳の基本にかかわる根源的なものであるからこれを保障しようとしたものです。
奴隷的拘束と意に反する苦役の意義
奴隷的拘束とは自由な人格者であることと両立しない程度に身体の自由が拘束されることをいいます。奴隷や人身売買による拘束、監獄部屋等がその例です。
意に反する苦役とは奴隷的拘束に至らない程度の一定の人格に対する侵犯すなわち苦痛を伴う身体の自由の拘束をいいます。苦痛の感じ方には個人差が存在しますが苦痛の判断は通常人を基準とします。公立中学校の生徒に当番制で教室の掃除をさせることは意に反する苦役とはいえません。
裁判員制度と苦役
最高裁判所は、裁判員の職務等は司法権の行使に対する国民の参加という点で参政権と同様の権限を国民に付与するものでありこれを苦役ということは必ずしも適切ではなく、柔軟な辞退の制度の存在も考慮すれば18条後段が禁ずる苦役に当たらないとしました。
保障の範囲と私人間への適用
国家権力が非人道的な自由拘束をしてはならないことはあまりに当然であるから、本条の趣旨は私人相互の関係における拘束を禁止することにあるとして、本条の規定は私人間にも直接適用されるものと解されています。本条の禁止に触れる内容の法律行為は公序良俗違反として民法90条によっても無効となりますが直接本条により無効となると解されています。また、労働基準法は暴行や脅迫等の手段によって使用者が労働者の意思に反して労働を強制してはならない旨を規定しています。
奴隷的拘束の禁止
奴隷的拘束はおよそ人間の尊厳に反するものとして絶対的に禁止され、内在的制約又は公共の福祉による制約はありえません。苦役の場合と異なり犯罪による処罰の場合にも例外は認められません。したがって、犯罪者に対して刑罰として奴隷的拘束を受けさせることは本条及び36条の残虐な刑罰の禁止に違反します。また、裁判所の判決で確定された債務に関しその履行方法として債務者を拘束し強制労働に従事させる旨法律で定めることはできません。
意に反する苦役の禁止
意に反する苦役の禁止については本条自身が犯罪に因る処罰の例外を認めています。これ以外の例外は認められないと解されていますが、人格の侵犯といえないような正当理由に基づく単なる身体の拘束は意に反する苦役とはいえないからその判断が重要となります。
意に反する苦役に当たるとされる例として徴兵制があります。諸外国と異なり日本国憲法の下では兵役義務が規定されていないことがその理由です。
意に反する苦役に当たらないとされる例としては、まず非常災害その他の緊急時における応急的な労務負担があります。これは災害防止や被害者救済という限られた緊急目的のために必要不可欠でありかつ課される労務も応急的かつ一時的なものであるためです。また、議院又は裁判所に出頭して証言する義務、納税その他のために必要な申告や届出ないし報告をする義務等、国家作用の実施に協力する義務も意に反する苦役には当たりません。
犯罪による処罰の例外
意に反する苦役の強制も犯罪による処罰の場合には例外的に許されます。拘禁刑などの自由刑のほか罰金刑の換刑処分としての労役場留置も許されます。
人身保護請求
戦後の極東国際軍事裁判所等において有罪とされ拘禁された被拘束者らが人身保護法に基づき釈放を請求した事案について、最高裁判所は、本件拘束は平和条約並びに法律の定めるところに従い法律の規定する刑の執行としてその職権により拘束しているのであるから権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著であると判断することはできないとし、人身保護法と同規則の定める救済理由に該当しないとして請求を排斥しました。
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