権限の定めのない代理人の権限

103条は権限の定めのない代理人は保存行為及び代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内においてその利用又は改良を目的とする行為のみをする権限を有すると定めています。代理権があることは明らかだがその範囲が不明な場合やに範囲を決めていない場合にこれを補充する規定です。すなわち処分行為はできませんが管理行為はできるということです。

保存行為とは財産の現状を維持する行為をいい家屋の修繕、消滅時効の完成猶予及び更新並びに未登記不動産の保存登記等がその例です。

利用行為とは収益を図る行為をいい現金を銀行預金にすることや物の賃貸等がその例です。なお現金を株式にすることや使用貸借は利用行為ではありません。

改良行為とは財産の経済的価値すなわち使用価値及び交換価値を増加させる行為をいい家屋に電気やガスや水道などの設備を施すことや無利息の貸金を利息付に改めること等がその例です。

いずれの行為に該当するかは代理行為の性質によって定まります。

復代理

復代理人とは代理人が自己の代理権限内の行為を行わせるために代理人の名において選任した本人の代理人をいいます。

104条は委任による代理人すなわち任意代理人は本人の許諾を得たとき又はやむを得ない事由があるときでなければ復代理人を選任することができないと定めています。任意代理人の場合は本人の信任に基づくものでありいつでも辞任しうることから復任権は制限されています。

105条は法定代理人は自己の責任で復代理人を選任することができると定めています。法定代理人の場合は権限が広範囲にわたりその辞任も容易でなくしかも本人の信任に基づいたものでないことから復任権は広く認められています。やむを得ない事由があるときは本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負います。

任意代理人が復代理人を選任した場合には債務不履行の一般原則に従って責任を負います。法定代理人が通常の場合に復代理人を選任したときは復代理人の行為すべてについて責任を負います。やむを得ない事由がある場合には選任監督懈怠責任のみ負います。

復代理人の地位

復代理権は代理人の代理権に基礎を置きます。そのため復代理権は代理人の代理権の範囲を超えることはできません。復代理人が復代理権の範囲外の行為をした場合にはその行為がたとえ代理人の代理権の範囲内であっても無権代理となります。代理人の代理権が消滅すると復代理権も消滅します。

代理人は代理権を譲渡するわけではないので復代理人を選任しても代理人の代理権は消滅しません。代理人と復代理人は同等の立場で本人を代理します。

復代理人は本人の代理人です。本人の名で代理行為を行いその効果はすべて本人に帰属します。復代理人が代理行為をするに当たっては本人のためにすることを示せば十分であり復代理人であることを示す必要はありません。復代理人は代理人と同一の権利及び義務を有し代理人に引き渡せば義務は消滅します。

代理権の濫用

107条は代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において相手方がその目的を知り又は知ることができたときはその行為は代理権を有しない者がした行為とみなすと定めています。

代理権の濫用が無権代理行為とみなされることにより無権代理に関する一連の規定が適用されえます。追認及び追認拒絶に関する規定、相手方の催告権に関する規定、相手方の取消権に関する規定及び無権代理人の責任に関する規定等の規定はそれぞれの要件が満たされる限り代理権を濫用した代理人の行為に適用されます。

代理権濫用行為の相手方からの転得者の保護について特段の規定はありませんがかかる転得者の保護は94条2項の類推適用や即時取得等によって図られることとなります。

自己契約及び双方代理の禁止

108条1項は同一の法律行為について相手方の代理人として又は当事者双方の代理人としてした行為は代理権を有しない者がした行為とみなすと定めています。ただし債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為についてはこの限りではありません。

自己契約とは特定の法律行為につき当事者の一方が相手方の代理人になることをいいます。双方代理とは特定の法律行為につき1人の者が双方の代理人となることをいいます。自己契約及び双方代理は事実上代理人が自分1人で契約することになって本人すなわち当事者の一方の利益が不当に害されるおそれがあることから無権代理行為とみなされています。

本条1項違反の自己契約又は双方代理は無権代理行為とみなされますが116条本文により本人に効果帰属させることは可能です。

自己契約及び双方代理が許容される場合

債務の履行であればあらかじめなすことが定まっており本人の不利益になることはないため許容されます。売買に基づく移転登記申請や株式の名義書換は債務の履行に属さない行為でも許されるとされています。なお代物弁済や期限未到来の債務の弁済は許されません。

本人があらかじめ許諾した行為についても許容されます。自己契約及び双方代理並びに利益相反行為の禁止は本人の利益を保護するものであるためです。

利益相反行為

108条2項は代理人と本人との利益が相反する行為については代理権を有しない者がした行為とみなすと定めています。ただし本人があらかじめ許諾した行為についてはこの限りではありません。利益相反行為の場合も自己契約及び双方代理と同様にこれを自由に認めると本人に不利益を生ずるおそれがあるため無権代理行為とされています。

利益相反行為については債務の履行が例外的に許容される旨の明文は存在しません。これは債務の履行は本人の利益を害するものと解されないためそもそも利益相反行為に該当しないと考えられたからです。

利益相反行為か否かの判断

利益相反行為に当たるかどうかは代理人の動機や意図からではなく代理行為自体を外形的かつ客観的に考察して判定されます。

法定代理の場合

法定代理では法定代理人と本人の間の利益相反取引について特則が設けられる場合が多く親権者の利益相反行為や後見監督人の同意を要する行為等について規定されています。

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