法律行為の意義
法律行為とは人が法律効果を発生させようとする行為であり意思表示という法律事実を要素とする法律要件をいいます。
法律行為の種類
法律行為には単独行為、契約及び合同行為があります。
単独行為とは単一の意思表示により構成される法律行為のことをいいます。追認、追認の拒絶、取消し、相殺の意思表示、債務の免除及び解除等がその例です。
契約とは2つ以上の意思表示の合致により成立する法律行為のことをいいます。
合同行為とは2つ以上の意思表示が相対立せずに同一の目的に向けられた形で合致することにより成立する法律行為のことをいいます。社団設立行為がその例です。
準法律行為
準法律行為は意思表示を要素としない点で法律行為と区別されます。
意思の通知とは意思の発表でありながら意思が法律効果の発生を内容としない点で意思表示と区別されるものです。催告や受領の拒絶等がその例です。
観念の通知とは一定の事実の通知であって意思の発表という要素を含まないものをいいます。代理権授与の表示、債権譲渡の通知及び債務の承認等がその例です。
法律行為の解釈
法律行為の解釈とは法律行為の文言にとらわれず当事者の意図した目的を捉えて法律行為のもつべき客観的かつ合理的意義を確定、補充及び修正することを意味します。
法律行為の解釈における作業としてはまず当事者がした意思表示の意味及び内容を確定する狭義の解釈があります。次に当事者の意思表示が欠けている事項につき慣習、任意規定、条理、信義則及び契約の趣旨等に照らして補充解釈する法律行為の補充があります。さらに当事者の意思表示が明確でありそのとおり合意している場合であっても合意通りの法律効果を認めることが不当ないし不適切と判断される場合に法律行為の内容を修正する法律行為の修正があります。
公序良俗
90条は公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は無効とすると定めています。本条は法律行為の目的が反社会性を帯びるときにその効力を無効とすることにより法律行為の社会的妥当性すなわち実体的適法性を要求するものです。
公序良俗違反の類型
公序良俗違反の類型として財産的秩序に反する行為があります。他人の窮迫、軽率又は無経験を利用し著しく不適当な利益を獲得することを目的とする法律行為すなわち暴利行為は善良の風俗に反する事項を目的とするものとして無効となります。
倫理的秩序に反する行為も公序良俗違反の類型のひとつです。不倫な関係を維持継続することを目的とする遺贈は無効ですがもっぱら生計を被相続人に頼っていた受遺者の生活を保全するためになされかつ遺言内容が相続人らの生活基盤を脅かすものといえない包括遺贈は公序良俗に反するとはいえないとされています。
自由及び人権を害する行為も公序良俗違反に当たります。判例は男子の定年年齢を60歳、女子を55歳とする就業規則規定は女子のみを理由とする不合理な差別を定めたものとして無効としました。また不起訴の合意の効力については一律に否定すべきものではないが裁判を受ける権利を制約するものであるからその有効性については慎重に判断すべきであるとされ当事者の属性及び相互の関係、不起訴の合意の経緯、趣旨及び目的、対象となる権利及び法律関係の性質、当事者が被る不利益の程度その他諸般の事情を総合考慮して決するとされています。
動機の不法
動機が相手方に表示された場合には行為も不法性を帯び公序良俗に反するものといえます。なお動機が表示されないのに相手方が不法な動機について悪意の場合の処理につき判例の立場は不明です。
公序良俗違反の効果
公序良俗違反は絶対的無効であり追認は許されません。善意の第三者であっても保護されません。公序良俗違反の行為が履行された場合には原状回復が許されず不法原因給付となります。
公序良俗違反となるかの基準時は法律行為時の公序に照らして判断され行為時に公序に反しない法律行為は後に公序が変化しても有効です。
法令違反と公序良俗
取締法規に反する行為の私法上の効力については個別に判断されます。判例は食品衛生法のような取締法規に反して食肉販売業の許可のない者が精肉を買い受けても私法上は有効としました。他方で建築基準法に違反する建物建築を目的とする請負契約については行為態様の悪質性、違法建物の危険性及び事後的な是正の困難性を重視して著しく反社会性の強い行為であるから公序良俗に反し無効としました。また宅建業法の規定に反して宅建業者が無免許者にその名義を貸し無免許者が当該名義を用いて宅地建物取引業を営む行為は免許制度を潜脱するものであって反社会性の強いものであるから公序良俗に反し無効であるとされこれと併せて当該名義を借りてされた取引による利益を分配する旨の合意も名義を借りる旨の合意と一体のものとして公序良俗に反し無効であるとされています。
強行規定と任意規定
91条は法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときはその意思に従うと定めています。本条は任意規定と異なった意思を当事者が表示した場合にはそれに従うこととして法律行為自由の原則を示し他方で公の秩序に関する規定すなわち強行規定には当事者の意思によっても反しえないという限界を示しています。
判例は民法678条の組合から任意に脱退することができる旨を規定する部分は強行法規でありこれに反する組合契約における約定は効力を有しないとしています。
事実たる慣習
92条は法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときはその慣習に従うと定めています。法律行為は慣習を前提としてなされることが多いため行為の解釈の際に法律行為の内容が不明確な場合には慣習によって法律行為を補充することが当事者の予期に合致するので慣習に従うものとされています。
慣習があり、その慣習によって契約をするのが普通である場合には反対の意思を表示しない限りは慣習による意思を有するものと推定されます。
法の適用に関する通則法3条の慣習はいわゆる慣習法すなわち人々の法的確信にまで達した慣習を意味するのに対し民法92条の慣習は事実たる慣習すなわち法的確信にまで達しなくてもある狭い範囲で事実上行われる慣習を意味するので両者は矛盾しません。適用の優先順位は事実たる慣習が任意規定に優先し任意規定が慣習法に優先します。
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