特別方式の遺言の意義

遺言においては遺言者の真意を確保すべく厳格な方式が要求されますが特別の事情の下では普通方式に従うことができない場合があります。この場合に方式に従っていないことを理由として遺言を無効とすることは現実に即さないため民法は普通方式の要件に従うことができない場合に要件を緩和した4種類の特別方式の遺言を認めています。

特別方式の遺言には危急時遺言として死亡の危急に迫った者の遺言と船舶遭難者の遺言があり隔絶地遺言として伝染病隔離者の遺言と在船者の遺言があります。

死亡の危急に迫った者の遺言

976条1項は疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは証人3人以上の立会いをもってその1人に遺言の趣旨を口授してこれをすることができると定めています。口授を受けた者はこれを筆記して遺言者及び他の証人に読み聞かせ又は閲覧させ各証人がその筆記の正確なことを承認した後これに署名し印を押さなければなりません。

口がきけない者がこの遺言をする場合には遺言者は証人の前で遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して口授に代えなければなりません。

この遺言は遺言の日から20日以内に証人の1人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければその効力を生じません。家庭裁判所は遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければこれを確認することができません。

死亡危急時遺言の方式として日付は要求されません。

伝染病隔離者の遺言

977条は伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所にある者は警察官1人及び証人1人以上の立会いをもって遺言書を作ることができると定めています。

在船者の遺言

978条は船舶中にある者は船長又は事務員1人及び証人2人以上の立会いをもって遺言書を作ることができると定めています。

船舶遭難者の遺言

979条1項は船舶が遭難した場合において当該船舶中にあって死亡の危急に迫った者は証人2人以上の立会いをもって口頭で遺言をすることができると定めています。証人がその趣旨を筆記してこれに署名し印を押しかつ証人の1人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求してその確認を得なければその効力を生じません。

遺言関係者の署名及び押印

980条は伝染病隔離者の遺言及び在船者の遺言の場合には遺言者、筆者、立会人及び証人は各自遺言書に署名し印を押さなければならないと定めています。署名又は印を押すことのできない者があるときは立会人又は証人はその事由を付記しなければなりません。

特別方式の遺言への普通方式の規定の準用

982条は自筆証書遺言の加除・変更、成年被後見人の遺言、証人及び立会人の欠格事由、共同遺言の禁止に関する規定を特別方式の遺言について準用しています。

特別の方式による遺言の効力

983条は特別方式による遺言は遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から6か月間生存するときはその効力を生じないと定めています。

外国にある日本人の遺言の方式

984条は日本の領事の駐在する地にある日本人が公正証書又は秘密証書によって遺言をしようとするときは公証人の職務は領事が行うと定めています。

遺言の効力発生の時期

985条1項は遺言は遺言者の死亡の時からその効力を生ずると定めています。同条2項は遺言に停止条件を付した場合においてその条件が遺言者の死亡後に成就したときは遺言は条件が成就した時からその効力を生じます。

特定遺贈の効力

特定の遺産を相続人に相続させる旨の遺言があった場合には当該遺産は特段の事情のない限り何らの行為を要せずに被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継されるとされています。遺贈の効力を第三者に対抗するためには対抗要件が必要です。

遺言の解釈

遺言の解釈に当たっては遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく遺言者の真意を探求すべきとされています。遺言者自らが具体的な受遺者を指定せずその選定を遺言執行者に委託する旨の遺言は遺産の利用目的が公益目的に限定されている上被選定者の範囲が限定されているものと解されるときは有効とされています。

遺言の無効・取消し

遺言も法律行為であるから無効・取消しが問題となります。遺言に特有の無効原因として方式違反と共同遺言があります。意思無能力は無効原因となり制限行為能力に関する総則編の規定は適用されません。公序良俗・強行法規違反も無効原因となりえます。心裡留保については常に有効であり93条は適用されないとされています。錯誤、詐欺・強迫は取消原因となります。

公証人が遺言者に遺言能力があることを認めて公正証書遺言を作成した場合でも相続人は遺言能力がなかったことを理由として公正証書遺言の無効を主張することができます。

遺贈の放棄

986条1項は受遺者は遺言者の死亡後いつでも遺贈の放棄をすることができると定めています。同条2項は遺贈の放棄は遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生じます。

この規定は特定遺贈にのみ適用があり包括遺贈の放棄は相続の放棄に関する規定に従います。したがって包括遺贈の放棄をしようとする場合にはその旨を家庭裁判所に申述しなければなりませんが特定遺贈の放棄をしようとする場合にはその旨を家庭裁判所に申述することを要しません。

被相続人が共同相続人の1人に特定の財産を相続させる旨の遺言を残した場合に当該相続人が一方的意思表示で遺言の効果を排除することは遺言を遺贈と解すると相続を放棄しなくても可能ですが遺産分割方法の指定と解すると相続を放棄する以外には不可能です。

遺贈の承認又は放棄の催告

987条は遺贈義務者その他の利害関係人は受遺者に対し相当の期間を定めてその期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨の催告をすることができると定めています。受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは遺贈を承認したものとみなされます。

受遺者の相続人による遺贈の承認又は放棄

988条は受遺者が遺贈の承認又は放棄をしないで死亡したときはその相続人は自己の相続権の範囲内で遺贈の承認又は放棄をすることができると定めています。ただし遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときはその意思に従います。

遺贈の承認及び放棄の撤回及び取消し

989条1項は遺贈の承認及び放棄は撤回することができないと定めています。同条2項は総則及び親族の規定による相続の承認・放棄の取消しの許容に関する規定を遺贈の承認及び放棄について準用しています。

包括受遺者の権利義務

990条は包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有すると定めています。包括受遺者は遺贈の効力発生と同時に積極財産のみならず消極財産をも承継する点で相続人に類似するためです。包括受遺者は遺贈を承認・放棄することができ遺産分割の際にも相続人と同様に扱われます。

ただし包括受遺者はあくまでも相続人と同一の権利義務を有するだけであって相続人そのものではありません。包括受遺者が遺言者の死亡以前に死亡した場合であっても代襲相続の余地はありません。包括受遺者には遺留分も認められません。複数の包括遺贈のうちの1つがその効力を生ぜず又は放棄によってその効力を失った場合に遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときを除きその効力を有しない包括遺贈につき包括受遺者が受けるべきであったものは他の包括受遺者には帰属せず相続人に帰属するとされています。

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