虚偽診断書等作成罪の客体と行為
診断書とは医師が診察の結果得た判断を表示し人の健康上の状態を証明するために作成する文書をいいます。検案書とは死後初めて死体に接した医師が死亡の事実を医学的に確認した結果を記載した文書をいいます。死亡証書とは生前から診断に当たっていた医師が患者の死亡時に作成する診断書をいいます。
虚偽の記載又は虚偽の記録とは客観的事実に反する一切の記載又は記録をいいます。解釈上公務所に提出する目的すなわち行使の目的が要求されています。本罪は診断書等に虚偽の記載又は記録をした時点で成立し虚偽の記載又は記録をした診断書等が公務所に提出されたかどうかは本罪の成立に関係しません。
偽造私文書等行使罪
161条1項は私文書偽造等罪及び虚偽診断書等作成罪の文書等又は電磁的記録文書等を行使した者はその文書等若しくは電磁的記録文書等を偽造し若しくは変造し又は虚偽の記載若しくは記録をした者と同一の刑に処すると定めています。同条2項は本罪の未遂は罰すると定めています。
行使の意義は偽造公文書行使罪におけるそれと同様です。偽造有印私文書を真正な文書として第三者に示した場合には偽造有印私文書行使罪が成立します。虚偽診断書等の行使については公務所への提出に限られます。私文書偽造罪等と同行使罪は牽連犯となります。
電磁的記録不正作出罪
161条の2第1項は人の事務処理を誤らせる目的でその事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処すると定めています。
本罪は情報化社会の進展に伴い文書偽造の罪ではまかなえない有害行為を処罰し電磁的記録に対する公共の信用を保護するものです。本罪の規定により文書概念に電磁的記録が含まれないことが明確になりました。
権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録の意義は私文書偽造罪のものと同じです。電磁的記録とは電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって電子計算機による情報処理の用に供されるものをいいます。このうち本罪の客体としての電磁的記録は他人の事務処理の用に供するものに限定されます。権利や義務に関する電磁的記録としては銀行の預金元帳ファイルや乗車券があり事実証明に関する電磁的記録としては投票券の裏面の磁気ストライプ部分などがあります。
不正作出の意義
不正作出とは電磁的記録作成権者すなわちコンピュータ・システムを設置しそれによって一定の事務処理を行い又は行おうとしている者の意思に反して権限なく又は権限を濫用して電磁的記録を作ることをいいます。投票券の磁気ストライプ部分に的中券のデータを印磁して改ざんすることやキャッシュカードの磁気ストライプ部分の預金情報を改ざんすること及び会社の経理担当者がパソコン記憶装置内の会計帳簿ファイルに虚偽のデータを入力して記憶させることなどがこれにあたります。
人の事務処理を誤らせる目的
人の事務処理を誤らせる目的とは財産上、身分上その他の人の生活関係に影響を及ぼしうると認められる事柄の処理を誤らせる目的をいいます。本罪の成立には故意に加えてこの目的が必要です。
公電磁的記録不正作出罪
161条の2第2項は私電磁的記録不正作出罪の対象が公務所又は公務員により作られるべき電磁的記録に係るときは10年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処すると定めています。公電磁的記録とは公務所又は公務員の職務の遂行として作出されることとされている電磁的記録をいい自動車登録ファイルや住民票ファイルなどがこれにあたります。私電磁的記録よりも信用性が高いことから刑が加重されています。
不正作出電磁的記録供用罪
161条の2第3項は不正に作られた権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を人の事務処理を誤らせる目的で人の事務処理の用に供した者はその電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処すると定めています。同条4項は本罪の未遂は罰すると定めています。
供用とは不正に作出された電磁的記録を他人が事務処理に用いる電子計算機において使用しうる状態に置くことをいいます。磁気ストライプ部分のある預金通帳等については自動現金支払機に差し込もうとすれば実行の着手が認められるので差し込んで読み取り可能になる前に検挙されれば未遂犯となります。
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