弁済による代位の意義

弁済が第三者や連帯債務者又は保証人等のような終局的債務者でない者により行われた場合にこれらの者は債務者に対する求償権を取得します。この求償権を確保するために認められたのが弁済による代位の制度であり債務者について消滅した債権者の権利が求償権の範囲で弁済者に移転するものとされます。弁済による代位は債権の法定移転であり債権譲渡ではありません。

弁済による代位の要件

499条は債務者のために弁済をした者は債権者に代位すると定めています。任意代位すなわち弁済をすることについて正当な利益を有しない者の弁済による代位と法定代位すなわち弁済をすることについて正当な利益を有する者の弁済による代位を区別することなく代位弁済者の求償権を確保しています。

弁済による代位の要件として第1に弁済その他の事由で債権者を満足させたことが必要です。代物弁済、供託及び相殺のほか担保権の実行、強制執行や債権者と債務者との間で混同が生じた場合もこれに準じます。第2に弁済者が債務者に対して求償権を有することが必要です。

500条は弁済をすることについて正当な利益を有する者が債権者に代位する場合を除き債権譲渡の対抗要件に関する467条が準用されると定めています。正当な利益を有しない者の弁済による代位の場合には債務者や第三者に不測の損害を与えるおそれがあるため債権譲渡の対抗要件の具備が必要です。これに対し正当な利益を有する者は弁済によって当然に代位し対抗要件は不要です。

弁済をするについて正当な利益を有する者

弁済をするについて正当な利益を有する者とは弁済しないことにより自己に損失が及ぶ法律上の地位にある者をいいます。すなわち弁済しないと債権者から執行を受ける地位にある者や弁済しないと債務者に対する自己の権利が価値を失う地位にある者がこれに当たります。具体例として保証人、物上保証人、連帯債務者、後順位抵当権者、債務者の財産保全の必要がある場合の一般債権者及び担保目的物の第三取得者があります。

代位者と債務者の間の効果

501条1項は債権者に代位した者は債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができると定めています。同条2項は権利の行使は代位した者が自己の権利に基づいて債務者に対して求償をすることができる範囲内に限りすることができると定めています。

弁済者は自己の求償権の範囲内において特約に基づく遅延損害金を含め債権の効力及び担保として債権者が有していた一切の権利を行使することができます。担保とは広く人的担保及び物的担保の一切をいいます。代位によって債権自体が移転するので債権に付着した瑕疵や抗弁は当然に代位者に承継されます。ただし取消権や解除権のような契約当事者の地位に付随する権利は代位によって移転せず取消しや解除は契約当事者のみがなすことができます。

代位弁済者が弁済による代位によって取得した担保権を実行する場合にその被担保債権として扱うべきものは求償権ではなく原債権です。弁済による代位の効果は求償権確保にあり本来の債務者に対する固有の求償権は失われず行使することもできます。弁済者が弁済による代位により取得した原債権と求償権とは別個に消滅時効にかかります。

弁済者が弁済による代位により取得した原債権を行使して訴訟においてその給付を請求するためには原債権の発生原因事実のほか求償権の発生原因事実も主張立証しなければなりません。

保証人が債権者に代位弁済した後に債務者が保証人に内入弁済をした場合には求償権と原債権にそれぞれ内入弁済があったとして民法の規定に従って弁済の充当があったものとされます。代位する原債権は求償権を確保するために認められたものであり保証人と主債務者との間では事実上同一のものであるためです。

代位者相互間の効果

501条3項は代位者相互間の関係について規定しています。

第三取得者すなわち債務者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は保証人及び物上保証人に対して債権者に代位しません。第三取得者の1人は各財産の価格に応じて他の第三取得者に対して債権者に代位します。物上保証人の1人が他の物上保証人に対して債権者に代位する場合も各財産の価格に応じて代位します。

保証人と物上保証人との間においてはその数に応じて債権者に代位します。ただし物上保証人が数人あるときは保証人の負担部分を除いた残額について各財産の価格に応じて債権者に代位します。保証人が物上保証人を兼ねていても1人として頭数を数えます。物上保証人が死亡し担保目的物に相続があった場合には弁済時の共有持分権者をそれぞれ1人として頭数を数えます。

第三取得者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は第三取得者とみなし物上保証人から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は物上保証人とみなして代位の規定が適用されます。

当事者間で結んだ代位の割合を変更する旨の特約は有効であり後順位抵当権者等の第三者にも効力を及ぼします。

一部弁済による代位

502条1項は債権の一部について代位弁済があったときは代位者は債権者の同意を得てその弁済をした価額に応じて債権者とともにその権利を行使することができると定めています。一部代位者が単独で担保権を実行することを認めると債権者が換価時期を選択する利益を奪われ望まない時期に担保権が実行されるおそれがあるためです。同条2項は債権者は単独でその権利を行使することができると定めています。

同条3項はその債権の担保の目的となっている財産の売却代金その他の当該権利の行使によって得られる金銭については債権者が代位者に優先すると定めています。これは原債権者優先主義の判例法理を弁済者代位を通じての原債権からの満足が問題となる場面一般に拡張した上で明文化したものです。

同条4項は一部弁済の場合において債務の不履行による契約の解除は債権者のみがすることができると定めています。弁済による代位は契約当事者の地位の移転ではないから契約当事者の地位に付属する解除権はそもそも代位の対象とはなりません。全部代位の場合にも代位者は解除権を行使することはできません。一部弁済を受けた債権者が残債務の不履行によって契約を解除した場合には債権者は代位者に対しその弁済をした価額及びその利息を償還しなければなりません。

不動産を目的とする1個の抵当権が数個の債権を担保しそのうちの1個の債権のみについての保証人が当該債権に係る残債務全額につき代位弁済した場合は502条の想定する一部代位の問題ではありません。この場合には当該抵当権は債権者と保証人の準共有となり当該抵当不動産の換価による売却代金が被担保債権の全てを消滅させるに足りないときは債権者と保証人は両者間に特段の合意がない限り売却代金につき債権者が有する残債権額と保証人が代位によって取得した債権額に応じて按分して弁済を受けるものとされます。

債権者による債権証書の交付等

503条1項は代位弁済によって全部の弁済を受けた債権者は債権に関する証書及び自己の占有する担保物を代位者に交付しなければならないと定めています。債権に関する証書には債権証書だけではなく借用書や売買目的物の受取証など債権の存在を証明する書類のほか違約金証書及び担保設定証書などが含まれます。同条2項は債権の一部について代位弁済があった場合には債権者は債権に関する証書にその代位を記入しかつ自己の占有する担保物の保存を代位者に監督させなければならないと定めています。

債権者による担保の喪失等

504条1項は弁済をするについて正当な利益を有する者がある場合において債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し又は減少させたときはその代位権者は代位をするに当たって担保の喪失又は減少によって償還を受けることができなくなる限度においてその責任を免れると定めています。その代位権者が物上保証人である場合にはその代位権者から担保の目的となっている財産を譲り受けた第三者及びその特定承継人についても同様とされます。

同条2項は債権者が担保を喪失し又は減少させたことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは504条1項の規定は適用されないと定めています。

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