受任者による費用の前払請求
649条は委任事務を処理するについて費用を要するときは委任者は受任者の請求によりその前払をしなければならないと定めています。委任者の費用前払と受任者の事務処理とは同時履行の関係に立ちません。もっとも受任者が費用の前払がないために事務の処理に着手しないことは履行遅滞を正当化する事由に当たるので履行遅滞の責任を生じません。
受任者による費用等の償還請求
650条1項は受任者は委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは委任者に対しその費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができると定めています。支出の当時必要と認められる費用か否かは純客観的標準ではなく受任者の過失のない判断を標準とすべきとされています。費用とは受任者が善管注意義務をもって処理に必要と判断して立て替えたものをいい必ずしも事実上必要かつ有益な費用であることを要しません。費用は金銭でもその他の財産でもよいとされています。
同条2項前段は受任者は委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは委任者に対し自己に代わってその弁済をすることを請求することができると定めています。この場合においてその債務が弁済期にないときは委任者に対し相当の担保を供させることができます。受任者が有する代弁済請求権に対しては委任者は受任者に対する債権をもって相殺することができません。両債権は同種の債権ではなくまた相殺を認めれば受任者は自己資金をもって事務処理費用の立替払を強制されることになるためです。相当の担保とは受任者の負担した債務の担保ではなく受任者が自ら弁済することによって生じうる損害に対する担保のことを指します。
同条3項は受任者は委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは委任者に対しその賠償を請求することができると定めています。委任者に損害発生についての故意や過失は不要であり一種の無過失責任です。
委任の解除
651条1項は委任は各当事者がいつでもその解除をすることができると定めています。委任契約は当事者間の対人的信頼関係を基礎とする契約であるからこの信頼関係が崩れると以後の委任事務の継続は無益であるため委任者と受任者のいずれからでも何ら特別の理由がなくても自由に解除できます。
委任者が受任者の債務不履行を理由に解除をしたが債務不履行の事実がなかった場合でも受任者に対する不信の表明があったといえるので解除の意思表示は651条の解除の意思表示として効力を生じます。651条所定のルールは任意規定であるため任意解除権を放棄する合意も契約自由の原則から有効です。
受任者の利益のためにも委任がされた場合であっても委任契約が当事者間の信頼関係を基礎とする契約であることに徴すれば受任者が著しく不誠実な行動に出る等やむを得ない事由があるときは委任者は契約解除が可能です。さらにやむを得ない事由がない場合であってもその契約において委任者が委任契約の解除権を放棄していたものと解されない事情があるときは委任契約を解除することができます。委任契約が受任者の利益のためにもなされていることを理由として委任者の意思に反して事務処理を継続させることは委任者の利益を阻害し委任契約の本旨に反するためです。
任意解除をした当事者の損害賠償責任
651条2項は651条1項による任意解除がなされた場合に一方が相手方に不利な時期に委任を解除したとき又は委任者が受任者の利益をも目的とする委任を解除したときには解除した当事者は相手方に生じた損害の賠償をしなければならないと定めています。
受任者の利益のための委任とは委任事務処理自体によって受任者が利益を受ける委任類型であり単なる有償委任はこれに当たりません。
651条2項柱書の損害とは委任契約が解除されなければ受任者が得たであろう利益から受任者が債務を免れることによって得た利益を控除したものです。この損害には契約を解除されたことによって得ることができなくなった報酬すなわち得べかりし報酬は原則として含まれないと解すべきとされています。その理由は受任者の利益には報酬以外のものが想定されていること、委任が解除された場合の受任者の報酬は限定されていること、報酬は現実になされた事務処理の対価であることが挙げられています。
損害賠償責任が生じない場合として第1に受任者の利益をも目的とする委任であっても専ら報酬を得ることを目的とする場合があります。第2にやむを得ない事由がある場合です。受任者側の事由として受任者の疾病や委任者の不誠実な行為などが挙げられ委任者側の事由として委任者にとってその事由を処理する必要が全くないことなどが挙げられます。
委任の解除の効力
652条は賃貸借の解除の効力に関する620条の規定を委任について準用しています。したがって委任の解除は将来に向かってのみその効力を生じます。
委任の終了事由
653条は委任は委任者又は受任者の死亡、委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと、受任者が後見開始の審判を受けたことによって終了すると定めています。
委任者の死亡については委任者が死亡した場合に委任者の相続人が委任者の地位を当然に承継する旨の委任者と受任者間の約定は有効とされています。委任者の後見開始の審判は終了事由とはされていません。なお請負においては注文者が死亡しても請負契約が終了することはありません。
委任の終了後の処分
654条は委任が終了した場合において急迫の事情があるときは受任者又はその相続人若しくは法定代理人は委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで必要な処分をしなければならないと定めています。
委任の終了の対抗要件
655条は委任の終了事由はこれを相手方に通知したとき又は相手方がこれを知っていたときでなければこれをもってその相手方に対抗することができないと定めています。
準委任
656条は委任に関する規定は法律行為でない事務の委託について準用すると定めています。
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