西陣ネクタイ事件

西陣ネクタイ事件は、国産の生糸輸出の増進と養蚕業の経営の安定を目的として外国産生糸の輸入を制限する法律が制定されたところ、高額でしか原料の生糸を入手できなくなった織物業者が、かかる法律の制定により損害を受けたとして国家賠償を求めた事案です。

最高裁は、積極的な社会経済政策の実施の一手段として個人の経済活動に対し一定の合理的規制措置を講ずることは憲法が予定しかつ許容するところであるから、裁判所は立法府がその裁量権を逸脱し当該規制措置が著しく不合理であることの明白な場合に限ってこれを違憲としてその効力を否定することができるとしました。

酒類販売免許制事件の事案

酒類販売免許制事件は、酒類販売業の免許の申請を行ったところ、酒税法上の免許拒否事由である経営の基礎が薄弱であると認められる場合に該当することを理由に拒否処分を受けた者が、その処分の取消しを求めた事案です。

酒類販売免許制事件の判旨

最高裁は、一般に許可制は単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて狭義における職業選択の自由そのものに制約を課すもので職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定し得るためには原則として重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要するとしました。

そのうえで、租税法の定立については国家財政、社会経済、国民所得、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断にゆだねるほかはなく、裁判所は基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないとしました。したがって、租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のための職業の許可制による規制については、その必要性と合理性についての立法府の判断が政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理なものでない限り、憲法22条1項の規定に違反するものということはできないとしました。

酒税法は酒税の確実な徴収とその税負担の消費者への円滑な転嫁を確保する必要から免許制を採用したものと解されるとしました。そして、消費者への酒税の負担の円滑な転嫁を実現する目的でこれを阻害するおそれのある酒類販売業者を免許制によって酒類の流通過程から排除することとしたのも、酒税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという重要な公共の利益のために採られた合理的な措置であるとしました。また、酒税は本来消費者にその負担が転嫁されるべき性質の税目であること、酒類の販売業免許制度によって規制されるのがそもそも致酔性を有する嗜好品である性質上販売秩序維持等の観点からもその販売について何らかの規制が行われてもやむを得ないと考えられる商品である酒類の販売の自由にとどまることも考慮すると、当時においてなお酒類販売業免許制度を存置すべきものとした立法府の判断が政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理であるとまでは断定し難いとしました。

酒類販売免許制事件の評釈

本判決は、先例として薬事法違憲判決を引用して許可制の場合には重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要すると厳しい審査の必要を示唆しつつも、結果的には租税立法が総合的な政策判断や専門技術的判断を要する等といったその特質を重く見て、財政目的のための職業の許可制による規制の審査基準として立法府の判断が著しく不合理であるか否かとする基準を採用したものとされています。すなわち規制目的二分論を採用しなかったものと位置づけられています。

製造たばこ小売販売業の適正配置規制

製造たばこの小売販売業に対する適正配置規制の合憲性が争われた事案で、最高裁は、たばこ事業法に基づく適正配置規制は従前のたばこ小売人指定制度に基づく小売人を保護することを目的とするものであるから公共の福祉に適合する目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまる措置であるとしました。そして、これが立法府の裁量権の範囲を逸脱し著しく不合理であることが明白であるとは認め難く、22条1項に違反しないとしました。

司法書士法の資格制の事案

司法書士法の資格制の事案は、行政書士が依頼者のために登記申請代理を行ったところ、司法書士以外の者が登記に関する手続の代理等の業務を行うことを禁止する司法書士法の規定に違反したとして起訴され、登記業務を司法書士に独占させる司法書士法は22条に反する等の主張をした事案です。

司法書士法の資格制の判旨

最高裁は、司法書士法は登記制度が国民の権利義務等社会生活上の利益に重大な影響を及ぼすものであること等にかんがみ、司法書士等以外の者が他人の嘱託を受けて登記に関する手続について代理する業務及び登記申請書類を作成する業務を行うことを禁止しこれに違反した者を処罰することにしたものであって、この規制が公共の福祉に合致した合理的なもので22条1項に違反するものでないことは当裁判所の判例の趣旨に徴し明らかであるとしました。

農作物共済の当然加入制の事案

農作物共済の当然加入制の事案は、一定の稲作農業者を農業共済組合に当然加入させる仕組みが22条1項に反しないかが争われたものです。

農作物共済の当然加入制の判旨

最高裁は、農業災害補償法が一定の稲作農業者を農業共済組合に当然加入させる仕組みを採用したのは、国民の主食である米の生産を確保するとともに水稲等の耕作をする自作農の経営を保護することを目的としたものであるとしました。

そして、当然加入制はもとより職業の遂行それ自体を禁止するものではなく、職業活動に付随してその規模等に応じて一定の負担を課するという態様の規制であることに照らすと、当然加入制は必要性と合理性を有していたということができるとしました。当然加入制の採用は立法府の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理であることが明白であるとは認め難く、22条1項に違反するということはできないとしました。

市議会議員政治倫理条例と企業の経済活動の自由の事案

市議会議員政治倫理条例と企業の経済活動の自由の事案は、市議会議員政治倫理条例が定める2親等規制、すなわち議員の2親等以内の親族が経営する企業は市の工事等の請負契約を辞退しなければならない旨の規制が企業の経済活動の自由等を侵害するものであるかが争われたものです。

市議会議員政治倫理条例と企業の経済活動の自由の判旨

最高裁は、規制の対象となる企業の経済活動は市の工事等に係る請負契約等の締結に限られるところ、2親等内親族企業であっても請負契約等に係る入札資格を制限されるものではないうえ、本件条例上2親等内親族企業は請負契約等を辞退しなければならないとされているものの制裁を課するなどしてその辞退を法的に強制する規定は設けられておらず、2親等内親族企業が請負契約等を締結した場合でも当該契約が私法上無効となるものではないこと等の事情も考慮するとしました。

そのうえで、2親等規制に基づく2親等内親族企業の経済活動についての制約は正当な目的を達成するための手段として必要性や合理性に欠けるものとはいえず、2親等規制を定めた市議会の判断はその合理的な裁量の範囲を超えるものではないとし、2親等規制を定める規定は22条1項及び29条に違反するものではないとしました。

風俗案内所規制条例事件の事案

風俗案内所規制条例事件は、青少年の健全な育成と府民の安全で安心な生活環境の確保を目的として、学校等の敷地から200メートル以内の区域における風俗案内所の営業を禁止し違反者に対して刑罰を科すことを定めた京都府の条例の規定が22条1項に反しないか争われた事案です。

風俗案内所規制条例事件の判旨

最高裁は、風俗案内所の特質及び営業実態に起因する青少年の育成や周辺の生活環境に及ぼす影響の程度に鑑みると、一定の範囲内における風俗案内所の営業を禁止しこれを刑罰をもって担保することは公共の福祉に適合する目的達成のための手段として必要性、合理性があるということができるとしました。そして、風営法の風俗営業に対する規制を踏まえても、京都府議会が風俗案内所の営業を禁止する規制を定めたことがその合理的な裁量の範囲を超えるものとはいえないから、本件条例の規定は22条1項に違反するものではないとしました。

要指導医薬品の対面販売規制の事案

要指導医薬品の対面販売規制の事案は、法律上薬局開設者又は店舗販売業者は要指導医薬品の販売又は授与に当たっては薬剤師による対面での情報提供及び指導を行わせなければならないとされているところ、インターネットを通じて医薬品販売を行う事業者がこの規定は22条1項に違反すると主張して、郵便その他の方法による医薬品の販売をすることができる権利ないし地位を有することの確認等を求めたものです。

要指導医薬品の対面販売規制の判旨

最高裁は、本件規定は不適正な使用による国民の生命、健康に対する侵害を防止しもって保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止を図ることを目的とするものであり、このような目的が公共の福祉に合致することは明らかであるとしました。

そして、本件規定の目的を達成するため薬剤師による対面での情報提供及び指導を行うとすることには相応の合理性があるとしました。対面による情報提供及び指導においては直接のやり取りや会話の中でその反応、雰囲気、状況等を踏まえた柔軟な対応をすることにより説明し又は強調すべき点について理解を確実に確認することが可能となる一方で、電話やメールなど対面以外の方法による情報提供及び指導においては音声や文面等によるやり取りにならざるを得ないなど理解を確実に確認する点において直接の対面に劣るという評価を前提とするものと解されるところ、当該評価が不合理であるということはできないとしました。

本件規定により販売方法が規制されている要指導医薬品は市場規模が小さくその多くは一定期間が経過すれば規制のない一般用医薬品に移行することが予定されていることに照らすと、本件規定は職業選択の自由そのものに制限を加えるものであるとはいえず職業活動の内容及び態様に対する規制にとどまるものであることはもとよりその制限の程度が大きいということもできないとしました。よって、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度に照らすと本件規定による規制に必要性と合理性があるとした判断が立法府の合理的裁量の範囲を超えるものであるということはできないため、22条1項に違反しないとしました。

あん摩マッサージ指圧師養成施設不認定事件の事案

あん摩マッサージ指圧師養成施設不認定事件は、あん摩マッサージ指圧師養成施設で視覚障害者以外の者を養成するものについて、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があるときは認定をしないことができる旨の規定の合憲性が争われた事案です。

あん摩マッサージ指圧師養成施設不認定事件の判旨

最高裁は、本件規定はあん摩マッサージ指圧師に係る養成施設等で視覚障害者以外の者を対象とするものの設置及びその生徒の定員の増加について許可制の性質を有する規制を定め、直接的には養成施設等の設置者の職業の自由を、間接的には養成施設等において教育又は養成を受けることにより免許を受けてあん摩、マッサージ又は指圧を業としようとする視覚障害者以外の者の職業の自由をそれぞれ制限するものといえるとしました。

本件規定の合憲性判断に当たっては、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることについての立法府の判断がその政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱し著しく不合理であることが明白な場合かどうかという審査基準を用いるとしました。

このように許可制が問題となっているにもかかわらず比例原則を厳格に適用しない理由として、本件規定はその制定の経緯や内容に照らせば障害のために従事し得る職業が限られるなどして経済的弱者の立場にある視覚障害がある者を保護するという目的のため、あん摩マッサージ指圧師についてその特性等に着目して一定以上の障害がある視覚障害者の職域を確保すべく視覚障害者以外の者等の職業の自由に係る規制を行うものといえるとしました。この目的が公共の福祉に合致することは明らかであるところ、当該目的のためにこのような規制措置を講ずる必要があるかどうかや具体的にどのような規制措置が適切妥当であるかを判断するに当たっては、対象となる社会経済等の実態についての正確な基礎資料を収集したうえ多方面にわたりかつ相互に関連する諸条件について将来予測を含む専門的、技術的な評価を加えこれに基づき視覚障害がある者についていかなる方法でどの程度の保護を図るのが相当であるかという社会福祉、社会経済、国家財政等の国政全般からの総合的な政策判断を行うことを必要とするものであるとしました。このような規制措置の必要性及び合理性については立法府の政策的、技術的な判断に委ねるべきものであり、裁判所は基本的にはその裁量的判断を尊重すべきであるとしました。

以上を踏まえ、本件規定は重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることについての立法府の判断がその政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱し著しく不合理であることが明白であるということはできないため、22条1項に違反しないとしました。

公衆浴場法の距離制限規定に関する判決

公衆浴場法は公衆浴場の適正配置のため公衆浴場業を知事の許可制としているところ、この距離制限規定の合憲性については3つの最高裁判決があります。

公衆浴場法距離制限に関する昭和30年判決

昭和30年の最高裁大法廷判決は、公衆浴場が多数の国民の日常生活に必要欠くべからざる多分に公共性を伴う厚生施設であること、したがって適正配置に必要な措置を採らないときはその偏在により多数の国民が日常容易に公衆浴場を利用しようとする場合に不便を来たすおそれなきを保し難く、またその濫立により浴場経営に無用の競争を生じその経営を経済的に不合理ならしめひいて浴場の衛生設備の低下等好ましからざる影響を来たすおそれなきを保し難いとして、国民保健及び環境衛生の見地からする弊害防止を公共の福祉の内容と捉え距離制限規定を合憲と判断しました。

公衆浴場法距離制限に関する平成元年1月判決

平成元年1月の最高裁判決は、公衆浴場法による適正配置規制は公衆浴場業者の廃転業を防止し健全で安定した経営を行えるようにして国民の保健福祉を維持しようとするものであり、積極的、社会経済政策的な規制目的に出た立法であるから、立法府のとった手段がその裁量権を逸脱し著しく不合理であることが明白でない以上憲法に違反しないとしました。

公衆浴場法距離制限に関する平成元年3月判決

平成元年3月の最高裁判決は、保健衛生の確保と自家風呂をもたない国民にとって必要不可欠な厚生施設の確保という消極と積極の2つの目的を認定し、適正配置規制はこの目的を達成するための必要かつ合理的な範囲の手段であるとしました。

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