分割債権及び分割債務
427条は数人の債権者又は債務者がある場合において別段の意思表示がないときは各債権者又は各債務者はそれぞれ等しい割合で権利を有し又は義務を負うと定めています。近代法の個人主義思想並びに法律関係の簡明化という見地から分割債権関係を多数当事者の債権関係の原則形態とするものです。
分割債権関係とはもともと1個の同一の給付を目的とした債権及び債務が多数の者に分割的に帰属する関係すなわち多数の者が自己の持分につき独立して債権を有し又は債務を負担する関係をいいます。
分割債権関係の成立
分割債権関係が成立するには1個の可分給付につき数人の債権者又は債務者がある場合であって別段の意思表示がないときであることを要します。
分割債権の例として共有物に対する不法行為による損害賠償請求権及び相続財産中の生命保険金請求権などの金銭債権があります。分割債務の例として数人が共同でした売買契約による代金債務があります。連帯債務が共同相続された場合には共同相続人は相続分に応じた分割債務としてこれを承継し本来の債務者とともに連帯債務者となります。
連帯債務が成立するにはその旨の明示若しくは黙示の意思表示がなければならず連帯の推定は認められません。
分割債権関係の効力
対外的効力として各債権及び各債務は相互に全く独立したものとして取り扱われ各債権者は自分の債権だけを単独で行使でき各債務者は自分の債務だけを弁済すべきことになります。
1人について生じた事由の効力として各債権及び各債務は独立した権利及び義務であるから1人の債権者又は債務者につき生じた事由は全て相対的効力しかなく他の債権者又は債務者に影響を与えません。
内部関係について他の債権者の分を受領したり他の債務者の分を支払うのは委任か事務管理、場合によっては不当利得や不法行為の問題となります。
不可分債権の意義
428条は連帯債権の規定のうち更改又は免除に関する規定及び混同に関する規定を除いたものを債権の目的がその性質上不可分である場合において数人の債権者があるときについて準用すると定めています。
不可分債権とは多数人が1個の不可分給付を目的とする債権を有する場合をいいます。
不可分債権の成立
性質上の不可分とは給付が分割できない性質である場合をいいます。使用貸借又は賃貸借の終了を原因とする家屋明渡請求権を数名の貸主が行使する場合や共有者の所有権に基づく共有物返還請求権がその例です。
性質上可分か不可分かは単に物理的又は自然的な性状によってではなく取引の実際ないし取引上の通念を標準としつつ問題処理の妥当性を勘案して決められます。当事者の意思表示によって性質上可分な債権を不可分債権とすることは許されません。本来可分給付の性質を有する金銭債権でも不可分的な利益供与の対価であるときは不可分債権となります。
不可分債権の効力
対外的効力は連帯債権と同様です。各債権者は全ての債権者のために債務者に対し全部又は一部の履行を請求でき債務者は全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができます。
1人について生じた事由の効力について履行の請求には絶対的効力が生じます。不可分債権では債務者は誰か1人の債権者に履行すれば全ての債権者のために履行したことになるため弁済その他債権者に満足を与える事由及びこれに関連する事由については絶対的効力が生じます。弁済、供託、弁済の提供及び受領遅滞についても絶対的効力が生じます。これらの事由を除いては相対的効力が原則となります。連帯債権では絶対的効力事由である更改、免除及び混同も不可分債権では相対的効力事由です。
不可分債権者の1人との間の更改又は免除
429条は不可分債権者の1人と債務者との間に更改又は免除があった場合においても他の不可分債権者は債務の全部の履行を請求することができると定めています。この場合においてはその1人の不可分債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益を債務者に償還しなければなりません。
不可分債権者相互間の内部関係については明文の規定はありませんが債務の履行を受けた債権者は内部関係の割合に応じて利益を分与すべきと解されています。その際の分配割合は特別の事情がない限り平等と推定されます。
不可分債務の意義
430条は連帯債務の規定のうち混同に関する規定を除いたものを債務の目的がその性質上不可分である場合において数人の債務者があるときについて準用すると定めています。
不可分債務の成立
不可分債務は債務の目的がその性質上不可分である場合に成立します。共有物を売却した場合の目的物の引渡義務、賃借権を共同相続した場合の賃料支払義務及び共有地上に地役権を設定する債務がその例です。
不可分債務の効力
対外的効力は連帯債務と同様です。債権者は債務者の1人又は全ての債務者に対して同時又は順次に全部又は一部の履行を請求できます。
1人について生じた事由の効力について明文にはありませんが弁済、供託、弁済の提供及び受領遅滞は絶対的効力を生じると解されています。これらの事由及び更改及び相殺を除いては相対的効力が原則となります。混同の絶対的効力に関する規定も準用されていないので不可分債務者の1人について混同が生じても相対的効力しか生じません。不可分債務の履行の内容とその求償の内容は通常異なるので混同により債権者としての地位も有する不可分債務者に履行した上でその者に求償を求めても必ずしも迂遠な処理とはいえないからです。
内部関係も連帯債務と同様です。
可分債権又は可分債務への変更
431条は不可分債権が可分債権となったときは各債権者は自己が権利を有する部分についてのみ履行を請求することができ不可分債務が可分債務となったときは各債務者はその負担部分についてのみ履行の責任を負うと定めています。
不可分債権及び不可分債務も本来その主体の数だけの別個かつ独立の債権であって目的たる給付が不可分であるがゆえに特別の扱いが認められているにすぎません。したがって給付が可分になれば当然に分割債権及び分割債務に変じます。不可分債権が分割債権に転化した後に債権者の1人が全額弁済を受けてもその効果は他の債権者に及びません。
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