無効と取消しの意義

無効とは法律行為の効果が当初から全く生じないものとして取り扱われることをいいます。取消しとはいったん発生した法律効果を後から消滅させる余地を認めるものです。いずれも法目的達成のための技術であり無効とするか取消しとするかは立法政策によって決まります。

無効と取消しの差異

無効の場合は主張を要せず当然に効力がないものとされます。これに対して取消しの場合は取消権者による取消しがあってはじめて効力を失います。

効力喪失の時期について無効は最初から効力がありません。取消しは取り消されるまでは効力がありますが取り消されると最初から無効であったものとみなされます。

追認について無効な行為は追認によってもその効力を生じません。取消しの場合は追認により確定的に有効になります。

消滅時効について無効には消滅時効はありません。取消しには126条に定める消滅時効があります。

無効の具体例としては意思能力を欠く場合や90条違反があります。取消しの具体例としては行為能力を欠く場合や詐欺又は強迫による意思表示があります。

無効な行為の追認

119条本文は無効な行為は追認によってもその効力を生じないと定めています。無効なものは何人の主張であっても絶対的に効力がなく追認によっても有効とすることはできないことを規定したものです。

ただし119条ただし書は当事者がその行為の無効であることを知って追認したときは新たな行為をしたものとみなすと定めています。反社会的行為でない限り当事者が望む以上当該行為に何らかの法律効果を認めてよいことからこのような規定が設けられています。

本条の無効は確定的無効を指し90条違反、91条違反、93条1項ただし書及び94条1項がその例です。当事者が無効であることを知った上でこれを追認したときは従前の無効原因が除去されている場合に限り追認の時に従前の法律行為と同一内容の行為を新たになしたものとみなされます。しかし法律行為の内容が強行法規又は公序良俗に反するような場合には追認しても有効にはなりません。

無効行為の転換

無効行為の転換とは無効な法律行為が他の法律行為の要件を備える場合に後者の有効な法律行為として効力を認めることをいいます。

不要式行為への転換は自由に認められます。要式行為への転換については一定の形式自体が要求される要式行為への転換は許されませんが意思表示を慎重かつ明確にする必要から要式行為とされるものへの転換は可能です。秘密証書遺言が自筆証書遺言の要件を満たす場合に自筆証書遺言として効力を認めることがその例です。

判例は妾との間の子を本妻との間の嫡出子として届け出た場合に認知への転換を肯定していますが妾との間の子をいったん他人の嫡出子として届け出た後その者の代諾により養子縁組をした場合には認知への転換を否定しています。また他人の子を養子とするため自分の嫡出子として届け出た場合には養子縁組への転換を否定しています。

取消権者

120条1項は行為能力の制限によって取り消すことができる行為は制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り取り消すことができると定めています。他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては当該他の制限行為能力者を含みます。

120条2項は錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り取り消すことができると定めています。

取消権者には表意者自身のほか法定代理人、任意代理人及び承継人が含まれます。制限行為能力者自身は意思能力があれば保護者の同意を得ずに単独で取り消すことができます。この取消しの意思表示を行為能力の制限を理由に取り消すことはできません。

制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為は102条ただし書により取り消すことができます。制限行為能力者である本人を保護するためです。

承継人には包括承継人のほか契約上の地位の特定承継人も含まれます。

制限行為能力者の行為があった場合の取消権者には同意をすることができる者も含まれます。したがって保佐人、臨時保佐人及び保佐監督人は取消権を有します。また特定の法律行為について同意権を付与された補助人、臨時補助人及び補助監督人も同意をすることができる者に当たり取消権者となります。

保証人は120条所定の取消権者のいずれにも当たらないため取消権は認められません。ただし457条3項による履行の拒絶は可能です。

取消しの効果

121条は取り消された行為は初めから無効であったものとみなすと定めています。

制限行為能力による取消しの場合は何人にも対抗することができます。第三者保護規定は存在せず絶対的取消しとされています。

取消しの効果としては遡及効が原則です。しかし民法上例外的に将来効とされる場合もあり婚姻の取消しの効果や縁組の取消しの効果がその例です。

売買契約が第三者による詐欺を理由に取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は533条の類推適用により同時履行の関係に立ちます。

原状回復の義務

121条の2第1項は無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は相手方を原状に復させる義務を負うと定めています。無効な行為には当初から無効である場合だけでなく取り消すことができる行為が取り消されたことにより無効とされる場合も含まれます。

不当利得についての一般規定である703条及び704条は一方当事者の一方的な給付を想定したものです。そのため無効又は取り消しうる法律行為を巻き戻し的に清算する場合については703条及び704条ではなく121条の2が適用されます。

原状に復させる義務とは現存利益に限定されない利益全部の返還義務をいいます。これは現存利益の返還で足りるとする同条2項及び3項の反対解釈から導かれます。現物返還ができない場合には現物返還が不能となったときの価額で返還することとなります。

返還義務が現存利益に軽減される場合

121条の2第2項は無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者が給付を受けた当時その行為が無効であることを知らなかったときはその行為によって現に利益を受けている限度において返還の義務を負うと定めています。給付を受けた後に取消しにより初めから無効であったものとみなされた行為にあっては給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであることを知らなかったときに現存利益の返還で足ります。無償行為が無効であることを知らなかった給付受領者は受領した物を自由に費消したり処分したりできると考えるのが通常であるにもかかわらず全面返還を求めると給付受領者の期待を害するためです。

121条の2第3項は行為の時に意思能力を有しなかった者はその行為によって現に利益を受けている限度において返還の義務を負うと定めています。行為の時に制限行為能力者であった者についても同様です。意思無能力者及び制限行為能力者の保護の必要性がその理由です。

利益を必要な出費に充てた場合には現存利益が存在するものと認められます。本来であれば自己の財産から支出するところ受領した財産を支出に充てることで自己の財産の減少を免れたという利益が現存するためです。受領した金員を他人に対する弁済又は必要な生活費に支出したときは現存利益があるとされています。これに対して賭博に浪費された場合には現存利益はないとされています。

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