相手方の抗弁

423条の4は債権者が被代位権利を行使したときは相手方は債務者に対して主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができると定めています。相殺、同時履行及び権利の消滅等の抗弁が含まれます。被代位権利の相手方からみれば債務者の権利が行使されていること自体に変わりはないからです。

他方で相手方が代位債権者に対して有する固有の抗弁をもって代位債権者に対抗することはできません。債権者代位権に基づいて行使される被代位権利は債務者の相手方に対する権利であるからです。

債務者の処分権限等の保持

423条の5は債権者が被代位権利を行使した場合であっても債務者は被代位権利について自ら取立てその他の処分をすることを妨げられないと定めています。この場合において相手方も被代位権利について債務者に対して履行をすることを妨げられません。

債権者による債権者代位権の行使は差押えと同様の効果を生ずるものではなく債務者の被代位権利に係る処分権限が制限されるとすると債務者の地位が著しく不安定となるからです。

したがって債権者代位権の行使を受けた相手方は債務者に対して履行することができ債務者がその履行を受領すれば代位債権者が勝訴判決を取得し確定したとしてもその権利は消滅します。また、ある債権者が代位行使しても他の債権者は被代位権利を差し押さえたり又は代位行使したりすることが可能です。

訴訟告知

423条の6は債権者は被代位権利の行使に係る訴えを提起したときは遅滞なく債務者に対し訴訟告知をしなければならないと定めています。

債権者代位訴訟を提起した代位債権者はいわゆる法定訴訟担当でありその判決の効力は債務者に対しても及びます。そこで債務者の債権者代位訴訟に関与する機会を保障するために代位債権者に対して遅滞なく債務者に訴訟告知をする義務を負わせたものです。

登記又は登録の請求権を保全するための債権者代位権

423条の7は登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者はその譲渡人が第三者に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときはその権利を行使することができると定めています。この場合において423条の4から423条の6までの規定が準用されます。

本条は責任財産の保全を目的としない債権者代位権すなわち転用型として登記及び登録請求権を被保全債権とする場面のみを定めています。もっともこの場合以外の転用型の債権者代位権を否定する趣旨ではなく今後の解釈に委ねる趣旨です。

本条は転用型の場面を規定しているためその性質上代位行使の範囲に関する規定及び債権者への支払又は引渡しに関する規定は適用されません。登記を直接自己に移転すべき旨すなわち中間省略登記を請求することもできません。また債務者の無資力要件は不要です。

債権者代位権の転用の判例

登記請求権を被保全債権とする転用として不動産が甲から乙を経て丙に順次譲渡されたが登記が未だ甲の下にある場合に丙が乙に対する登記請求権を被保全債権として乙の甲に対する登記請求権を代位行使することが認められています。

賃借権すなわち土地の使用収益を受ける債権を被保全債権とする転用として甲が乙から賃借していた土地上に丙が勝手に建物を建てその土地を不法に占拠している場合に乙の甲に対する賃貸借契約上の債権を被保全債権として土地所有者乙の丙に対する土地明渡請求権の代位行使が認められています。

債権譲渡通知請求権を被保全債権とする転用として甲の丙に対する債権が甲から乙を経て丙へと譲渡されたが丙に対して債権譲渡の通知がなされない場合に丙は乙に代位して甲に対し乙への譲渡を丙に通知すべき旨を訴求できるとされています。

担保価値維持請求権を被保全債権とする転用として抵当権の目的物が第三者により不法に占拠されている場合に所有者の不法占拠者に対する妨害排除請求権を抵当権者は代位行使することができるとされています。

金銭債権保全への転用の特殊例として甲が乙に土地を売却しその代金の一部を受け取った後に死亡し丙丁が乙を相続した場合において丙は乙から残代金の支払を受けることを望んだが丁は乙への移転登記義務の履行を拒否したという事案で乙から丙丁への登記請求権と丙から乙の残代金請求権とは同時履行の関係に立つとし丙は同時履行の抗弁権を失わせて乙に対する代金債権を保全するため乙の資力の有無を問わず乙に代位して相続人丁に対する乙の所有権移転登記手続請求権を行使できるとされています。

詐害行為取消権の概説

民法は詐害行為取消権について相手方が受益者の場合と転得者の場合とを区別して全体の規律を構成しています。このような構成を採用したのは第1に転得者は債務者の詐害行為の直接の相手方ではなく債務者の経済状況等について知り得る立場にないこと、第2に受益者と転得者とでは利害状況が異なることを考慮したことによります。

詐害行為取消権においては債務者の責任財産を保全する必要性及び債務者が自己の財産を管理する自由という債権者代位権で問題となる要素に加えて債権回収や受益者及び転得者の取引の安全についても考慮する必要があります。このことから債権者代位権とは異なり転用という考え方は採り得ません。

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