法人の人権享有主体性
法人に基本的人権の保障が及ぶかどうかについて2つの説があります。
否定説は、法人には基本的人権の保障は及ばないと解します。その理由として、人権観念は元来自然人について成立したものであること、および法人は自然人を通じて活動しその利益も自然人に帰属するのだから自然人に人権を認めれば十分であることが挙げられます。
肯定説は、性質上可能な限り内国の法人にも基本的人権の保障が及ぶと解します。判例もこの立場をとっています。その理由として、法人も自然人と同じく活動する社会的実体であり構成員の個別的人権に分解することが非現実的な場合もあること、および法人は社会における重要な構成要素であることが挙げられます。
公法人の人権享有主体性
一般に法人の人権享有主体性が議論されるのは私法人であり、公法人については別途考察を要します。基本的人権は人間が本来自然の状態において有する自由を国家権力による侵害から保障しようとするものであり、侵害する側である公法人を人権享有主体とすることは背理です。
ただし、公法人が一般国民と同じように他の公権力機関の強制に服しているときは基本権の保障を受けることがあります。たとえば、国立大学は学問の自由の享有主体たりえます。
権利能力なき社団の人権享有主体性
法人格の有無は私法上の法的技術や制度の問題であるから、法人格の有無で人権享有主体性に差異を設けるべきではなく、権利能力のない社団や財団であっても人権享有主体性は認められます。
法人に保障される人権の範囲
法人に保障される人権として、経済的自由権すなわち財産権、営業の自由、居住移転の自由があります。国務請求権として請願権、裁判を受ける権利、国家賠償請求権があります。刑事手続上の諸権利として法定手続の保障、住居の不可侵、証人審問権、弁護人依頼権があります。
法人に保障されない人権として、生命や身体に関する自由すなわち奴隷的拘束及び苦役からの自由、逮捕、抑留、拘禁に対する保障、拷問や残虐な刑罰の禁止があります。また、生存権、選挙権、被選挙権も保障されません。
法人に保障されるか争いがある人権として、生命、自由、幸福追求権および精神的自由権があります。このうち信教の自由、学問の自由、集会、結社、表現の自由、プライバシー権、環境権などは法人にも保障されると解されています。判例上も、報道機関に報道の自由の保障が及ぶとされ、会社も自然人同様に政治資金の寄付の自由を有するとされています。
法人の人権保障の限界
一定の人権について法人が自然人と同様に享有主体となるとしても、自然人と同程度の保障が及ぶのではなく、法人の人権行使は自然人の人権を不当に制限するものであってはならないという限界があります。特に巨大な団体の場合には、実質的公平の原理の観点から経済的自由や政治活動の自由について自然人と異なる規制を受けることがあるとされています。
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