公務員選定罷免権の趣旨
憲法15条1項は、公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利であると定め、公務員の任免について国民が本来的な権利をもつことを明らかにしています。憲法上、国民が選挙によって選定するものとしては国会議員および地方公共団体の長や議会の議員等がありますが、罷免権としては最高裁判所裁判官に対するものしか規定されていません。
15条1項の趣旨については3つの見解があります。A説は個々の公務員についていちいち国民がその任免権をもつべきであるとの趣旨であると解し、国会議員に対する罷免権を積極的に認めます。その理由として、憲法が公務員の罷免権を他に譲渡しえない国民固有の権利とする以上その行使の可能性が現実に保障されなければならないこと、および国民が主権者であるならば当然その意思に反する代表者を実際に罷免しうるはずであることを挙げます。
B説はすべての公務員の選定及び罷免が直接及び間接に主権者たる国民の意思に基づくように仕組まれていなければならないとの趣旨にすぎないと解し、国会議員に対する罷免権を否定します。その理由として、選挙によって選ばれた国会議員は全国民の代表者であり一部の国民の代表者ではないこと、および憲法は国会議員がその地位を失う場合を明定していることを挙げます。
C説は、国会が適切な判断の下に関連憲法規定と矛盾しない形で立法を行い罷免権を制度化するのを禁じているわけではないとします。その理由として、憲法はこの問題について沈黙し罷免制度の導入や樹立を準備していないだけであることを挙げます。
選挙権の法的性格
選挙権とは、選挙人として選挙に参加することのできる資格又は地位をいいます。選挙権の法的性格については二元説と権利一元説が対立しています。
二元説は、選挙権には参政の権利とともに公務の執行という二重の性格が認められると解します。選挙人は一面において選挙を通じて国政についての自己の意思を主張する機会が与えられると同時に他面において選挙人団という機関を構成して公務員の選定という公務に参加するものであり、前者の意味では参政の権利をもち後者の意味では公務執行の義務を有するとします。この説によれば、公務としての特殊な性格に基づく最小限度の制限は許されることになります。
権利一元説は、選挙権を人民の主観的権利と解します。人民主権原理を採用する日本国憲法の下では選挙権は政治的意思決定能力をもつ人々が国家権力の行使に参加する当然の権利であるとし、権利の内在的制約にのみ服するとします。
帰化日本人投票制限事件
Xは帰化により日本国籍を取得しましたが、公職選挙法21条1項の要件を満たさないとして選挙権を行使できませんでした。そこでXは公職選挙法21条1項が違憲であるとして国家賠償を求めました。
裁判所は、公職選挙法21条1項の規定は選挙の公正を確保するためにやむを得ない事由があるといえるから合憲であるとしました。ただし、同規定により帰化者は日本国籍を取得後も住民票が作成されてから3か月間は一律に選挙権の行使が制限されるからその制限は決して軽くはなく、これを回避することができる実現可能な他の措置がとれないかを不断に検討する必要があり、実現可能な他の措置がとれるにもかかわらずこれを放置すれば違憲と判断されるに至る場合もあることを十分に留意する必要があるとして国家賠償請求を棄却しました。
選挙犯罪者の公民権停止
選挙犯罪者等の公民権停止の合憲性については、二元説と権利一元説とで根拠が異なります。二元説は選挙権の公務としての特殊な性格に基づく最小限度の制限であると解します。権利一元説は選挙人資格については原則として主権行使に必要な意思決定能力のみが要件とされるべきであるとしますが、公職選挙法上の公民権停止規定は選挙の公正確保を目的としたものでありその制限が必要最小限のものであれば許されるとします。したがって、公民権停止に関する実際の判断基準の点では両説の間に差異は認められません。
最高裁判所は、国民主権を宣言する憲法の下において公職の選挙権が国民の最も重要な基本的権利の一つであるとしても、それだけに選挙の公正はあくまでも厳粛に保持されなければならないのであって、一旦この公正を阻害し選挙に関与せしめることが不適当と認められるものは、しばらく被選挙権および選挙権の行使から遠ざけて選挙の公正を確保するとともに本人の反省を促すことは相当であると判示して、公職選挙法252条を合憲としました。なお、選挙権が国民の最も重要な基本的権利の一つであるとする判示部分から権利一元説に立つものと評価する余地もありますが、選挙の公正の確保という選挙権行使の公務的制約の見地から選挙権の制限を理由付けているので二元説の立場を採用したものともいいうるとされています。
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