物権の意義と性質
物権とは物を直接的かつ排他的に支配する権利をいいます。
物権の性質として直接性と排他性があります。直接性とは他人の行為を介在せずに自己の意思のみに基づいて物を支配できることをいいます。排他性とは1つの物権が存在する物の上には同じ内容の物権は成立しえないことをいいます。
物権の客体
物権の客体は有体性、支配可能性、非人格性、特定性、独立性及び単一性を備えていることを要します。金銭は単なる価値そのものであり特段の事情がない限り占有者がその占有取得の理由や占有を基礎付ける正当な権利の有無を問わず所有権者となります。
一物一権主義
一物一権主義とは1つの物権の客体は1個の独立物でなければならないとの原則をいいます。1つの物には1つの所有権という意味で用いられることもあります。
その根拠は物の一部や物の集団の上に1個の物権を認める社会的必要性がないこと及び物の一部や物の集団の上に物権が成立していることを示す公示方法がないのにこれを認めると権利関係が複雑となり取引の迅速及び安全を害することです。
社会的必要性があり公示方法があれば一物一権主義の趣旨に反しないことから例外が認められています。物の一部については一筆の承役地の一部を対象とする地役権や一筆の土地の一部を対象とする地上権も認められます。一筆の土地を細分化するには分筆手続を要しますが事実上区画して譲渡すれば当事者間では分筆前の一筆の土地の一部でも移転します。ただし第三者に対抗するには分筆と移転登記を要します。土地の一部についての取得時効が認められる場合もあります。
複数の物については抵当権の効力は抵当不動産の付加一体物にも及びます。集合動産譲渡担保や企業を構成する各種の物及び権利を一体として担保権の目的物とすることもできます。なお物権の客体は原則として有体物ですが例外的に権利質や権利を目的とする抵当権など財産権を客体とする物権の成立も認められます。
物権の優先的効力
物権相互間では互いに相容れない物権相互間で時間的に先に成立した物権が優先するという原則があります。物権の排他性が根拠です。しかし取引安全のため公示の原則が採用されている結果優先的効力は実際には不動産では登記、動産では引渡しを先に備えた方が優先することになっています。ただし先取特権ではその趣旨から取得の先後にかかわらず優先順位が法定されています。
同一物について物権と債権が競合する場合にはその成立の前後にかかわらず物権が債権に優先するのが原則です。例外として不動産賃借権は登記又は引渡しがあれば物権に優先し仮登記のある物権変動行為を目的とした債権も例外となります。
物権的請求権の意義
物権的請求権とは物権の内容を完全に実現することが妨げられ又はそのおそれがある場合にその妨害を生じさせている者に対して物権の内容の完全な実現を可能にするような行為を請求できる権利をいいます。物権的返還請求権、物権的妨害排除請求権及び物権的妨害予防請求権の3種類があります。
明文上の根拠はありませんが物権の直接支配性から円満な支配状態を回復し予防する必要があります。さらに占有権にすら訴権が認められていること及び202条1項が本権の訴えを認めていることも根拠になります。
物権的請求権の要件と相手方
物権的返還請求権の要件は他人の占有により物権が侵害されていることです。占有回収の訴えと異なり詐取又は遺失の場合も除外されません。相手方は現に目的物を占有している者であり占有回収の訴えと異なり善意の転得者に対しても行使できます。相手方は間接占有者でもよいですが占有補助者は相手方となりません。土地所有者が建物収去土地明渡請求訴訟を提起するには現実に家屋を所有することによって現実にその土地を占拠して土地の所有権を侵害している者を被告としなければなりません。
他人の土地上の建物の所有権を取得した者が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合にはたとえ建物を他に譲渡したとしても引き続きその登記名義を保有する限り土地所有者はその者に対して物権的返還請求権を行使できます。
物権的妨害排除請求権の要件は他人の占有以外の方法により物権が侵害されていることです。相手方は現に妨害状態を生じさせている者です。虚偽表示による登記名義人のように建物の所有権を取得したことがない者は所有者との合意により登記名義人となっていたとしても敷地所有者に対して建物収去義務を負いません。
物権的妨害予防請求権の要件は物権侵害のおそれがあることであり妨害が現実に生じる必要はありません。相手方は将来請求権者の有する物権を侵害するおそれのある者です。
物権的請求権は物権の侵害によって当然に発生し不法行為に基づく損害賠償請求権と異なり相手方の故意又は過失や責任能力の有無を問いません。
費用負担
物権的請求権行使の費用負担については見解が分かれています。費用は相手方が負担するとする見解は物権的請求権は相手方に一定の行為を請求する権利であることを根拠としますが侵害状態又は危険状態が自然力や不可抗力による場合には修正が必要とします。費用は原則として請求者が負担するとする見解は物権的請求権は物権の円満な状態を回復するための物に対する追求権であって人に対する権利ではないことを根拠とし相手方が不法行為者の場合は不法行為による損害賠償請求として物権的請求権実現の費用を相手方に請求できるとします。
権利行使期間
物権的請求権は物権と独立して消滅時効にかかりません。
他の請求権との関係
物権的請求権は不法行為に基づく損害賠償請求権や不当利得返還請求権とは請求権競合の関係に立ちます。賃貸借契約終了に基づく契約上の請求権として建物の返還請求権と所有権に基づく物権的返還請求権も請求権競合の関係に立ちます。
占有者は物権的返還請求を受ける相手方の地位に立つのでその際の占有者の権利義務が189条から191条及び196条に規定されています。
物権法定主義
175条は物権はこの法律その他の法律に定めるもののほか創設することができないと定めています。封建的な権利関係を廃し排他性を有する物権を限定し類型化することで取引安全を図るために物権法定主義が規定されました。
新しい物権の種類を作ることと物権の法定された内容を変更することは認められません。ただし慣習法上認められる物権もあり水利権、温泉専用権及び譲渡担保権がその例です。
この法律その他の法律とは憲法上の法律のみを意味し命令及び条例を含みません。
民法上の物権は11種類あり所有権、地上権、永小作権、地役権、入会権の用益物権、留置権及び先取特権の法定担保物権並びに質権、抵当権及び根抵当権の約定担保物権並びに占有権に分類されます。
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