議院の自律権
議院の自律権とは各議院がそれぞれの内部組織や運営等について他の議院や他の機関からの干渉を受けることなしに自主的に決定する権能をいいます。
資格争訟の裁判
55条は両議院は各々の議員の資格に関する争訟を裁判すると規定しています。本条は議院の自律性を尊重する趣旨に基づき議員の資格の争訟に関する裁判は当該議員の所属する議院が自ら行うべきとしたものです。
議員の資格とは44条本文に基づき法律で定められた議員としての地位を保持しうる要件のことをいいます。具体的には被選挙権を保持すること及び議員との兼職が禁じられている職務に就いていないことです。院内の秩序を乱す等議員資格を取得した後の事由については本条の対象とはなりません。
資格争訟裁判の方法
資格争訟の裁判は裁判的手続を用いて行われ、各議院の議員からその院の議長に文書で争訟を提起し議長はその訴状を委員会に付託しその審査を経た後議院でこれを議決します。
資格がないとして議員の議席を失わせるには出席議員の3分の2以上の多数の議決を必要とします。議員資格を失わせる場合の必要数が3分の2以上の特別多数であり、それ以外の議決たとえば議員資格を失わせることを否決する場合等は過半数で足ります。
資格争訟裁判は日本国憲法に特別の定のある場合に該当し各議院における裁判が終審となることから、議院の議決により資格を有しないとされた議員がさらに裁判所に救済を求めることはできません。事実認定や議事手続の誤りを理由とした出訴も認められません。76条1項の例外として憲法が認めた議院の権限であるためです。
議員は資格争訟を提起されたからといって直ちに議員としての地位及び権能を失うことはありませんが、自己の争訟に関する表決に加わることはできません。
定足数
56条1項は両議院は各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ議事を開き議決することができないと規定しています。定足数とは会議体において議事を開き審議を行い議決をなすために必要とされる最小限度の出席者数をいいます。
総議員の意義
総議員の意義について見解の対立があります。
A説は法定議員説であり法定議員を意味するとします。その理由として、一定数よりなる会議体の会議に必要な最小員数を定めるのが定足数本来の趣旨でありその数が常時変動することは定足数の性質から望ましくないこと、もともと3分の1という低い数に定められているものをさらに緩めるような解釈は望ましくないことが挙げられます。先例は法定議員数を基準にしています。
B説は現在議員説であり現在議員を意味するとします。その理由として、定足数の性質からして現に会議に出席しうる状態にある議員数を基準とすべきであって死亡や辞職による欠員を総議員に含めて議員として現に活動できない者を総議員に算入するのは妥当でないことが挙げられます。
表決数
56条2項は両議院の議事はこの憲法に特別の定のある場合を除いては出席議員の過半数でこれを決し可否同数のときは議長の決するところによると規定しています。表決数とは会議体において意思決定を行ううえで必要な賛成表決の数をいいます。本条2項は原則として両議院における議事の表決数を出席議員の過半数と定めて多数決の原則のうち絶対多数すなわち過半数方式を採用しています。
多数決の方式としては、他の数と比較して最も多い数を意味する比較多数すなわち相対多数、あるものの半分より多い数を意味する絶対多数すなわち過半数、及びあるものの3分の2や4分の3のように最小限が過半数以上に特別に引き上げられている特別多数があります。
議会制の本質的原理としての多数決原理が成り立つための前提として、複数の意見のうちどれが正しいかを客観的具体的に知る基準が存しないこと、複数の意見がそれぞれ平等な価値を有するとされること、決すべき具体的争点につき複数の答えが存すること、複数の意見の対立がその性質において互いの歩み寄り又は共存を不可能ならしめるようなものでないことが挙げられます。
特別多数決の類型
出席議員の3分の2以上の特別多数を要するものとして、資格争訟裁判で議員の議席を失わせる場合、本会議の秘密会を開く場合、懲罰により議員を除名する場合、衆議院で法律案を再議決する場合があります。
総議員の3分の2以上の特別多数を要するものとして、憲法改正の発議があります。
出席議員の意義
出席議員の意義について棄権した者や無効投票者も含まれるのかに関して見解の対立があります。
A説は算入説であり表決に際して棄権した者や白票及び無効票を投じた者も出席議員に算入すべきであるとします。その理由として、棄権や無効投票者を出席議員に算入しないと出席して議事に参加している者を欠席者や退席者と同様に扱うことになり不合理であること、棄権や白票投票者は少なくとも現状変更に積極的でない意思を表示するものとみるのが妥当であることが挙げられます。国会先例は白票及び無効票を投票総数に算入します。
B説は非算入説であり表決に際して棄権した者や白票及び無効票を投じた者は出席議員に算入すべきではないとします。その理由として、棄権や白票及び無効投票者を出席議員に算入すると賛否いずれの意思も表示しない者を反対者と同様に扱うことになり不合理であること、そもそも過半数主義は積極的に表示された賛否の意思から半数を超える多数者の意思に重きを置いてそれを会議体の意思にしようとするものであることが挙げられます。
委員会制度
積極国家現象の下で議会に対応に迫られる問題は複雑多様でありその取扱いに十分な調査と専門的知識を必要とします。そこで国会法は委員会中心主義を採用し各議院の下に常任委員会と特別委員会を置いて適正規模の人数による十分な審議を確保しようとしています。
なお参議院には国政の基本事項に関して長期的かつ総合的な調査を行う目的で委員会の他に調査会の設定が認められていますが衆議院には認められていません。委員会の定足数は半数です。
会議公開の原則
57条1項は両議院の会議は公開とすると規定しています。本条は議会での自由な討論を国民に公開してその批判にさらすことで議会での審議に多元的な利害と価値ができる限り反映されるようにしたものです。
秘密会を開くには出席議員の3分の2以上の多数で議決することが必要であり厳格な議決要件が定められています。
会議録の公表
両議院は各々その会議の記録を保存し秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外はこれを公表しかつ一般に頒布しなければなりません。
出席議員の5分の1以上の要求があれば各議員の表決はこれを会議録に記載しなければなりません。これは公開の趣旨を徹底させるための規定です。
役員選任権
58条1項は両議院は各々その議長その他の役員を選任すると規定しています。憲法はその他の役員の範囲を明らかにしていませんが、国会法は議長のほか副議長、仮議長、常任委員長、事務総長を議院の役員とします。
なお明治憲法時代には帝国議会を構成する議院の議長及び副議長は天皇により勅任され書記官以下の事務局職員もすべて政府により任命されていました。
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