故意の種類
故意は確定的故意と不確定的故意に分けられます。確定的故意とは行為者が犯罪事実の実現を確定的なものとして認識した場合をいいます。不確定的故意とは行為者が犯罪事実の実現を不確定的なものとして認識した場合をいいます。
不確定的故意はさらに概括的故意、択一的故意、条件付故意及び未必の故意に分けられます。概括的故意とは犯罪事実の客体や個数が不確定な場合をいいます。択一的故意とは数個の客体のうちどれかに結果が発生することは確実であるがどれに発生するか不明な場合をいいます。条件付故意とは犯罪の実行ないし結果の実現を一定の条件にかからしめる場合をいいます。被害者の抵抗いかんによっては殺害してもやむを得ないというように被害者の殺害を一定の事態の発生にかからせている場合でも実行行為の意思が確定的であったときは故意に欠けるところはないとされています。未必の故意とは犯罪事実の実現そのものが不確定な場合をいいます。
故意の本質と未必の故意
過失犯の処罰は例外であり過失犯を処罰する場合もその法定刑は故意犯の法定刑に比べて著しく軽いため故意と過失の限界をどのように画するかは重要な問題となります。犯罪事実の認識がない場合が認識なき過失であり犯罪事実の認識はあるが認容がない場合が認識ある過失であり認容がある場合が未必の故意であり確実性の認識がある場合が確定故意です。
意思説は故意の本質は犯罪事実の実現を希望し意欲することにあるとし意思的側面を重視する見解です。意思説からは過失との限界について認容説が導かれます。認容説は故意の成立には認識とあわせて少なくとも認容が必要であるとする見解であり判例の立場です。認容説によれば未必の故意とは結果発生の可能性を認識しかも発生してもよいという認容がある場合をいい認識ある過失とは結果発生の可能性を認識しているが認容を欠く場合をいいます。
表象説は故意の本質は犯罪事実の認識にあるとし認識的側面を重視する見解です。表象説からは過失との限界について蓋然性説が導かれます。蓋然性説は認識した結果発生の可能性の程度により判断する見解です。蓋然性説によれば未必の故意とは単なる結果発生の可能性を超えて結果発生の相当高度の蓋然性を認識した場合をいい認識ある過失とは単に結果発生が可能だと思った場合をいいます。
動機説は故意の本質は犯罪事実を認識しつつあえてその内容を実現する意思にあるとし意思説と表象説を統合する見解です。動機説は行為者の認識が動機形成過程に与える影響を重視し未必の故意とは結果発生の可能性を認識し結局は結果が発生するだろうと判断した場合をいい認識ある過失とは結果発生の可能性を認識しているが結局は結果は発生しないだろうと判断した場合をいいます。
これらの学説は具体的な結論に大きな差異はないとされています。判例は盗品有償譲受け罪の故意が成立するには盗品等であるかもしれないと思いながらしかもあえてこれを買い受ける意思があれば足りるとしています。
薬物犯罪と故意
薬物事犯にかかわる取締法規の内容は高度に技術的かつ専門的で構成要件も細分化されていることから行為者の認識が客体の名称や細部の性質に及ばないことが多く故意の成立には薬物の属性についてどの程度の認識が必要となるかが問題となります。
覚醒剤を密輸入して所持した者がその薬物が覚醒剤に当たるとの明確な認識を欠く事案について判例は覚醒剤であるかもしれないしその他の身体に有害で違法な薬物かもしれないとの認識があったとして覚醒剤輸入罪及び同所持罪の故意を肯定しました。この判例によれば覚醒剤が認識対象から除外されている場合すなわち覚醒剤ではないが身体に有害で違法な薬物かもしれないと認識していた場合には覚醒剤取締法違反の罪の故意を認めることはできないと解されています。
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