封印等破棄罪
96条は公務員が施した封印若しくは差押えの表示を損壊し又はその他の方法によりその封印若しくは差押えの表示に係る命令若しくは処分を無効にした者は3年以下の拘禁刑若しくは250万円以下の罰金に処し又はこれを併科すると定めています。
封印及び差押えの表示
封印とは物に対する任意の処分を禁止するために開くことを禁止する意思を表示してその外装に施された封緘等の物的設備をいいます。印章が押捺されている必要はありません。
差押えの表示とは差押えによって取得した占有を明らかにするために特に施された表示であって封印以外のものをいいます。差押えとは公務員がその職務上保全すべき物を自己の占有に移す強制処分をいいます。民事執行法による差押え、仮差押え、執行官保管の仮処分、国税徴収法による差押え及び刑事訴訟法に基づく証拠となるべき物の差押えなどがこれにあたります。
封印及び差押えの表示は適法又は有効なものであることを要します。したがって職権濫用による違法な封印や差押え及び法律上の有効要件を欠く封印や差押えは本罪の客体とはなりません。
執行官により立てられた仮処分の公示札がその後包装紙で覆われその上からひもが掛けられていてそのままでは記載内容を知ることのできない状態であっても容易にこれらを除去して記載内容を明らかにすることができる状態にあったときは差押えの表示としての効用を減却されるまでには至っていないから有効な差押えの表示として本条の客体にあたるとされています。
命令とは裁判所による命令をいい処分とは執行官その他の公務員による差押えの処分などをいいます。
損壊及びその他の方法
損壊とは物理的に毀損破壊して事実上の効用を減殺又は滅却することをいいます。
その他の方法によりその封印若しくは差押えの表示に係る命令若しくは処分を無効にするとは物理的に損壊せずにその事実上の効力を減殺又は滅却することをいいます。法律上の効力を失わせるという意味ではありません。封印を施された密造酒在中の桶から密造酒を漏出させる行為や仮処分によって執行官が土地を占有し立入禁止の表示札を立てたのを無視して耕作する行為がこれにあたります。
封印等破棄罪の故意
本罪の故意は行為の際に有効な封印又は差押えの表示が存在することの認識です。封印等破棄罪の場合も適法性の錯誤について公務執行妨害罪と同様の議論があります。
強制執行妨害目的財産損壊等罪
96条の2は強制執行を妨害する目的で一定の行為をした者は3年以下の拘禁刑若しくは250万円以下の罰金に処し又はこれを併科すると定めています。情を知って第3号に規定する譲渡又は権利の設定の相手方となった者も同様です。
本罪の保護法益は第一次的には債権者の保護であり第二次的には強制執行という国家作用の保護です。
強制執行の意義
本罪を債権者保護を中心に考える立場からは強制執行は民事執行法による強制執行又は同法を準用する強制執行に限られます。また本罪の強制執行には民事執行法1条所定の担保権の実行としての競売が含まれます。
いかに強制執行免脱の目的があっても現実に強制執行を受けるおそれのない客観的な状況の下では本罪は成立しません。
強制執行妨害目的財産損壊等罪の行為
本罪の行為は3つの類型に分けられます。第1号は強制執行を受け若しくは受けるべき財産を隠匿し損壊し若しくはその譲渡を仮装し又は債務の負担を仮装する行為です。第2号は強制執行を受け又は受けるべき財産についてその現状を改変して価格を減損し又は強制執行の費用を増大させる行為です。無用な増築をしてその区分所有権を登記又は仮登記をする行為や当該不動産の中に大量の廃棄物を搬入する行為などがこれにあたります。第3号は金銭執行を受けるべき財産について無償その他の不利益な条件で譲渡をし又は権利の設定をする行為です。この類型は法律行為であること又は真実の譲渡等であることを理由に第1号にあたらないものを捕捉して処罰するものです。第3号は真実の譲渡や権利設定であり必ず相手方がいるためその相手方を処罰するために柱書後段が設けられています。
強制執行行為妨害等罪
96条の3第1項は偽計又は威力を用いて立入り、占有者の確認その他の強制執行の行為を妨害した者は3年以下の拘禁刑若しくは250万円以下の罰金に処し又はこれを併科すると定めています。同条2項は強制執行の申立てをさせず又はその申立てを取り下げさせる目的で申立権者又はその代理人に対して暴行又は脅迫を加えた者も同様に処すると定めています。本条は対人的加害行為によって強制執行の行為を妨害する行為を処罰することを予定した規定です。
強制執行関係売却妨害罪
96条の4は偽計又は威力を用いて強制執行において行われ又は行われるべき売却の公正を害すべき行為をした者は3年以下の拘禁刑若しくは250万円以下の罰金に処し又はこれを併科すると定めています。本条は強制執行における売却手続についての公正を阻害する行為を処罰することを予定した規定です。
公の競売又は入札の公正を害すべき行為をすることが本罪の行為であり談合行為は含まれませんが談合に応じるよう脅迫する行為は含まれます。本罪は公の競売又は入札の公正を害すべき行為が行われれば直ちに既遂に達する抽象的危険犯であり行為の結果入札の公正が害されたという結果の発生は必要としません。
競売開始決定のあった土地建物につき賃貸借契約があるかのように装って裁判所に対し取調べを求める上申書及び内容虚偽の賃貸借契約書の写しを提出する行為は偽計による競売入札妨害罪にあたるとされています。また現況調査に訪れた執行官に対して虚偽の事実を申し向け内容虚偽の契約書類を提出した行為は公の競売又は入札の公正を害すべき行為にあたりますがその時点をもって犯罪行為が終わった時と解すべきものではなく虚偽の事実の陳述等に基づく競売手続が進行する限り犯罪行為が終わった時には至らないとされています。
加重封印等破棄等罪
96条の5は報酬を得又は得させる目的で人の債務に関して96条から96条の4までの罪を犯した者は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し又はこれを併科すると定めています。本条は96条から96条の4までの罪が報酬を得又は得させる目的で行われた場合に加重処罰する規定です。
公契約関係競売等妨害罪
96条の6第1項は偽計又は威力を用いて公の競売又は入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした者は3年以下の拘禁刑若しくは250万円以下の罰金に処し又はこれを併科すると定めています。本条は強制執行に関するものを除いた公共の工事の入札等について規定したものです。
公の競売又は入札の公正を害すべき行為が本罪の行為であり談合行為は含まれませんが談合に応じるよう脅迫する行為は含まれます。
談合罪
96条の6第2項は公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で談合した者も1項と同様に処すると定めています。
公正な価格とは入札を離れて客観的に測定されるべき価格をいうのではなくその競売又は入札において公正な自由競争が行われたならばすなわち談合がなかったならば形成されたであろう価格をいいます。
談合とは競落人ないし入札者が相互に通謀し特定の者を契約者とするために他の者は一定価格以上又は以下の値をつけない又は入札しないという協定をいいます。2人以上の者の行為を必要とするため本罪は必要的共犯です。競買人や入札者の全員が談合に加わる必要はなく事実上有効に自由競争の実を失わせるような協定をなしうる限り一部の競売人や入札者によって行われた場合も本罪の談合にあたります。
談合罪は談合によって直ちに既遂に達し談合者が現実に行動したことを要しない抽象的危険犯です。
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