30条の趣旨

30条は納税の義務を定めています。国民主権国家では国民の納める税金によってのみ国家の財政が維持され国家の存立と国政の運営が可能となることから、納税の義務は国民の当然の義務とされます。

納税の義務は法律の定めるところにより具体化されます。これは租税法律主義の趣旨が重ねて述べられたものです。なお、法律で外国籍の者から徴税することは違憲ではありません。

31条の性格

31条は法律の定める手続によらなければその生命若しくは自由を奪われ又はその他の刑罰を科せられないと規定し、一般法としての適正手続を保障しています。もっとも、手続を法律で定めさえすればその内容の当否は問われないのか、また本条は実体すなわち犯罪・刑罰の要件を法律で定めること及びその適正を要求していないのかが問題となります。

A説は手続の法定のみを31条の保障内容とする見解です。その理由として、条文の文言解釈として素直であること、手続の適正は32条、実体の法定は39条や73条6号、実体の適正は13条でそれぞれ保障されていることが挙げられます。

B説は手続の法定と手続の適正を31条の保障内容とする見解です。その理由として、条文は手続と規定するので手続の法定と適正が31条で保障されること、実体の法定は他の条項で保障されており31条に含める必要はないこと、告知・聴聞の機会を保障すべきであることが挙げられます。

C説は手続の法定と実体の法定を31条の保障内容とする見解です。その理由として、法律の定める手続は法律の定める方法であり刑事手続のみならず罪刑の法定をも含むこと、罪刑法定主義の具体化が明示的であるのに罪刑法定主義そのものが黙示的で明文上の根拠がないとするのは不均衡であることが挙げられます。

D説は手続の法定と手続の適正と実体の法定を31条の保障内容とする見解です。罪刑法定主義は31条に含まれるが実体すなわち罪刑の適正は他の条文に含まれるので31条が要求すると解する必要はないとします。

E説は手続の法定と手続の適正と実体の法定と実体の適正のすべてを31条の保障内容とする通説的見解です。その理由として、31条は適正な実体をも要求するアメリカの憲法の適正手続条項に淵源を有すること、人権保障には適正な手続・内容の法定が不可欠であり憲法上のどの条文に反するのか不明確な場合があるので31条に読みとる必要があることが挙げられます。

なお、E説以外の立場も保障していないとされる部分を全く否定するわけではなく他の条文に保障の根拠を求めるのが通常です。

手続の法定

刑事手続の定めは国会によって制定される法律すなわち形式的意味の法律によってしかなしえません。ただし、77条はこの例外を定めており、最高裁判所が規則により刑事訴訟に関する手続を定めることは許されます。委任があれば下級裁判所も同様です。

手続の適正

本条は手続の適正さをも保障するというのが通説です。告知・聴聞すなわち弁解・防御を受ける権利や違法収集証拠の排除法則がその適正さの内容をなします。

告知・聴聞を受ける権利とは、公権力が国民に刑罰その他の不利益を科す場合には当事者にあらかじめその内容を告知し当事者に弁解と防御の機会を与えなければならないという内容をなすものです。

第三者所有物没収事件

第三者所有物没収事件は、関税法118条1項により密輸した貨物を没収された者が没収した貨物には被告人以外の者の所有物が含まれており所有者に財産権擁護の機会を全く与えることなく没収したのは29条1項に反すると主張して争った事案です。

最高裁は、関税法118条1項の規定による没収は被告人の所有に属すると否とを問わずその所有権を剥奪して国庫に帰属せしめる処分であって被告人以外の第三者が所有者である場合においても被告人に対する附加刑としての没収の言渡により当該第三者の所有権剥奪の効果を生ずるとしました。

そして、第三者の所有物を没収する場合においてその没収に関して当該所有者に対し何ら告知・弁解・防禦の機会を与えることなくその所有権を奪うことは著しく不合理であって憲法の容認しないところであるとしました。憲法29条1項は財産権はこれを侵してはならないと規定し、また同31条は何人も法律の定める手続によらなければその生命若しくは自由を奪われ又はその他の刑罰を科せられないと規定しているが、所有物を没収せられる第三者についても告知・弁解・防禦の機会を与えることが必要であってこれなくして第三者の所有物を没収することは適正な法律手続によらないで財産権を侵害する制裁を科するに外ならないとしました。このことは第三者に事後においていかなる権利救済の方法が認められるかということとは別個の問題であるとしました。

関税法118条1項はその所有者たる第三者に対し告知・弁解・防禦の機会を与えるべきことを定めておらず、また刑事訴訟その他の法令においても何らかかる手続に関する規定を設けていないため、関税法118条1項によって第三者の所有物を没収することは憲法31条、29条に違反するとしました。

なお、かかる没収の言渡を受けた被告人はたとえ第三者の所有物に関する場合であっても被告人に対する附加刑である以上没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは当然であるとしました。被告人としても没収に係る物の占有権を剥奪されまたはこれが使用・収益をなしえない状態におかれさらには所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等利害関係を有することが明らかであるから、上告によりこれが救済を求めることができるとしました。

余罪と量刑

余罪と量刑の問題について最高裁は、刑事裁判において起訴された犯罪事実のほかに起訴されていない犯罪事実をいわゆる余罪として認定し実質上これを処罰する趣旨で量刑の資料に考慮しこれがため被告人を重く処罰することは不告不理の原則に反し憲法31条に違反するのみならず自白に補強証拠を必要とする憲法38条3項の制約を免れることとなるおそれがあって許されないとしました。

もっとも、刑事裁判における量刑は被告人の性格・経歴および犯罪の動機・目的・方法等すべての事情を考慮して裁判所が法定刑の範囲内において適当に決定すべきものであるから、その量刑のための一情状としていわゆる余罪をも考慮することは必ずしも禁ぜられるところではないとしました。

罪刑法定主義

罪刑法定主義すなわち刑罰の実体を法律で定めるべしということは近代憲法以来の重要な原理です。日本国憲法にはこれを明確に定める規定はありませんが、通説は本条に根拠を求めています。

実体の適正

刑罰の実体が法律で定められていてもそれが人権を侵害するような内容であってはなりません。そこで、本条は実体の適正をも保障しています。実体の適正の内容として通常挙げられるのは刑罰法規の明確性、罪刑の均衡、刑罰の謙抑主義です。

刑罰法規の明確性

刑罰法規は明確でなければなりません。これを明確性の原則といいます。その理由として、刑罰法規は国民に法規の内容を明確にし違法行為を公平に処罰するのに必要な事前の公正な告知を与えるものでなければならないこと、刑罰法規は法規の執行者たる行政の恣意的な裁量権を制限するものであることが必要であることが挙げられます。

問題となっている刑罰法規が明確性の原則に反するかどうかについては、通常の判断能力を有する一般人の理解において具体的に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるかどうかによって決定されるとされています。なお、一般人を基準にするとされていますが、法令の名宛人が一般人でなければ基準となる主体は変わることになると解されています。

徳島市公安条例事件

徳島市公安条例事件は、集団行進等の際の遵守事項として交通秩序を維持することと定められこの遵守事項に違反した場合には罰則が科せられることになっていたところ、被告人が集団行進の際にだ行進するよう刺激を与えたことから交通秩序を維持することに違反するとして起訴された事案です。

最高裁は、刑罰法規の定める犯罪構成要件があいまい不明確のゆえに憲法31条に違反し無効であるとされるのは、その規定が通常の判断能力を有する一般人に対して禁止される行為とそうでない行為とを識別するための基準を示すところがなくそのためその適用を受ける国民に対して刑罰の対象となる行為をあらかじめ告知する機能を果たさず、またその運用がこれを適用する国又は地方公共団体の機関の主観的判断にゆだねられて恣意に流れる等重大な弊害を生ずるからであるとしました。

そこで、ある刑罰法規があいまい不明確のゆえに憲法31条に違反するものと認めるべきかどうかは、通常の判断能力を有する一般人の理解において具体的に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるかどうかによってこれを決定すべきであると判示しました。

福岡県青少年保護育成条例事件

福岡県青少年保護育成条例事件において最高裁は、同条例が禁止する淫行とは広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し威迫し欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当であるとしました。淫行の意義をこのように解釈するときは同規定につき処罰の範囲が不当に広すぎるとも不明確であるともいえないから31条に違反するものとはいえないと判示しました。

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