行為共同説と犯罪共同説

共犯は何を共同にするものであるかという共犯の本質については行為共同説と犯罪共同説の対立があります。この対立は故意内容が異なる者の間に共同正犯が成立するか及び成立するとしてどの範囲で成立するかという問題と関連します。

前構成要件的行為共同説は共犯とは自然的行為を共同するものであるとする見解です。この見解によれば異なる犯罪間でも自然的行為の共同があれば共同正犯が成立しうることになります。

構成要件的行為共同説は構成要件の重要部分を共同する必要があるとする見解です。この見解によれば異なる犯罪であっても構成要件が重なり合う限度で共同正犯が成立します。

部分的犯罪共同説は共犯は犯罪を共同するものであるとしつつ異なる犯罪間であってもその重なり合う限度では共同を認めることができその限度で共犯が成立するとする見解です。

完全犯罪共同説は共犯は正犯と全く同じ犯罪についてのみ成立するとする見解です。この見解によれば異なる犯罪の故意を持つ者の間には共同正犯は成立しません。

判例は殺意のある者と殺意のない者が共同して被害者を死に至らしめた事案について殺人罪の共同正犯と傷害致死罪の共同正犯の構成要件が重なり合う限度で軽い傷害致死罪の共同正犯が成立するとしています。この判例の結論は部分的犯罪共同説及び行為共同説のいずれの立場からも説明可能とされています。

また判例は未必的な殺意をもって医療措置を受けさせないまま放置して患者を死亡させた者について殺意のない患者の親族との間では保護責任者遺棄致死罪の限度で共同正犯となるとしています。重い故意をもっていた者について軽い保護責任者遺棄致死罪の限度で共同正犯が成立するとしているため部分的犯罪共同説を採用したものと解されています。

共犯の処罰根拠論

共犯の処罰根拠についてはいくつかの見解が対立しています。

責任共犯論は共犯者が正犯者を責任と刑罰とに誘い込んだことのゆえに罰せられるとする見解です。

因果的共犯論は惹起説ともいい共犯が正犯を通じて法益侵害又はその危険を間接的に惹起した点に処罰根拠があるとする見解です。因果的共犯論はさらに純粋惹起説、修正惹起説及び混合惹起説に分かれます。

純粋惹起説は共犯の違法性は共犯行為自体の違法性に基づくとし人による違法の相対性を肯定します。この見解によれば被害者が加害者に自己の殺害を依頼したが殺害行為が未遂にとどまった場合には教唆犯は成立しません。一方で他人を唆して自傷行為をさせた場合には教唆犯が成立します。

修正惹起説は共犯の違法性は正犯行為の違法性に基づくとし人による違法の相対性を原則として否定します。この見解によれば被害者が加害者に自己の殺害を依頼したが殺害行為が未遂にとどまった場合には教唆犯が成立します。一方で他人を唆して自傷行為をさせた場合には教唆犯は成立しません。

混合惹起説は共犯の違法性は共犯行為自体の違法性と正犯行為の違法性の双方に基づくとし人による違法の相対性を部分的に肯定します。この見解によれば被害者が加害者に自己の殺害を依頼したが殺害行為が未遂にとどまった場合にも他人を唆して自傷行為をさせた場合にも教唆犯は成立しません。

共犯の従属性

共犯の従属性には実行従属性、要素従属性及び罪名従属性の3つの問題があります。

実行従属性

実行従属性とは共犯の成立に正犯者の実行の着手が必要かという問題です。教唆したにもかかわらず正犯が実行しなかったとき教唆の未遂として処罰することができるかという形で問題となります。

共犯従属性説は通説であり共犯が成立するには正犯者が一定の行為を行ったことを要するとします。基本的構成要件の内容である実行行為と修正された共犯の構成要件に含まれる教唆行為及び幇助行為とは明らかにその定型性を異にし後者の犯罪性は前者に比して相当低く前者の行為をまってはじめて可罰性を付与されること及び61条と62条はともに正犯の存在を予定していることを根拠とします。この見解によれば教唆の未遂は不可罰です。

共犯独立性説は共犯が成立するには教唆行為又は幇助行為があれば足り正犯者が犯罪を実行したか否かを問わないとします。教唆行為又は幇助行為自体が行為者の反社会的性格を徴表するものであるから正犯者が犯罪を実行したか否かは共犯の成立にとって重要でないことを根拠とします。この見解によれば教唆の未遂は可罰的です。

要素従属性

実行従属性において共犯従属性説を採ると共犯の成立には正犯の実行行為が必要となります。このとき共犯が成立しかつ可罰性を有するためには正犯の行為がどの程度に犯罪の要件を具備することを必要とするのかすなわち正犯は構成要件該当性、違法性及び責任のどの段階までみたしていることが必要かが問題となります。

最小従属性説は正犯が単に構成要件に該当すれば足りるとする見解です。正当防衛の急迫性等は行為者ごとに相対化することも考えられさらに主観的違法要素を広く認める見解によれば違法性判断はより相対化することを根拠とします。最小従属性説に対しては違法性を阻却する行為は不可罰である以上その行為に関与しても共犯として処罰すべきではないと批判されています。

制限従属性説は通説であり正犯が構成要件に該当しかつ違法性を具備することを要するとする見解です。他人の適法な行為に関与した共犯を処罰する必要はないので正犯の行為は違法性を具備していなければならないこと及び有責性は行為者ごとに判断すべきであることを根拠とします。制限従属性説に対しては61条1項の犯罪を構成要件に該当する違法な行為と解し責任を不要とするのは被告人に不利益な解釈であり罪刑法定主義に反すると批判されています。

極端従属性説は正犯が構成要件該当性、違法性及び責任を具備することを要するとする見解です。61条1項の犯罪という文言からは正犯行為が構成要件に該当し違法かつ有責であることを要すると解するのが素直であることを根拠とします。極端従属性説に対しては14歳未満の者を教唆して犯罪を実行させた場合にすべて間接正犯が成立してしまい妥当でないと批判されています。

罪名従属性

罪名従属性とは共犯は常に正犯と同じ罪名で処罰されなければならないかという問題です。この問題は共犯の本質に関する行為共同説と犯罪共同説の対立と密接に関連します。

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