人権と制度の関係
日本国憲法の人権規定の中には、人権が一定の制度を前提とする場合があります。
憲法上明示されている場合として、公務員の選定罷免権と選挙制度、職業選択の自由および財産権と私有財産制、婚姻や家族生活の自由と平等および婚姻制度や家族制度、裁判を受ける権利と裁判に関する規定があります。
憲法上含意されているにすぎない場合として、公務員の不法行為に対する賠償請求権と国家賠償制度、学問の自由と大学の自治、生存権と社会保障制度、教育を受ける権利と教育制度があります。
一定の制度が忌避されている場合として、平等原則と貴族制度の禁止、信教の自由と政教分離原則、表現の自由と検閲の禁止があります。
制度的保障の意義
日本国憲法の規定の中には、個人の基本的人権を直接保障する規定だけでなく、一定の制度それ自体を保障すると解される規定も存在します。一定の制度それ自体を保障することにより、立法によっても当該制度の核心ないし本質的内容を侵害できないよう特別の保護を与える趣旨の規定を制度的保障といいます。その具体例としては、政教分離原則、大学の自治、私有財産制、地方自治の保障が挙げられます。
制度的保障の性質
憲法上の保障の対象となるのは制度それ自体であって基本的人権ではありません。そのため、制度的保障の規定に違反する国家行為は違憲ではあるものの、基本的人権を侵害するものとはいえません。したがって、基本的人権の侵害がある場合であれば国民は裁判所に対してその救済を求めることができますが、制度的保障の規定に違反する国家行為があっても、法律に特別の規定が存在しない限り国民は裁判所に対してその是正を求めることができません。
制度的保障に関する判例
津地鎮祭事件判決において最高裁判所は、政教分離規定はいわゆる制度的保障の規定であって、信教の自由そのものを直接保障するものではなく、国家と宗教との分離を制度として保障することにより間接的に信教の自由を確保しようとするものであると判示しました。
自衛官合祀事件判決においても、政教分離規定に違反する国またはその機関の宗教的活動も、憲法が保障している信教の自由を直接侵害するに至らない限り、私人に対する関係で当然に違法と評価されるものではないとされています。
また、制度的保障はあくまでも当該制度の核心ないし本質的内容を保障するものであり、核心ないし本質的内容の変更には憲法改正によらなければなりませんが、当該制度の周辺部分については法律による柔軟な修正や改変が許されます。
人権の類型
基本的人権とは、表現の自由や職業選択の自由といった個別的な人権を総称する言葉であり、以下の4つに分類されます。
自由権とは、国家が個人の自律的領域に対して権力的に介入することを排除して、個人の自由な意思決定と活動とを保障する権利をいいます。
参政権とは、国民の国政に参加する権利をいいます。自由権の確保に仕えるものです。
社会権とは、社会的正義の原則を実現するために個人が国家に対し積極的な行為を求める権利をいいます。
国務請求権すなわち受益権とは、個人の権利の保護を国家に請求する権利をいいます。
分類の相対性
人権の分類は相対的な性質を持っています。
自由権と社会権の区分に関して、たとえば表現の自由は、国民が情報を受け取る自由を国家権力によって妨げられないという自由権的側面のみならず、国家に対して積極的に情報の開示を請求するという請求権的側面をも有します。また、社会権に分類される生存権や労働基本権、勤労の権利はそれぞれ自由権的側面を排除するものではなく、教育を受ける権利も教育の自由を前提としています。
精神的自由権と経済的自由権の区分に関しても相対性があります。たとえば居住移転の自由は、精神的自由、経済的自由および人身の自由としての性質を有しています。なお、人身の自由は精神的自由権と深く関わるものの、精神的自由権に分類されるわけではありません。
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