非債弁済の意義

弁済者が特定の債務の弁済として給付をしたが実は債務が存在しなかったという場合には不当利得返還請求権が発生するはずですが民法は公平の理念から一定の場合に返還請求を否定する特則を規定しています。

債務の不存在を知っていた弁済

705条は債務の弁済として給付をした者はその時において債務の存在しないことを知っていたときはその給付したものの返還を請求することができないと定めています。弁済者が債務の不存在を知りながら弁済した場合すなわち狭義の非債弁済には自ら不合理なことをして損失を招いたといえるためそのような者を不当利得制度により保護する必要がないことを明らかにしたものです。

債務の不存在は弁済当時に不存在であったことだけでよくその不存在の理由は問いません。債務の発生原因である契約が無効であったり取り消されたりしていて最初から債務が存在しない場合や弁済等によって消滅した場合でもよいとされています。

給付は任意の弁済であることが必要です。強制執行を避けるため又はその他の事由によりやむを得ず給付した場合は705条の適用はなく不当利得返還請求をすることができます。

弁済者が債務の不存在を知らなかった理由は問題となりません。知らないことに過失があっても返還請求できますし債務の不存在について疑いを抱いているだけでは知っていることにはなりません。

期限前の弁済

706条は債務者は弁済期にない債務の弁済として給付をしたときはその給付したものの返還を請求することができないと定めています。期限到来前でも債務は存在している以上給付を受けた債権者に不当利得が成立しないことは当然です。ただし債務者が錯誤によってその給付をしたときは債権者はこれによって得た利益を返還しなければなりません。弁済受領権者は期限の利益が放棄されたものとして受領物を処分してしまうこともありそれを返還させるのは酷であるため期限未到来を知らずに誤って弁済した場合のみ利得相当額の返還を請求できるとしたものです。

債務者が期限前であることを知りつつ弁済した場合は期限の利益相当分の返還請求はできません。主たる債務者と債権者との間で支払猶予がなされ委託を受けない保証人がこれを知らずに当初の期限に弁済をした場合には706条に基づく返還請求ができます。

他人の債務の弁済

707条1項は債務者でない者が錯誤によって債務の弁済をした場合において債権者が善意で証書を滅失させ若しくは損傷し担保を放棄し又は時効によってその債権を失ったときはその弁済をした者は返還の請求をすることができないと定めています。他人の債務を自己の債務と誤信して弁済した場合には債務者のために弁済したわけではないため第三者の弁済としての効力は生じません。したがって弁済者は不当利得返還請求をなしうるはずですが無条件にこれを認めれば善意の債権者が不測の損害を被ることになるため弁済者と債権者相互の利益を調整するために不当利得返還請求権に一定の制限を設けたものです。

弁済者は他人の債務を自己の債務と誤信して弁済をなすことを要し弁済者に過失があることは要件ではありません。他人の債務であることを知っている場合は707条の問題ではなく第三者弁済の問題となります。

証書の滅失や損傷には物理的な滅失や損傷のみならず債務者に証書を返還するなど債権者が自由に証書を立証方法として使用できなくなった場合も含みます。時効によってその債権を失ったとは債権者が債務者に全く請求権を失った場合を指しその債権を失っても同一の事実関係に基づいて発生した他の債権を行使できる場合には707条の適用がありません。

同条2項はこの規定は弁済をした者から債務者に対する求償権の行使を妨げないと定めています。707条1項の要件を満たす場合には有効な弁済として債務は消滅し弁済者は債務者に求償することができます。

不法原因給付の意義

708条は不法な原因のために給付をした者はその給付したものの返還を請求することができないと定めています。ただし不法な原因が受益者についてのみ存したときはこの限りではありません。自ら社会的に非難されるべき行為をした者がこれを理由として自己の損失を取り戻すために法の救済を求めることはその心情において責められるべきものであるというクリーンハンズの原則に基づくものです。本条は90条と表裏一体となって反社会的な行為に関与した者に一切の法律上の救済を否定する法理を定めたものです。

不法原因給付の要件

不法原因給付の要件は不法な原因のためであること及び給付が行われたことです。

不法とは単に強行法規に違反するだけでは足りず公序良俗に反することを意味するとされています。単なる国家の政策によって定められる禁止規定に違反する場合にまで本条を適用して給付の返還請求を阻止することはかえって禁止規定が禁圧しようとした行為を追認する結果となる可能性があるためです。当事者が給付の不法について認識し又は認識する可能性がなくても不法原因給付に該当しうるとされています。

不法な原因とはその給付により企図された目的のことをいいます。給付の動機に不法があるにすぎない場合でも動機が表示されて当事者がこれを知っている場合には原因となりうるとされています。その給付行為の基礎となった法律関係自体は適法なものでもその行為のなされる目的や動機、条件が不法である場合には一定の事情の下では不法原因給付となりえます。

不法原因がもっぱら受益者にのみ存在し給付者に不法性が存在しない場合には不当利得返還請求をすることができます。また給付者と受益者双方に不法原因がある場合でも双方の不法性を比較して給付者のそれが微弱であれば返還請求が認められます。

給付とは相手方に利益を与えるものであれば事実上の利益を与えるものでも財産権や財産的利益を与えるものでもよいですが強制可能性を残さない相手方に終局的な利益を与えるものであることを要します。終局的でない従属的な給付について返還請求権を拒否すれば主たる給付の実現のための強制可能性を残すことになりかえって90条や708条の趣旨に反するためです。

給付された物が不動産の場合には未登記不動産の場合は引渡しのみで給付に該当しますが既登記不動産の場合は登記がなされなければ給付に該当しません。給付された物が動産の場合は引渡しのみで給付に当たります。不法な目的のために担保権が設定された場合には登記が経由されても給付に該当しません。

不法原因給付の効果

不法原因給付の要件を満たす場合には給付者は不当利得返還請求をすることができません。

所有権に基づく物権的請求権についても708条を類推適用し返還請求を否定すべきとされています。返還請求が否定されることの反射的効果として目的物の所有権は受給者に移転するとされています。受給者は給付者に対して所有権に基づく物権的請求をすることができますが受給者と給付者間の契約は公序良俗に反し無効であるため給付者に対する債権的請求は認められません。

不法行為に基づく損害賠償請求権についても708条を類推適用し損害賠償請求を否定すべきとされています。

不法原因給付後にこれを任意に返還する特約は有効です。708条の趣旨は給付者の返還請求に法律上の保護を与えないという点にあり受領者が給付を受けたものを法律上正当の原因があったものとして保留させる趣旨ではないためです。

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