脅迫罪の保護法益

脅迫罪の保護法益は個人の意思決定の自由です。ただし私生活の平穏であるとする見解もあります。

脅迫罪

222条1項は生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処すると定めています。同条2項は親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も同様とすると定めています。

脅迫の意義

脅迫の意義は刑法上その犯罪類型ごとに異なります。広義の脅迫とは人を畏怖させるに足る害悪の告知をいいその害悪の内容は問いません。公務執行妨害罪や恐喝罪における脅迫がこれにあたります。狭義の脅迫とは人を畏怖させるに足る害悪の告知をいいその害悪の内容は相手方又はその親族の生命、身体、自由、名誉及び財産に対し害悪を加えることに限られます。脅迫罪、強要罪及び不同意わいせつ罪における脅迫がこれにあたります。最狭義の脅迫とは相手方の反抗を抑圧するに足りる程度の害悪の告知をいい強盗罪や事後強盗罪における脅迫がこれにあたります。

脅迫罪の客体

人は自然人に限られ法人は含まれません。幼者や知的障害者も自然人である以上客体となりえますが本罪の保護法益は個人の意思決定の自由であることから意思能力者であることを要します。

脅迫罪の行為

害悪は被害者本人か親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に限られます。これは限定列挙です。親族とは6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族です。したがって恋人や内縁の妻といった親族以外の者に対する害悪の告知は本罪を構成しません。

告知される害悪の程度は相手方の事情や周囲の状況などから判断して一般に人を畏怖させるに足りる程度のものであることを要します。一般人ならば畏怖しない程度の害悪の告知で被害者が特に臆病なため畏怖した場合については脅迫罪成立説と脅迫罪不成立説の争いがあります。

告知される害悪の内容は告知者により害悪の発生を現実に左右できるものでなければなりません。

判例及び通説は告知の内容が犯罪であることを要しないとして脅迫罪の成立を認める一方それが権利実行の正当な範囲にとどまる場合には違法性が阻却されるとしています。告知の内容が犯罪でなくても個人の意思決定の自由が害されうる以上脅迫にあたりますが告訴自体は適法な行為であり本当に告訴する意思がある場合にも脅迫罪の成立を認めるのは妥当でないので権利実行の正当な範囲にとどまる場合には違法性が阻却されるとされています。

害悪を告知する方法に制限はありません。明示的及び黙示的のいずれでもよくまた文書、口頭及び態度のいずれでもよいとされています。告知は相手に対して直接行われる必要はなく間接的な手段でもよいとされています。

脅迫罪の既遂時期

脅迫罪は抽象的危険犯であり告知が相手方に伝達した段階で既遂に達し相手方が現実に畏怖したかどうかを問いません。伝達手段を施したが相手方に伝達されなかった場合には未遂となりますが脅迫罪には未遂の処罰規定がないため不可罰となります。

脅迫罪の罪数

加害の告知後その害悪を実行したときはその実行した犯罪が独立して成立し両者は併合罪の関係に立ちます。もっとも脅迫と加害の実行とが同じ場所で時間的に前後して行われたときは脅迫は実行した犯罪に吸収されます。

強要罪の保護法益

強要罪の保護法益は個人の意思決定の自由及び意思実現の自由です。

強要罪

223条1項は生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し又は暴行を用いて人に義務のないことを行わせ又は権利の行使を妨害した者は3年以下の拘禁刑に処すると定めています。同条2項は親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し人に義務のないことを行わせ又は権利の行使を妨害した者も同様とすると定めています。同条3項は本罪の未遂は罰すると定めています。

強要罪における脅迫と暴行

脅迫は狭義の脅迫であり暴行は広義の暴行です。

義務のないことを行わせること

義務のないことを行わせるとは被強要者にその義務がないのに作為、不作為又は忍容を余儀なくさせることをいいます。法的に強制されない限り活動しない自由は保護されるべきであるので義務は法律上のものに限られます。

人は自然人のみであり法人は含まれません。

脅迫や暴行を加えて人に義務のあることを行わせた場合にも強要罪が成立するかが問題となります。条文の文言上強要罪は成立せず脅迫罪又は暴行罪の成否が問題となるにすぎないとする見解もあります。一方で判例は人に義務の履行を求める場合であってもその手段として脅迫が用いられその脅迫が社会通念上受忍すべき限度を超える場合には強要罪が成立しうるとしています。判例を支持する学説は被害者が法律上の義務を負っている場合であっても社会通念上受忍すべき限度を超える脅迫や暴行を受けながらこれを履行する義務はない以上人に義務のないことを行わせたといえると解しています。強要罪の成立を認める見解は権利行使と恐喝の論点において恐喝罪の成立を認める判例と整合的です。

権利の行使を妨害すること

権利の行使を妨害するとは被強要者が作為又は不作為を行うことを妨げることをいいます。法的に禁止されていない限り活動する自由は保護されるべきであるので権利は法律上のものに限られません。

強要罪の因果関係

本罪の成立には暴行又は脅迫によって相手方が現実に恐怖心を抱きその結果義務のないことを行い又は行うべき権利を妨害されたという因果関係が必要です。

強要罪の既遂と未遂

強要罪の実行の着手は暴行又は脅迫の開始の時点で認められます。本罪は侵害犯であるので暴行又は脅迫により義務なきことを行わせ又は権利の行使を妨害した時点で既遂に達します。暴行又は脅迫がなされても被強要者の意思が抑圧されなければたとえ被強要者が行為者の要求に応じたとしても因果関係が認められないので強要未遂罪が成立するにとどまります。この場合手段である暴行罪又は脅迫罪は法条競合により成立しません。

強要罪と他罪との関係

強要罪は恐喝罪、強盗罪、逮捕及び監禁罪及び職務強要罪などに対して一般法的性格を有するからこれらの犯罪が成立する場合には法条競合によって適用が排除されます。

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