共有物分割請求の自由

256条1項は各共有者はいつでも共有物の分割を請求することができると定めています。共有における各共有者は所有権の本質をもつ持分権を有することからいつでも共有物の分割請求ができるとされています。分割請求権は一種の形成権です。遺産分割前の遺産は共有とされています。

ただし5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約すなわち不分割特約をすることができます。不分割特約は更新することができますがその期間は更新の時から5年を超えることができません。5年の期間を超える不分割特約は無効です。不分割特約は持分の特定承継人にも拘束力を有しますが不動産の場合にはその旨の登記がなければ対抗できません。

257条は境界標等の共有の推定に関する229条に規定する共有物については分割請求に関する256条の規定は適用しないと定めています。

協議による分割

協議による分割は共有者全員で行いますが持分通りに行われなくてもかまいません。方法としては現物分割、代金分割すなわち共有物を売却して代金を分ける方法及び価格賠償すなわち共有者の1人が共有物全体の所有権を取得して他の共有者に持分の価格を支払う方法があります。

裁判による分割

共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき又は協議をすることができないときはその分割を裁判所に請求することができます。令和3年改正により協議不能が裁判による分割を請求するための要件として新たに加えられました。協議不能には共有者の一部に協議に応じる意思がないために共有者全員による協議ができない場合や共有者の一部に所在等不明共有者がいる場合も含まれます。共有物分割訴訟においては共有者の全員が当事者とならなければならず固有必要的共同訴訟となります。

裁判による分割の方法には現物分割、賠償分割及び競売分割があります。

現物分割

現物分割とは共有物の現物を分割する方法です。これに加え現物分割には一括分割と一部分割があります。

一括分割とは複数の共有物が存在する場合においてこれらを一括して現物分割する方法です。一部分割とは一部の共有者にのみ現物分割して単独所有としその他の共有者の共有関係を残す方法です。

賠償分割

賠償分割とは共有者に債務を負担させて他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法です。令和3年改正により裁判による分割の方法として賠償分割が明示されました。現物分割と賠償分割との間にはいずれかを先に検討すべきであるといった先後関係はありません。

賠償分割には一部価格賠償と全面的価格賠償があります。一部価格賠償とは一部の共有者に持分の価格以上の現物を取得させその者に他の共有者に対して当該超過分の対価を支払わせて過不足を調整する方法です。

全面的価格賠償とは共有物を共有者のうちの1人の単独所有又は数人の共有としこれらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法です。判例は当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められかつその価格が適正に評価され当該共有物を取得する者に支払能力があって他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存する場合に全面的価格賠償が許されるとしています。

賠償分割においては共有物の持分を取得する共有者が負う債務の履行をどのように確保するかという問題がありますが裁判所は共有物の分割の裁判において当事者に対して金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができます。裁判所は持分を取得する共有者の代価支払義務と他の共有者の持分移転登記義務とを引換給付とすることも可能です。

競売分割

競売分割とは共有物を競売しこれによって得た売却代金を共有者の持分割合に応じて分割する方法です。現物分割又は賠償分割の方法により共有物を分割することができないとき又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときに裁判所がその競売を命ずる分割方法であり補充的な分割方法です。分割することができないときとは現物分割が物理的に不可能な場合だけでなく社会通念上適正な現物分割が著しく困難な場合も含まれます。

分割の効果

分割により従前の共有関係は終了し各共有者は取得部分につき単独所有者となります。分割の遡及効は生じず将来効のみです。各共有者は他の共有者が分割によって得た物につきその持分に応じて売主と同様の担保責任を負います。実質的には共有者間での持分の一部の交換又は売買と同じ意味をもつためです。

持分権上の担保物権について持分権者が共有物の全部を取得した場合には担保物権の目的となっている範囲では持分権はそのまま存続し担保物権はその持分上に存在して影響を受けません。共有者が新たに取得した部分については抵当権の効力は及びません。持分権者が共有物の一部を取得した場合には持分権者の取得した部分にも他の共有者の取得した部分にも各々持分権が消滅せずに存続しそれらの持分権上に担保物権が存在します。共有物が代金分割又は価格賠償により第三者又は他の共有者に帰属し持分権者が代金又は価格を取得する場合には担保物権者はその持分権者の受ける代金や価格の上に物上代位することで権利行使します。

共有に関する債権の弁済

259条1項は共有者の1人が他の共有者に対して共有に関する債権を有するときは分割に際し債務者に帰属すべき共有物の部分をもってその弁済に充てることができると定めています。同条2項は債権者は弁済を受けるため債務者に帰属すべき共有物の部分を売却する必要があるときはその売却を請求することができると定めています。本条の債権は254条の債権よりも広く共有物購入資金の立替債権も含みます。

共有物の分割への参加

260条1項は共有物について権利を有する者及び各共有者の債権者は自己の費用で分割に参加することができると定めています。参加の請求があったにもかかわらずその請求をした者を参加させないで分割をしたときはその分割はその請求をした者に対抗することができません。

共有物に関する証書

262条は分割が完了したときは各分割者はその取得した物に関する証書を保存しなければならないと定めています。共有者の全員又はそのうちの数人に分割した物に関する証書はその物の最大の部分を取得した者が保存しなければなりません。最大の部分を取得した者がないときは分割者間の協議で証書の保存者を定め協議が調わないときは裁判所がこれを指定します。

遺産共有と共有物分割

258条の2第1項は共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは当該共有物又はその持分について裁判による共有物分割の方法をとることができないと定めています。共同相続人間における遺産共有を解消するには遺産全体の価値を総合的に把握して遺産分割の方法により行うのが適切であるためです。

他方遺産分割前に一部の共同相続人から共有持分を譲り受けた第三者が共有関係を解消する場合には譲渡された部分は遺産分割の対象から逸出することから遺産分割手続ではなく共有物分割請求をとるべきです。

遺産共有持分と他の共有持分が併存する場合にはまず遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消を求める方法として共有物分割請求をとった上でその判決によって遺産共有持分権者に分与された財産の共有関係の解消については遺産分割手続によるべきとされています。

258条の2第2項は共有物の持分が相続財産に属する場合において相続開始の時から10年を経過したときは相続財産に属する共有物の持分について裁判による共有物分割の方法をとることができると定めています。遺産分割上の権利を長年にわたって行使しない相続人は当該共有物に関しては遺産分割上の権利を行使する意思に乏しいものと評価できるためです。この場合裁判所は共有物の分割を命ずる判決において相続人間で分割することもできますがその際遺産の分割の基準に関する906条や配偶者居住権に関する規定は適用されません。

ただし共有物の持分について遺産分割の請求があった場合において相続人が当該共有物の持分について裁判による共有物分割の方法をとることに異議の申出をしたときは裁判所は裁判による共有物分割の方法をとることができません。相続人の遺産分割上の権利を保護する趣旨です。異議の申出は当該相続人が裁判による共有物分割の請求があった旨の通知を受けた日から2か月以内にしなければなりません。

所在等不明共有者の持分の取得

262条の2は不動産が数人の共有に属する場合において共有者が他の共有者を知ることができず又はその所在を知ることができないときは裁判所は共有者の請求によりその共有者に所在等不明共有者の持分を取得させる旨の裁判をすることができると定めています。令和3年改正により新設された規定です。所在等不明共有者の持分を集約することでその土地の利用、管理及び処分の円滑化を図るとともに共有者の一部が不明であるという状態を実効的に解消することが可能となります。

請求をした共有者が2人以上あるときは請求をした各共有者に所在等不明共有者の持分を請求をした各共有者の持分の割合で按分してそれぞれ取得させます。

持分取得の裁判の請求があった共有不動産について共有物分割の請求又は遺産分割の請求がありかつ所在等不明共有者以外の共有者が持分取得の裁判をすることについて異議がある旨の届出をしたときは裁判所は持分取得の裁判をすることができません。所在等不明共有者の持分も含めて全体について適切な分割を実現することを希望している共有者がいる場合には共有物分割や遺産分割の手続を優先すべきであるためです。

所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合において相続開始の時から10年を経過していないときは裁判所は持分取得の裁判をすることができません。ただし通常の共有者については遺産分割上の権利が問題となることはないため262条の2第3項は適用されません。相続開始の時から10年を経過したときは裁判所は所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合であっても持分取得の裁判をすることができます。

所在等不明共有者の持分を取得した共有者に対して所在等不明共有者は取得された持分の時価相当額の支払を請求することができます。

所在等不明共有者の持分の譲渡

262条の3は不動産が数人の共有に属する場合において共有者が他の共有者を知ることができず又はその所在を知ることができないときは裁判所は共有者の請求により所在等不明共有者以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができると定めています。

持分譲渡権限の付与の裁判を利用する場合には所在等不明共有者以外の共有者の全員の合意があることが前提となっているため持分取得の裁判における按分取得に関する規定や共有物分割又は遺産分割の請求との関係に関する規定はありません。

所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合において相続開始の時から10年を経過していないときは裁判所は持分譲渡権限の付与の裁判をすることができません。持分を譲渡した共有者に対して所在等不明共有者は不動産の時価相当額を所在等不明共有者の持分に応じて按分して得た額の支払を請求することができます。

262条の2及び262条の3の規定は共有に属する不動産の所有権のほか地上権、賃借権及び使用借権などの使用又は収益をする権利が数人の準共有に属する場合について準用されます。それ以外の動産等に対する財産権が準共有されている場合には準用されません。

準共有

264条はこの節の規定を数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用すると定めています。ただし262条の2及び262条の3は除かれ法令に特別の定めがあるときはその定めに従います。数人が共同して所有権以外の財産権を有する場合を準共有といいます。特別の定めとしては地役権の不可分性、地役権の時効に関する不可分性、根抵当権の共有、多数当事者の債権及び債務に関する規定、解除権の不可分性並びに組合に関する規定があります。

入会権

263条は共有の性質を有する入会権については各地方の慣習に従うほかこの節の規定を適用すると定めています。入会権とは村落等一定の地域に居住する住民の集団が山林原野、漁場及び用水等を総有的に支配する権利をいいます。共有の性質を有する入会権すなわち入会権の地盤が入会権者に帰属している場合には共有の規定を準用し共有の性質を有しない入会権には地役権の規定を準用します。もっとも共有や地役権の規定が入会権に準用される余地はほとんどなく慣習に委ねられます。

入会団体が権利能力なき社団に当たる場合には当該入会団体は入会地にかかる総有権確認の訴えの原告適格を有し規約等の定める授権手続に従い代表者に訴訟遂行させることができます。入会権の処分に関する慣習にも263条の効力が及び一部の入会権者の合意のみで入会権を処分できるとの慣習も公序良俗に反するなどの特段の事情がない限り有効です。

入会権の目的となっている山林原野の使用収益権は入会権そのものについての管理処分の権能とは異なり入会団体の構成員たる資格に基づいて個別的に認められる権能であるため別段の慣習がない限り各自が単独で行使することができます。この使用収益権の行使を妨害する者がある場合にはその者が入会団体の構成員であるかどうかを問わず各自が単独で妨害排除を請求することができます。ただし使用収益権に基づいて入会地について経由された地上権設定登記の抹消登記手続を請求することはできません。使用収益権自体は特段の事情のない限り単に登記が存在することのみによっては格別の妨害を受けないためです。上記登記の存在は入会権自体に対しては侵害的性質をもつため入会権自体に基づいて上記登記の抹消登記手続を請求することは可能ですが入会団体の構成員各自において入会権自体に対する妨害排除としての抹消登記手続を請求することはできません。入会団体の個々の構成員は共有におけるような持分権又はこれに類する権限を有するものではないためです。

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