予備と共犯の意義

予備の共同正犯とは意思の連絡の下に予備行為を共同して行うことをいいます。予備の教唆とは正犯の既遂、未遂又は予備を教唆した結果正犯が予備に終わった場合をいいます。予備の幇助とは予備罪の行為を幇助した結果正犯が予備又は陰謀に終わった場合をいいます。

予備罪の共同正犯、教唆犯及び幇助犯が認められるかについては60条にいう実行、61条1項にいう実行及び62条1項にいう正犯に予備が含まれるかが問題となります。

予備の共同正犯の肯否

予備の共同正犯が成立するかについては予備行為に実行行為性を認めるか否かをめぐって争いがあります。

肯定説は判例の立場であり予備罪が独立して処罰されている以上その予備罪には修正された構成要件としての実行行為が想定可能であること及び実質的にも正犯が予備として処罰されうる程度の危険性を発生させた以上そのような危険性を発生させた者も共犯として処罰してよいことを根拠とします。

否定説のうち完全否定説は予備行為の範囲は極めて広範であって基本的構成要件の内容としての実行行為のような定型性を有しないからこれについて共同正犯を認めるとその観念は相当曖昧なものとなるおそれがあること及び43条の未遂犯の規定の実行が正犯の実行すなわち基本的犯罪類型の実行だとすると60条以下の規定の実行も同様に解釈するのが素直であることを根拠とします。

否定説のうち二分説は殺人予備罪のように単に構成要件の修正形式として予備の処罰が規定されている場合には予備行為は無定型かつ無限定であって実行行為を観念できず予備罪の共同正犯は成立しないとする一方で通貨偽造準備罪のように構成要件が法文に明確に規定されている場合には実行行為を観念できるから予備罪の共同正犯も成立しうるとします。

予備の狭義の共犯の肯否

予備罪につき狭義の共犯すなわち教唆犯及び幇助犯を認めるかについても争いがあります。この対立は予備行為に実行行為性を認めるか否かにかかわる問題であり予備の共同正犯に関する議論がそのまま妥当します。

肯定説は予備は修正形式とはいえそれ自体固有の構成要件でありそれを実現する行為は実行行為というべきであること及び実質的にも正犯が予備として処罰されうる程度の危険性を発生させた以上そのような危険性を発生させた者も共犯として処罰してよいことを根拠とします。

否定説は予備行為は無定型かつ無限定であり共犯特に幇助もまた同様であって予備の共犯はますます無定型かつ無限定なものになり明文の規定がない限りこれを罰することは妥当でないこと及び43条本文の犯罪の実行は予備より後の実行行為を指すから60条以下についてもこれと同様にみなければ刑法上の概念の統一性が妨げられることを根拠とします。

二分説は殺人予備罪のように単に構成要件の修正形式として予備の処罰が規定されている場合には予備行為は無定型かつ無限定であって実行行為を観念できず教唆犯及び幇助犯は成立しないとする一方で通貨偽造準備罪のように構成要件が法文に明確に規定されている場合には予備行為は定型的かつ限定的であって実行行為を観念できるから教唆犯及び幇助犯が成立するとします。

予備と共犯に関する判例

判例は殺害目的で使用するものであることを知りながら青酸ソーダを交付したが交付された者に殺人予備罪が成立するにとどまった事案に関して予備行為も実行行為といえるから予備の実行行為を共同した者は予備罪の共同正犯になるとしかつ他人予備罪をも認める立場から交付者に殺人予備罪の共同正犯を成立させています。

不作為による共同正犯

父と母が意思を通じて乳児を餓死させた事案のように共犯者各自に作為義務がある場合に不作為犯の共同正犯が成立することについてはほぼ異論がありません。

他方で母と交際相手が意思を通じて乳児を餓死させた事案のように作為義務のある者とそうでない者との間において不作為犯の共同正犯が成立するかが問題となります。

肯定説が多数説であり作為義務がない者であっても作為義務を有する者と共同して不真正不作為犯の結果を実現することは可能であることを根拠とします。否定説は不真正不作為犯は作為義務を有する者のみがなしうる犯罪であり作為義務のない者が不真正不作為犯の実行行為を行うことはありえないことを根拠とします。

不作為による正犯と幇助の区別

作為義務を有する者が他人の犯行を認識しながらこれを阻止せずに立ち去った場合のように不作為による関与者に殺人罪の不作為による単独正犯が成立するかそれとも不作為による幇助犯が成立するにとどまるかが問題となります。

通説は他人の犯行を阻止しなかった場合には原則として幇助犯が問題となるにすぎないとする原則幇助犯説の立場をとっています。作為による正犯には結果発生に対して直接的な因果関係が認められる一方で不作為による関与者は結果発生に対して正犯を介した間接的な因果関係をもつにとどまり単に正犯の実行を容易にしたにすぎないこと、すなわち結果発生に至る因果経過を支配しているのはあくまでも正犯であり不作為による関与者は因果経過を支配したとまではいえないことを根拠とします。

なお関与者間に犯罪について共謀が成立している場合には不作為による正犯と幇助の区別は問題となりません。共謀が成立していれば共謀共同正犯が成立し一部実行全部責任の原則から結果についての責任を負わせることができるからです。

不作為による幇助の成立要件

不作為による幇助犯の成立要件は作為による幇助犯と同様に正犯を幇助すること、これに基づく正犯者の実行行為及び幇助犯の故意です。

正犯を幇助することについては作為による幇助犯と同視しうるものでなければならないので正犯の犯罪を阻止すべき作為義務のある者がその作為に出ることが可能かつ容易であったにもかかわらずその義務に違反して作為をしないことが必要です。ここにいう作為義務とは結果の発生を直接防止又は回避する義務ではなく正犯による実行を阻止する義務です。

正犯者の実行行為との因果関係については条件関係までは不要であり幇助行為によって正犯者の実行行為を強化し既遂結果の実現を促進すること、すなわち促進的因果関係で足ります。正犯による実行を阻止しないという不作為によって正犯の結果実現が容易になったといえればこの要件を満たし幇助者が正犯による実行をほぼ確実に阻止できたことまでは不要です。

幇助犯の故意については正犯の犯罪を阻止するという作為義務のある者が一定の作為によって正犯の犯罪を阻止することが可能であることを認識しながら一定の作為をせず正犯による実行を認容していることが必要です。

判例は内縁関係にある者が子に対してせっかんを加えて死亡させた際にせっかんを開始したことを認識しつつ無関心を装っていた事案について犯罪の実行をほぼ確実に阻止しえたにもかかわらずこれを放置したという要件は不作為による幇助犯の成立には不必要というべきであるとした上で一定の作為によって暴行を阻止することが可能であったとして傷害致死罪の不作為による幇助犯の成立を認めています。

不作為犯に対する教唆及び幇助

作為義務のない者が作為義務のある者の不作為を教唆又は幇助した場合には不作為犯に対する教唆犯又は幇助犯が成立します。作為義務のない者であっても作為義務を有する者の不作為に因果性を及ぼすことによって不作為犯の結果を間接的に実現できるので共犯として処罰することができます。

アプリの紹介

過去問を一文一問形式で解けるアプリを開発しました。

司法試験 短答式試験 過去問 問題集

司法試験 短答式試験 過去問 問題集

司法予備試験の過去問を1問1答形式でアプリにしました。 効率的な学習をサポートする独自の機能があります。 1. 一問一答形式:テンポよく学習を進められます 2. 音声読み上げ機能:問題文と解説を聴いて学習効率アップ 3. 学習記録の自動管理:復習日、回数、正解率を簡単チェック 通勤中や隙間時間を有効活用し、効果的に試験対策ができます。 司法予備試験合格への第一歩、今すぐダウンロード! 利用規約 https://www.apple.com/legal/internet-services/itunes/dev/stdeula/

App StoreGoogle Play