国家秘密と取材の自由の対立

報道のための取材の自由は、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値するものです。一方、報道機関の国政に関する取材行為は、国家秘密の探知という点で公務員の守秘義務と対立拮抗するものであり、時としては誘導・唆誘的性質を伴うものとなります。

外務省秘密電文漏洩事件は、新聞記者が外務省の女性事務官と情交関係をもちそれに乗じて沖縄返還協定に関する極秘電文を入手したという事案であり、秘密を漏らすことをそそのかしたとして国家公務員法違反で起訴されたものです。

最高裁は、報道機関が取材の目的で公務員に対し秘密を漏示するようにそそのかしたからといって、そのことだけで直ちに当該行為の違法性が推定されるものと解するのは相当ではないとしました。報道機関が公務員に対し根気強く執拗に説得ないし要請を続けることは、それが真に報道の目的からでたものであり、その手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものである限りは、実質的に違法性を欠き正当な業務行為というべきであるとしました。

取材手段の相当性

報道機関といえども、取材に関し他人の権利・自由を不当に侵害する特権を有するものではありません。取材の手段・方法が一般の刑罰法令に触れないとしても、取材対象者の個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙するなど、法秩序全体の精神に照らし社会観念上是認することのできない態様のものである場合には、正当な取材活動の範囲を逸脱し違法性を帯びるものといえます。

取材源の秘密の社会的価値

取材活動を行うためには、取材の対象となる情報提供者との信頼関係が十分に確保される必要があります。報道した情報を誰から取材したか、その取材源を明かさないことは、取材記者にとって必須の倫理であり、取材源の秘密は取材の自由を確保するために必要なものとして、重要な社会的価値を有しています。

国家が記者に対して取材源の開示を求めることは、取材の自由の行使を抑止する効果を有します。

民事訴訟における証言拒絶

民事訴訟法は、職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合には、証人は証言を拒むことができると規定しています。ここにいう「職業の秘密」とは、その事項が公開されると当該職業に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるものをいいます。

職業の秘密に当たる場合であっても、そのことから直ちに証言拒絶が認められるわけではなく、保護に値する秘密についてのみ証言拒絶が認められます。保護に値する秘密であるかどうかは、秘密の公表によって生ずる不利益と証言の拒絶によって犠牲になる真実発見及び裁判の公正との比較衡量により決せられます。

取材源の秘密と職業の秘密

報道関係者の取材源は、一般に、みだりに開示されると、報道関係者と取材源となる者との間の信頼関係が損なわれ、将来にわたる自由で円滑な取材活動が妨げられることとなり、報道機関の業務に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になると解されます。したがって、取材源の秘密は職業の秘密に当たります。

保護に値する秘密かどうかの判断

当該取材源の秘密が保護に値する秘密であるかどうかは、複数の要素を比較衡量して決せられます。当該報道の内容・性質・社会的な意義・価値、当該取材の態様、将来における同種の取材活動が妨げられることによって生ずる不利益の内容・程度と、当該民事事件の内容・性質・社会的な意義・価値、当該民事事件において当該証言を必要とする程度、代替証拠の有無等を比較します。

この比較衡量にあたっては、報道機関の報道が正しい内容を持つためには、報道の自由とともに、報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし十分尊重に値するものであることが考慮されます。取材の自由の持つ意義に照らして考えれば、取材源の秘密は取材の自由を確保するために必要なものとして、重要な社会的価値を有するといえます。

証言拒絶が原則として認められる場合

当該報道が公共の利益に関するものであって、その取材の手段・方法が一般の刑罰法令に触れるとか、取材源となった者が取材源の秘密の開示を承諾しているなどの事情がなく、しかも当該民事事件が社会的意義や影響のある重大な民事事件であるため、当該取材源の秘密の社会的価値を考慮してもなお公正な裁判を実現すべき必要性が高く、そのために当該証言を得ることが必要不可欠であるといった事情が認められない場合には、当該取材源の秘密は保護に値するといえます。したがって、証人は、原則として当該取材源に係る証言を拒絶することができます。

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