基本的人権の享有
憲法11条は、国民はすべての基本的人権の享有を妨げられないこと、および憲法が国民に保障する基本的人権は侵すことのできない永久の権利として現在及び将来の国民に与えられることを規定しています。本条は基本的人権を保障することの意味と基本的姿勢を明らかにしており、第3章の基本的人権各条項の解釈と運用の指針および準則となるものです。
基本的人権という用語
基本的人権という用語はポツダム宣言に由来するものであり、一般にすべての人間が当然享有すべきものとして憲法によって保障される権利と定義されます。
基本権と人権の関係
基本権や人権という言葉は基本的人権と同義語として用いられる場合もあれば、それと区別して用いられる場合もあります。区別して用いる場合の方法については争いがあります。
自然権と人権の関係
自然権と人権は、普遍性、不可譲性すなわち非消滅性、および政府からの独立性という点で共通するため、同義語として使用される場合もあります。しかし、両者には相違点があります。第一に、自然権は絶対無制約であるのに対し人権はそうではありません。第二に、自然権はいつの時代でも妥当するものであり新しい自然権が発生、創造または発見されるということはありえないのに対し、人権については新しい人権が台頭する可能性があります。このような相違があるため、両者は区別して論じられるのが一般的です。
背景的権利と法的権利と具体的権利
基本的人権は理念的性格のものから具体的なものに至るまで多様なものを含んでおり、以下のように区別して理解することができます。
背景的権利としての人権とは、それぞれの時代の人間存在にかかわる要請に応じて種々主張されるものであり、法的権利としての人権を生み出す母体として機能するものをいいます。背景的権利が明確で特定化しうる内実をもつまでに成熟し、かつ憲法の基本権体系と調和する形で特定の条項に根拠づけることができるときは、法的権利としての地位を取得します。
法的権利としての人権とは、主として憲法上の根拠規定をもつ権利をいいます。
具体的権利としての人権とは、裁判所に対してその保護と救済を求め法的強制措置の発動を請求しうる権利をいいます。これに対して抽象的権利としての人権とは、法的権利ではあるが法律上の裏付けがないと裁判的救済の対象となることはない権利をいいます。
プログラム規定
プログラム規定とは、個人に対し裁判による救済を受けうるような具体的な権利を付与するものではなく、国家に対しその実現に努めるべき政治的かつ道義的な目標と指針を示すにとどまる種類の規定のことをいいます。
朝日訴訟において最高裁判所は、25条1項はすべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではないとしました。この判示からは、最高裁判所はプログラム規定の概念それ自体は肯定しているとも解しうるとされています。
自由と権利の保持責任および濫用禁止
憲法12条は、憲法が国民に保障する自由及び権利は国民の不断の努力によってこれを保持しなければならないこと、また国民はこれを濫用してはならず常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うことを規定しています。
本条の趣旨は、人権の歴史的性格と、その保持のために必要な国民の責務を明らかにすることにあります。
12条の性質と内容
12条は国民にとっての精神的指針であり、それを超えて何らかの具体的な法的義務を国民に課すものではありません。
本条の内容は、自由と権利の保持の義務、自由と権利を濫用しない義務、および自由と権利を公共の福祉のために利用する義務に分類できますが、これらはいずれも直接の法的効果を生じさせるものではありません。
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